せんべいをかっこよく売る兄弟:ドキュメンタリー
『煎餅ブラザーズ』は、1960年に東京都江戸川区で創業した『笠原製菓』のオリジナルブランドだ。作っているのは、4代目にあたる笠原健徳さん、忠清さん兄弟。
「弟がうまいせんべいを焼いて、兄がうまく売っていく。だから『煎餅ブラザーズ』なんです」
もともと家業を継いでいたのは弟の忠清さん。兄の健徳さんはデザイン業界で働いていた。しかし、不況の煽りを受け、工場は廃業の危機を迎える。弟から「なんとか工場を立て直せないか」と相談を受けた健徳さんは、実家へ戻る決意をした。
「弟のせんべいはとても評判がよかったんですけど、せんべい自体が世間にとって当たり前のものすぎて、注目度が低かったんです」
そこで、健徳さんはパッケージデザインに着目。袋には、せんべいのイメージとかけ離れたコーヒー用クラフト紙袋を使った。手押しするブランド名の文字も「ワクワクしてもらうため、セクシーさのあるフォントを選んだ」という。また、バッグに常備できるよう、ジッパー付きのものを選び、利便性を高めた。
「ニューヨークのホットドックみたいなイメージで、パッケージを考案しました。せんべいをかっこよく食べ歩きしてもらえるように」
2014年、工場初の小売ブランド『煎餅ブラザーズ』がスタート。商品は瞬く間に話題となり、オンラインストアでは1〜2ヶ月待ちの商品もあるほどだ。また、企業からのオファーを受けることも多くなり、2016年には『星のや東京』のおもてなし菓子を製作した。
「実は、星のや東京さんとご一緒できたらと以前から思っていました。でも、うちみたいな潰れかけの小さい町工場が、って(笑)。お声掛けいただいた時は、本当に嬉しかったですね」
「危機を乗り越え、やり続けてきて、先代が築いてきたものが認められている。小さな町工場ではあるけれど、『やってやったぜ!』という気持ちが根っこの部分にはありますね」
おいしいせんべいをかっこよく売る、『煎餅ブラザーズ』の挑戦は続く。
TOP PHOTO: ©︎2018 TABI LABO