胸は女性の宝物だから。「乳がん」と戦う、すべての女性へ。

数年ぶりに会った中学時代の私の恩師は、殺風景な病室のベッドに腰掛けていた。

現在、日本人女性の14人に1人が発症するという乳がん。手術を控えているという知らせを聞いて、彼女のもとへ駆けつけたのが昨年の年末のこと。

 

───「忘れないように、触ってほしい」。

 

肉眼ではわからない、胸のしこり。これから切るしかないとわかっている胸を、彼女は私に触ってほしいと言った。

『癌』というものが、どんな形で、どんな固さなのか知ってほしい。今の私が、あなたに教えられることだから、と。

女性の胸に、
メスを入れるということ。

手術が無事に終わったということを聞いて、ほっと胸を撫でおろしたけれど、まだ顔を見に行くことはできていない。

片方だけ、大きくメスを入れられた胸へのショックが大きく、体だけでなく心も回復するには時間がかかりそうだ、という話を聞いたから。電話越しの彼女はそんなことを感じさせなかったけれど、教え子を前にしたら無理して笑顔をつくらせてしまうだろう。

どうしたって、同じ気持ちを抱えることはできない。けれど、同じ女性として、彼女に何かできることはないだろうか。そう思っていた時に、見つけたのが<PINK PERFECT>だった。

<PINK PERFECT>がつくっているのは、人工の乳首。

創業者である、コラス=アーベルさん自身が乳がんの摘出手術を経験し、医療では治せない心のダメージに寄り添うために、起業することを決めたと語っている。

「がんでダメージを受けるのは肉体だけではない。身体は化学療法で回復するけれど、負傷した胸を見たとき、私は愕然とした。胸に傷を持つことで、自尊心や自信も失われてしまう」。

アーベルさんは、同じ辛さを味わっている多くの人のために、乳房を切除した女性が装着できる『カスタムメイドの乳首』を提案している。

人工の乳首は世界初というわけではないけれど、とにかく彼女がつくるものは、本物と見分けがつかないほどにリアル。

片側の乳房が残っている場合は、まず型取り用のキットが家に届き、型取りをしたら写真、肌の色などのデータといっしょにそれを返送する。

後日、いくつかサンプルを送って、自分の乳首と100%と同じものだと言えるものを選んでもらうそう。

両方の乳房を摘出した場合は、カタログの中からもっとも好みのものを選んでもらう。色も形も本当に様々で、自分に合ったものを見つけられるというのは嬉しい。

乳がんの患者以外にも、人知れず胸にコンプレックスを抱いている女性は多いと思う。なかには、自分の乳首の上から装着したいという女性や、ジェンダーレスな男性からもオーダーが来るそう。

<PINK PERFECT>のFacebookには、この人工乳首のおかげで自信を取り戻した女性たちの喜ぶ姿が数多く寄せられていた。涙を流しながら、アーベルさんとハグしている姿も少なくない。

こういう取り組みがあることを知るだけで、少しでも心は楽になるのではないだろうか。創業者アーベルさんの顔が見えていて、本当に辛かったときの体験談や、乳がんと戦う女性への思いもHPに記載されている、という点も大きい。

「見てみるだけでも」と紹介してみたところ、恩師はすぐに申し込んでみたいと答えてくれた。

胸に傷を持つ、という悲しみを同じように理解することはできなくても、何かのきっかけをつくることが出来たのは、とても嬉しいことだった。<PINK PERFECT>は、この病と戦うたくさんの女性の心を、サポートしてくれる存在に違いない。

Licensed material used with permission byPINK PERFECT
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。