宇宙飛行士のためにつくられた「3つの香り」
どんなにクサいと思っても、5分後には僕たちの鼻はそれに慣れている。柔軟剤や香水を変えたときにイイ香りだと感じても、すぐに“無臭”になっている。
Ani Liuさんがつくる香りは、私たちがもっとも慣れ親しんだものであるがゆえイメージすら湧いてこない。だけど、宇宙飛行士にとっては大きな意味があるようだ。
「最愛の人」と「実家」
そして「大地」の香り
当然ながら、宇宙飛行士は地球の大気圏から離れ、無重力空間での生活を強いられる。つまり彼らは、一時的に“地球の香り”を感じていないことになる。
「もっと頻繁に宇宙に行けるようになって、大気圏の外で暮らせるとしたら、私たちが知っている地球の記憶はどうなるのでしょうか?」
Aniさんは多くの人に地球とのつながりを大切にして欲しいと考えた。
そして、まずは宇宙飛行士のために「最愛の人」と「生まれ育った家」、「大地」の匂いがする3種類の香水を作ろうと決意。
© Steve Boxall
実際に宇宙に持っていける香水はあるのか?どうやって持続的に香りを放つ仕組みをつくるのか?好きなときに匂いを嗅ぐにはどうしたら良いのか?
Aniさんは、「MIT Media Lab Space Initiative」と「International Flavors and Fragrances (IFF)」の協力を得て、これらの課題を解決していった。
© Ani Liu
長い時間を費やして導き出したのが、ダイヤル式で3つの匂いを嗅ぎ分けられるネックレス型のアイテムだ。液体ではなく、香りを放つ小さな玉が入っている。
現時点では確かに宇宙飛行士向けの製品。しかしAniさんは、一般人が月や火星に行けるようになる未来を見据えている。
今はまだ“無臭”だと考えられている匂いも、多くの人が恋しく思う日が来るのだろうか。
Top photo: © Steve Boxall