大抵のことは、勘違いから始まる。――『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』
(超低音量で)
「わたしはぁ……自分の気持ちとかを大事にしたいんですぅ……!」
にしても、ヒロインほんとに声小さい。4日間くらいご飯食べていないんじゃないか?っていうくらいの声量でする路上ライブや、(一応叫んでいると思われる)主張。その光景はどこか滑稽で笑ってしまうけど、そんな彼女に対して主人公が叫ぶセリフの数々に、ふと我にかえってしまう人って多いんじゃないかと思う。彼女の場合は「それ」が、声の音量に出ているだけで、きっとたくさんの人に思い当たる節があるはずだから。
乱暴で、やけに長くて、それゆえに頭から離れないタイトルは、主人公のセリフから。大きな声で歌わない理由、つまり、やらない理由ばかりを探しては、過去のトラウマにフタをする日々。彼女の「声の小ささ」にあたるものが、きっと誰にもある。みんな心のどこかで、「音量を上げろタコ!」って罵倒されるのを、待っているのかもしれない。
©2018「音量を上げろタコ!」製作委員会
やらない理由よりも、やる理由を探したい。たとえそれが勘違いでも。ブレイクスルーはそこから始まるっていうことを、信じてみたくなる。
あ、そうそう、シュウマイにグリーンピースが乗ってる理由って……失礼、詳しくは本編で。
『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』
驚異の歌声をもつ世界的ロックスター・シン(阿部サダヲ)と、声が小さすぎるストリートミュージシャン・ふうか(吉岡里帆)。正反対の2人は偶然出会い、ふうかはシンの歌声が“声帯ドーピング”によるものという秘密を知ってしまう! しかもシンの喉は“声帯ドーピング”のやりすぎで崩壊寸前!やがて、シンの最後の歌声をめぐって、2人は謎の組織から追われるはめに。リミット迫る“声の争奪戦”が今、はじまる!
監督・脚本/三木 聡 出演/阿部サダヲ 吉岡里帆 千葉雄大 田中哲司 松尾スズキ 他
全国公開中。
Top image: © 2018「音量を上げろタコ!」製作委員会