すぐに実現できるけど、「やっぱりできない」んだ
「伸びちゃうから、はい」
孫がお風呂に入っていると気がつかずに「うどん」を作ってしまった祖母。のんびりと湯船に浸かっていた自分は、運ばれてきたうどんが入っている丼を風呂フタに置いて、言われるがままに苦笑いで食べはじめる。すると再びお風呂場の扉が開いて。
「これ、大事なの忘れてた」
湯船のフチにトンと置かれたのは、七味。 19歳の頃の話です。
憧れのバスタイムシーン
のはず、だったんだけど
映画に出てくるような「バスタイム」に憧れていたのは、バスタブのなかで何かを食べたり飲んだり、日常と非日常の間を謳歌する登場人物がうらやましかったから。その憧れは不意に現実のものとなったんだけれど、うーん、なにかが違う。いや、けっこう違う。
湯船に浸かって「うどん」をすすりながら、思い出していたのはハーモニー・コリンの映画『GUMMO』のこのワンシーン。
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主人公のソロモンも、もれなく「憧れのバスタイムシーン」の登場人物のひとり。しかも、食べながらママに頭まで洗ってもらえるっていう。
ずっと、こういうのを想像していたんだけどな。彼が浸かっているのはバスタブで、私が浸かっていたのは湯船だ。彼がスパゲッティを食べていたのはバスルームで、私がうどんを食べていたのはお風呂場だ。彼のお皿の横に添えられているのはミルクで、私の丼の横にいたのは、七味だ。
4月26日は、「よい風呂」の日
今日は、「よい風呂」(※)の日。自分にとっての最高のバスタイムってなんだろう?って考えたとき、やっぱりあの頃の憧れは今も変わらず。
そんなのやろうと思えば今夜にでもできるじゃん!って? うーん、これには色々準備が必要なわけ。まず真っ赤なトマトのスパゲッティを食べるには、バスルームのタイルはブルーじゃなくちゃだし。
やっぱりすぐにはできないけど、3年後。
うん、3年後の4月26日には、絶対叶えるんだ。
※426(よい風呂)の語呂合わせから、日本記念日協会が2014年に制定。
若者たちの殺伐とした日常をドキュメンタリータッチで捉えた異色の人間ドラマ。主人公のソロモンとタムラーは、空気銃で猫を殺しては、肉屋に売りさばき、その金でシンナーを買う。そんな彼らと周囲の人々の生活が描かれてゆく。コラージュを多用した独自の感性による映像作りが見どころ。
DVD 発売中。(1,429 円+税)
発売:ワーナー・ブラザーズ
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