かけがえのない深い愛情を残してくれた。そんな、じいちゃんの話。
ふと思ったんです。
「愛」と「愛情」は一緒のもの?それとも、べつものなの?って。
辞書で調べてもふんわりとしか理解できなかったので、まわりにいる人生の先輩たちに聞いてみることにしました。
今回は、第4弾です。
あなたにとって、
「愛」と「愛情」って何ですか?
32歳のデザイナー(独身男性)Sさんの場合。
Sさん:違いはわかんない。うーん。愛は「ありがとうございます」みたいな感じなんじゃない?「有る難き」もの。そこに存在していること自体が、それが自分の中に生まれたことが難しいっていうか、有り得ないじゃないけど、すごく尊いもの。自分の中で。
ーー特別なもの?
Sさん:俺は、ほんとの愛は誰に対しても平等な気がするな。ほんとっていうのは、自分の中で特別だなって思える人、思えるもの、思えること。
与えるものだし、与えられてるものだからさ、愛されてるな、って思ったら愛したくなるよね。
ーーそう思うのはどういう時ですか?
Sさん:人生でいちばん印象に残ってるのは、3年前、じいちゃんが死んだ時なんだけど。
俺、じいちゃんばあちゃんに育てられてるんだよ。うちのじいちゃん、ほんと精神力が強くてさ。口数が少なくて寡黙で、誰よりも家族を愛してた人だった。
死ぬ間際に、最期、俺にかけた言葉が、「俺のコート使っていいからな」みたいな。肺がどんどんちっちゃくなって、呼吸が苦しくて、自分で死ぬってわかってると思うし、死なんて誰もが怖いはずなのに、わめき散らすこともなく、残されていく俺や妹や兄貴を心配してくれた。
「ありがとう」とか、そういうのじゃなくて、じいちゃんのありのままの言葉を残して死んでいったな、って思って。
ーー愛であり愛情であり?
Sさん:あ、愛じゃないかもね。何にも変えられない、そこには俺に対する何よりも深い情が入ってる。
じいちゃんがそこで俺に残してくれた愛情は、すごくかけがえのない愛情だった。
俺が兄弟の中でいちばん世の中をうまく渡れそうじゃないタイプって、わかってたんだよね。ずっとそういう俺を見てきたから、心配だったんだろうね。兄貴には「頼んだぞ」って。「へ?なんで俺だけ最後まで心配されてんだろう」みたいな(笑)。
すごいなって思ったのが、それ、俺の父方のじいちゃんなの。で、母方のじいちゃんが、俺が4歳のときくらいに亡くなっちゃってて。俺の記憶の中ではほとんどいないくらいの人なんだけど、その母方のじいちゃんが死んだ日と、育ててくれた父方のじいちゃんが死んだ日が一緒なんだよ。迎えにきたんだろうな。
ーーすごい!そういうことあるんですね。
Sさん:あるある。そういうのは愛なのかなあ。たぶん目には見えないんだと思う。目には見えないけど、絶対繋がってる。
ーー大きさに繋がってるってことですか?
Sさん:大きいも小さいもない。大きさで測るからダメなんだよ。それが一時的なものでも永遠に続くものでも、愛は愛だよ。
愛を受けて俺は生きてきたって思うけど、「その愛はなんですか?」って訊かれたらわかんない。自分を愛してくれてた、くれてる人のことを想像したら、親とかじいちゃんばあちゃんとか、家族のことが頭に浮かぶんだけどさ。
ーーでも、むかしの恋人からももらってましたよね?
Sさん:もらってた。いまでももらってると思う。
ーーいまでもって、どういうことですか?
Sさん:連絡がくるわけでもないし、具体的な何かがあるわけではなくて、感じる。わかる。わかりたいと思ってるのかもしれない。そうやって自分を肯定してたいのかもしれないね。
ーーまだくれてると信じたい?
Sさん:かもね。それは、いわゆる恋愛の好きとか嫌いとかそういうことではないのかな。家族に近しいもの。遠く離れていても、会ってなくても、愛を受けてることはわかる。それと同じことだと思う、それか、くれていてほしいって願っている自分がいる。
愛は関係だと思うけど、愛情はなんか、そこに生まれる思いやりとか、こころ?
ーー「情」って付いてるから。
Sさん:うん。……難しいお題だね。
ーーでも、いろんな人の考え方が知れておもしろいです。
Sさん:うん、人類が最後の最後までたどり着けない問題だから、俺らはそれを求めんじゃない?どんな宗教であっても、どんな価値観を持っていても、老若男女いつの時代もそれを求めてんじゃない?動物もそうだし。
わたしは、漠然としていてもいいから、「こういうことかも」っていう考えを持っていたいんだよなあ。きっと、5年先、10年先には変わっているんだろうけど、「いま、23歳のわたしはこう思う」っていう、そういうのが欲しい。
第1弾、第2弾、第3弾、そして今回を経て、自分なりに納得できる答えが少しずつ増えてきていることだし、もうちょっといろんな人に意見を聞いてみるんだ〜。
今回協力してくださったSさん、とってもとってもありがとうございました。
トゥ ビー コンティニュウド