とろとろの「玉ねぎのキャラメリゼ」をつくる裏技
ハンバーガーのバンズの間に隠れていると嬉しくて、カレーに入れてもなかなかいける。親子丼や肉じゃがなど定番の家庭料理とも相性抜群。この食べ物わかります?
答えは、玉ねぎのキャラメリゼ。
甘さたっぷりでとろとろのキャラメリゼが好みですが、嗜好は人によって大きく変わります。で、その好みによってキャラメリゼする時間が変わるのも当然のこと。ただ、好み以前に調理時間がわりと取られるんですよね。
さて、前置きが長くなりましたがSarah Hampelさんが「Food52」で紹介したキャラメリゼづくりに必要な「本当の時間」に着目してみました。
検証!
キャラメリゼはどうつくるべきか
これは、ジャーナリスト人生で最も価値のある仕事かもしれない。
こう言い放ったのは、大統領選挙や最高裁判所判事の任命を担当する米レポーターTom Scocca。彼は、多くのフードライターが提言する、玉ねぎをキャラメリゼするのにかかる時間の「ウソ」を問い詰めた記事(5年前「Slate」にて掲載)について、こう言及しています。
フード従事者たちも
じつはみんな、バラバラ。
この記事では、Melissa Clarkさん(彼女は「やわらかくキャラメリゼする」のにかかる時間は10分)からMadhur Jaffreyさん(彼は「ミディアムブラウンなら5分」)まで、さまざまな人を名指し。
そんな記事を彼が再び出したのは、昨年の話。
Tomさんが「玉ねぎをキャラメリゼするのにかかる時間は?」とGoogle検索をかけたところ、結果に現れたのは彼が自身の記事でウソと暴いた「5分」。それも、なぜやら彼の記事から引用されている。まるで、彼の傷に塩を塗るように……。
私は料理をするようになってから、このウソに度々遭遇してきました。
(以降、Googleは検索結果を修正し、彼の記事から最もふさわしい一行を抜粋するようになったそうです)
玉ねぎのキャラメリゼに関する知識は、Food52のアーカイブでも、はっきり言ってごちゃ混ぜ。さいの目でカットされていれば45分から1時間と書かれたものもあれば、薄いスライスであれば30〜40分といったものも。
でも不一致があって当然。
だってレシピが一緒でも、使うフライパンやコンロ、そして玉ねぎは料理人によりけりですからね。中にはタイマーを使わず、目と耳を頼りにつくる人もいます。
というわけで、今回私たちは玉ねぎのキャラメリゼに必要な本当の時間、そしてどのように玉ねぎの見た目が変わるのかを、3つのフライパン(玉ねぎは3つ、バターは大さじ1、フライパンはステンレススチール)を使って検証していきました。
それぞれ中火にかけて、15分、30分、60分。
下地(フライパン底にキャラメリゼの砂糖がくっつく程度)ができてきたら、大さじ1の水を追加、かき集めながらこれを繰り返していきます。
写真を見ると、玉ねぎの量がどっと減ったことがわかると思います(60分経ったフライパンでは、玉ねぎが1/2カップ分ほどまで減少)。色は黄色がかったオレンジから、赤褐色に変色しています。さらには玉ねぎ自体は固めで全体的に水っぽかったものが、キャンディのように甘く、バターのようにやわらかい質感に変身。
ただこの手法では、ちょうどいい時間を定めることはできません。中には(60分のと比較して)30分がちょうどいいと言う人もいるでしょう。たしかに、ものによれば30分で十分な場合も。
次に、キャラメリゼづくりを早めてくれる2つの裏技を試してみました。
(1) ベーキングソーダを投入する(科学的根拠はこちら)
(2) フライパンに蓋をしてから調理をはじめる
※いずれも時間短縮のために砂糖を入れる必要があります
結論から先に言えば、いずれも60分間中火で炒めたものと比べ、大して時短にはなりませんでした。でも、その甘さとやわらかさに多少の違いがありました。これはもう好みの問題。
裏技
1. ベーキングソーダ+砂糖:
J. Kenji Lopez-Alts氏が紹介する「15分でできる玉ねぎのキャラメリゼ」では、細かくスライスされた玉ねぎ5カップに対して、砂糖を小さじ1、ベーキングソーダを小さじ1/4入れます。強火にかけ「玉ねぎがやわらかくなり、深い茶色になるまで」キャラメリゼします。時間は大体15分ほどというものの、実際にこの色になるまでは40分ほどかかりました。
2. 蓋をかぶせてスタート:
この裏技を紹介するのは、Deb Perelmanさん。まずはフタをかぶせて15分ほど弱火にかけます。それから中火にあげ、小さじ1/2の砂糖を入れ、深い黄金色になるまで15〜20分かけてよくかき混ぜます。実際に写真に映る色になるまでは、35分ではなく、65分かかりました。
比較結果
〈60分間中火にかけたフライパン〉
私たちが60分間かけて調理した玉ねぎは、砂糖を使わなかったものの、裏技を使った2つよりも断然甘く、やわらかく仕上がりました。これならば、マッシュポテトやかぼちゃにも溶けてくれますし、フラットブレッドにも染み込んでくれます。
ただし、量はすっかり減ってしまうので要注意。激甘でとろとろの玉ねぎを求めているのなら、あらかじめたくさんスライスしておく必要がありそうです。
1.ベーキングソーダと砂糖を使った裏技
最もやわらかく、味がしっかり染み込んでいたのは、60分間中火にかけたフライパンでしたが、フタでかぶせる裏技よりはやわらかく、甘く仕上がりました。さらには60分間の手法ほど玉ねぎが減らないので、少量の玉ねぎでやわらかく、溶けるような質感を求めるのなら、この方法がおすすめ。
2.フタをかぶせる裏技
フタをかぶせる裏技を使ったものは、焦げた味の仕上がりに(弱火から中火にあげたせいかもしれません)。もっと言えば、ほかの2つに比べて臭みが気になりました。
ただ、量は一番減らなかったので、とろけるような質ではなく、カレーやパスタ用に玉ねぎの形を保ちたい場合にはこの手段がベストでしょう。
結論、
じっくり時間をかけてつくるが正解!
何はともあれ、5、10分ではキャラメリゼはつくれません。裏技を使えば30分〜40分ほど(それほど早くありませんが)。
でも、果たしてそれは"キャラメリゼ"と呼べるのだろうか。もしかしたら突き詰めるべき問題は、調理時間ではなく、見た目や味、とろみに関する共通認識なのかもしれません。
あなたにとってキャラメリゼとは、そもそもどんなもの?(ここまで聞かないといけないだなんて……ため息)
形がすぐに崩れるとろとろな状態を指しているのなら、せめて1時間は必要です。でも色を黄色から茶色っぽく変色させたいのなら、20分もあれば足りるでしょう。
「黄金色」だとか「キャラメリゼ」だとかざっくりな説明に頼らず、具体的にどんなキャラメリゼが必要なのかがわかれば、より正確な調理時間を解明できるはずです。