今は、意味なんてわからなくていい。――『日日是好日』
「毎日が、好い日」
好い(いい)日は、いいこと、楽しいこと、うれしいことばっかりだった日、とはまた違う。気になって辞書で調べてみると、たとえば「平穏で安らかな日」なんていう意味があるらしい。
雨の日には雨の音を聴き、雪の日には雪を見て、夏には夏の暑さに包まれ、冬には冬の寒さに身をふるわせる。おなじ日は二度とはめぐってこないから、匂い立つ季節の中を生きているその日こそが尊く、好い日になる。一期一会とは、くり返しているばかりだと思っていた日々にも、言えることなのだと気づいていく。
©2018「日日是好日」製作委員会
良い日もいいけれど、好い日に、身をおくこと。五感をつかって、その瞬間をあじわうこと。そうしているうちに、今どうしてもわからないことが、ふとして、わかってくることがある。「心はあとから入ってくるもの」なら、なるべくたくさん、涼やかな「すきま」を作っておきたい。時の流れの美しさを慈しみ、そこに憩えば、一生なんていうものは、あっという間に終わってしまうのかもしれないから。
『日日是好日』(にちにちこれこうじつ)
茶道教室に通った約25年について記した、森下典子のエッセイを映画化した人間ドラマ。真面目な性格で理屈っぽい大学生の典子は、突然母親から茶道を勧められる。戸惑いながらも従姉・美智子と共に、タダモノではないとうわさの茶道教室の先生・武田のおばさんの指導を受けることになり……。茶道の奥深さに触れ、すこしずつ人間として成長していく姿が瑞々しく描かれる。
監督/大森立嗣 原作/森下典子 出演/黒木 華 樹木希林 多部未華子 他
全国公開中。
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