鎌倉で、料理苦手な私が、コウ ケンテツに料理を教わった話
Airbnbがまた新たなプロジェクトを始めた! ということで、JAPAN LOCALにおけるAirbnb担当の私、林田が参加してきましたよ。
旅先で
料理を作ったことは?
Airbnbは10月25日、世界のトップシェフとのパートナーシップによるプロジェクト「Airbnb Kitchens of Asia」をスタートした。
Airbnbが行った「アジア太平洋地域における旅行に関する意識調査」によると、回答者の76%は「ローカルフードは旅行先を決めるうえで重要な要素」、そして、71%は「旅行中に地元ならではのローカルフードに挑戦することは大事」と回答したのだとか。
そこでAirbnbは、インドからはマニッシュ・メイロトラ、韓国からはトニー・ユ、タイからはイアン・キティチャイ、そして日本からはコウ・ケンテツの協力を仰ぎ、各国の味をとりいれたアジア料理のレシピを公開。旅先で、地元の食材や料理法を楽しんでステイしてほしいと、新たな「体験」を提供しようとしている。
というわけで「あのコウ・ケンテツの手料理が味わえる♡」と原稿そっちのけで今回のイベント会場「Simple House」(神奈川県鎌倉市)に行ってきたんですが……。
私、料理できなかったわ!
そう、私は料理ができないのである。
19歳のときにカナダをひとり旅したときはずっとグラノーラバーを食べていたし、この前韓国旅行に行ったときも、ひとりのときはカップ麺を食べていた。
江ノ電に揺られながら、「私でよかったのだろうか」と早くも冷や汗たらたら。でも、実は冷静に考えたところで、旅行先で料理をする、という経験には疑問があった。
実際、冒頭で紹介した調査結果には続きがある。「休暇中は料理や買い物はしたくない」と回答した人は41%、「ローカルフードを食べるなら外食がよい」と答えた人も43%いたそうだ。せっかくのバケーションだし、その気持ち、わかる。
けれど、結果として、私は次の旅行先で料理をしてみたくなった。それは、コウさんの話が楽しく、そして私のもつ「旅」の価値観と合致したからだった。
そこにあるのは
ローカルフードを
楽しむ以上の価値
コウさんの料理は、全部で3品。
手前が白身魚と鎌倉野菜のソテー マッシュルームソース ゆず風味。奥は鎌倉野菜の味噌ビーフシチュー、そしてしらすのひと口ポテトコロッケ。(レシピは下にまとめて書いておきます!)
味は、間違いなくおいしかった。だけど、私が「次の旅行では料理してみよう」と思ったのは、味が理由ではなかった。
「僕は、旅先で必ず料理を作って食べます。そうすると、今自分が地球のどこにいて、どの季節にいるのか体感できるんです。肌感だけではなく、食があって、そういうものは初めて完結するんだと思います」
コウさんのレギュラー番組『コウケンテツが行く アジア旅ごはん』(NHK BS1)は今年で7年目だそうだ。これまでアジア各国の家庭にホームステイしながら、その国ならではの家庭の味に出会ってきたコウさん。その口から紡がれるのは、知識以上に体験談が多く、説得力があって聞き入ってしまった。
「以前、その番組でウズベキスタンに行ったんです。ウズベキスタンは中央アジアのど真ん中にある二重内陸国で、昼間は40度、夜は10度まで下がる。だから、エネルギーをとるため油が欠かせないんですね。それで料理に羊の油をぼこぼこ入れるんです(笑)。これはカロリー高いなあ、って思ってたんですけど、実際食べてみるとうまいんですよ」
その土地の気候によって育まれる郷土料理は、立派な文化だ。異国での「食べる」という行為は、日常のそれとは少し違った意味合いをもつこともある。
「僕は、旅行先ではまっさきに市場に行くんです。そうすると、その国の人たちの事情が、流通から何からすべてわかる。そして10〜20人くらいにしつこく聞くんです。『どうやって料理するんですか?』って。そしたらめんどくさいと思うのか(笑)、教えてあげるわよ!って言ってくれるんです。それも旅のおもしろさですよね」
「ワインは酸が立ってしまうので、日本酒がおすすめです。僕は海外にも持っていきたいくらい!」「じゃがいもをつぶす作業や材料を混ぜる作業は、お子さまと一緒に楽しめますよ」。そういった料理が楽しくなるひと工夫の合間には、コウさんならではのユニークな旅行記も聞ける。素直にその時間を楽しみながら、私はふと思った。
「旅行先で料理をする」ということ。それは、旅を予定調和じゃないものにする方法のひとつかもしれない。
どのガイドブックにも載っている、観光客をさばくのが超上手なあの料理屋に行って、写真で見たことのある料理を注文する。きっとおいしいだろう。だけどそれは、あなたの筋書きだ。
コウさんにレシピを教えてもらったからといって、料理がうまくなったわけじゃない。だけど、少なくとも市場に行って、おすすめを聞いて、初見のものに出会って、ローカルの人に疑問をぶつけて、「料理の仕方教えてもらえますか!?」って聞くことって、未知すぎて、旅の興奮が全部詰め込まれている気がする。もちろん、失敗もするかも。煙たがられることもあるかも。でも、筋書き通りの旅をするくらいなら、私はそのほうがいい。
相変わらず料理には自信がなくても、Simple Houseを出たときには、旅先で料理をしてみたい、と思う自分がいた。
——それでですね、私実はこの前旅行に行く計画を立てていて、本当はこのレポート「実際にやってみた!」で締めたかったんですよ。だけど見事に風邪を引きまして、断念しました(泣)。今後、編集部Twitterなども始める予定なので、そちらでご報告します! 乞うご期待!
それでは今回のレシピをご紹介します! 市場に行って手に入れたローカルフードで、どんどんアレンジしてみてください。
① 白身魚と鎌倉野菜のソテー
マッシュルームソース ゆず風味
(調理時間:25分)
皮目をカリッと香ばしく焼いた白身魚に、濃厚なマッシュルームのクリームソースがよく合います。さわやかなゆずの香りをきかせることで、上品な味わいに仕上げます。
●材料(4人分)
白身魚の切り身(鯛やさわら、さばなど、3枚おろし、半身にしたもの):1尾分
強力粉、塩、粗挽き黒コショウ、サラダ油:各適量
赤大根、かぶ、カリフラワー、黄にんじん、グリーンアスパラなど:各適量
ゆずの皮のすりおろし、ディル:適量
◯マッシュルームクリームソース
マッシュルーム:16個
日本酒:大さじ2杯
バター:30g
塩、粗挽き黒コショウ:各少々
しょうゆ:小さじ1杯
はちみつ:小さじ1杯
生クリーム:200g
●作り方
1) 白身魚は食べやすく切り、皮目に数か所切り込みを入れて水けを拭き、塩、こしょうをふって皮目に薄く強力粉をふる。
2) 野菜は食べやすく切って柔らかくゆでる。
3) サラダ油を熱したフライパンに野菜を入れてこんがりと焼き、塩、こしょうをふって取り出す。
4) 続けてサラダ油を足して1を皮目を下にして並べ、身の周りが白っぽくなるまで中火で焼く。かりっとしたら裏返して30秒~1分ほど焼き、そのまま置いて余熱で火を通す。
5) マッシュルームは手で細かくちぎり、フライパンでバターとさっと炒め、 残りのソースの材料を加えてとろみがつくまで煮詰めて塩、こしょうで味をととのえる。
6) 器にソースを盛って3と4をのせ、かけてちぎったディル、ゆずの皮を散らす。
② 鎌倉野菜の味噌ビーフシチュー
(調理時間:30分)
③ しらすのひと口ポテトコロッケ
(調理時間:20分)