気球も恋も、風まかせ。栃木・小山の上空で知ったこと

人には翼がありません。

だから人は、鳥のようには空を飛べないのです。

 

でもね、鳥と同じ目線で、まるで鳥になったかのように飛ぶことができました。栃木県小山市にある渡良瀬遊水地で、気球に乗ったんです。

 

気球と聞くと、「一生に一度は乗ってみたいよね」なんて言いがちでしょ。でも、もし友達からそんな言葉が聞かれたら、今ならこう言ってしまうと思います。



「一生に一度じゃ、足りないよ」

 

 

前髪、乱れるじゃん…

©2019 ETSU MORIYAMA

気球に乗るのってどんな感じだと思いますか?

 

「すごく揺れる」

「耳がキーンってなる」

「おなかの下あたりがヒューヒューする」

「寒い」「遅い」「わからない」

 

とまあみんなに聞くと、だいたいこんな答え。風船一つに命預けてる気がしてこわい、なんて声も。私のイメージはこれ。

 

「強風で前髪乱れそうだな……」

 

それがですね、気球って風とともに移動する乗り物だから、風の感覚がほぼなくてびっくり。だからスピードも感じなくて、遅いのか速いのかもイマイチわからないし、冬でもあまり寒くもないし、とにかく色々とっても不思議。もちろん前髪だって乱れません。不思議!

ワンボックスカーから現れた
しわしわの物体

©ETSU MORIYAMA

最大の心配事は、集合時間がえらく早いことぐらい。今回は、栃木県小山市で活動する小山バルーンクラブの皆さんの気球に乗せてもらうため、道の駅思川の駐車場に朝6時に集合しました(ちなみに私はダンスの次に早起きが苦手です)。実はこの渡良瀬遊水地上空での気球遊覧飛行、小山市のふるさと納税の返礼品になっているもの。1日1組限定で、年間で30組しか申し込めないというとってもレアな返礼品。貴重な経験をさせてもらえることになったのです。

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©2019 ETSU MORIYAMA

まだ夜明け前の薄暗がりの中、フライト場所まで移動して、準備スタート。まずは小山バルーンクラブのみなさんが乗っていたワンボックスカーのバックドアが開き、中から人が数人乗れるほどのバスケットが登場しました。同時に袋に詰められたしわしわの物体が引きずり出されていったのですが、これがつまり気球。参加者みんなで引っ張って縦に伸ばし、バスケットにセットしたガスバーナーに着火して、気球を膨らませていきます。

©2019 ETSU MORIYAMA
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気球と共に大きく膨らんでいく期待。膨らませている間は特別することはないのですが、なんだか落ち着かなくて気球の周りをウロウロしていました。

そして、いよいよその時が近づいて……。

©2019 ETSU MORIYAMA
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アイ・キャン・フラーーーイ !!!!!!!!!!

©2019 TABI LABO

気づいた時は、もう上空100メートルほどの所でした。びっくりするほどにあっという間で、地上の人たちに手を振るのも忘れたくらいです。ほとんど揺れもしないし、耳は少しだけキーンとしたけれど、同乗者は気がつかなかったと言っていたのでその程度。はっとしたら空の上なので、こわいと感じるヒマもないかも。

©2019 ETSU MORIYAMA

さてさて、気球の上からはどんなものが見えるのか?

飛行機とも、ヘリコプターとも違っていて、気球には、気球にしかない感覚と、見えるものがあります。風にまかせて飛ぶため、日によって航路が違い、見える景色も変わります。私たちが試乗した日に見ることができたのは、なんと、こんな小山のスペシャルフルセット。

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朝焼け、日本のシンボル、
ふしぎな影に、天然記念物まで

©2019 ETSU MORIYAMA

まずは、とっても綺麗な「朝焼け」から。早起きは苦手だけれど、こういった光景に出会うと、頑張ってよかったなあと思うものです。

こんな、日本のシンボルも顔を見せてくれましたよ。

©2019 ETSU MORIYAMA

富士山。この日本一の山は、どんな場所から見ても、思わず「おぉ〜」と言ってしまうから不思議です。スカイツリーも見えましたよ!

でも、この日の気象条件が作り出した特別な絶景も、富士山と同じかそれ以上に「おぉ〜」な光景でした。

©2019 ETSU MORIYAMA

霧の中に沈む小山の街です。

気球は、例えば風なら地上ののぼり旗がパタパタ揺れていたらダメとか、雨や雪は濡れて機体が重くなるし視界も悪くなるのでダメとか、飛ばすことの出来る条件が色々とある繊細な乗り物。この日も、朝方は霧がかなり出ていたので、ギリギリまで決行の判断がつかなかったくらい(状況次第では、当日の朝に順延判断が出ることもあるそうです)。無事フライトが決まって上空に上がると、まだ下に出ていた霧がこんなに素敵な風景を作り出してくれていました。

©2019 ETSU MORIYAMA

霧の贈り物と言えばこれも。

「ブロッケン現象」です。ご存知ですか?

背後から差した太陽の光が、霧や雲の粒子で散乱して、影の周りに虹のリングが出来ること。この日も、自分たちの乗る気球の影が映っているのが見えてはしゃいでいたら、パイロットの方に、ブロッケン現象も出ているよと教えていただきました。うっすらですが、バスケット部分の影の周りに、虹のわっか!(見えるかな?)

©2019 ETSU MORIYAMA

また、今回フライトした渡良瀬遊水地は、ラムサール条約湿地に登録された本州以南最大の湿地。絶滅危惧種や貴重な動植物も多く生息しているので、そういった生き物たちが見せてくれる様々なシーンもまた楽しいのです。サバンナ感がすごい! 思わず、ヌーの大群を探してしまいそうになりました。

©2019 ETSU MORIYAMA

残念ながらヌーの大群は見つかりませんでしたが、なんと、幸運にもスペシャルなゲストが登場してくれましたよ。

©2019 ETSU MORIYAMA

コウノトリのひかるくん!

(あっという間に行ってしまった天然記念物!)

上空300メートルの場所で
出来る意外なコト

©2019 ETSU MORIYAMA

実は気球の搭乗体験前、「気球の上ではすることがないから結構ヒマだ」というウワサを聞いていたんです。なもので、あれやこれやとヒマつぶしを用意して行きました。

 

実際、上空で出来ることって結構あります。飲食は、こぼしたり撒き散らしたりしないものであれば可能だし、腕を出して下にいる仲間に手を振ることだって出来ます。携帯電話も繋がるので、上司に「今日会社休みます」って連絡だって出来ますよ。ただトイレは我慢しなければいけないので、事前に済ませて置くことがマスト。もちろん、火の気のあるものや、危険物の持ち込みも禁止です。

 

まずは気球の上で、おやつを食べました。小山産のとちおとめ!

©2019 ETSU MORIYAMA

上空300メートルで、絶景を眺めながら食べたいちごの味は、なぜかいつもとは違ったマーヴェラスな味。

 

こんなことも可能ですよ。

©2019 ETSU MORIYAMA

シャボン玉をプー。風の影響が少ないので結構綺麗に飛ばせます。

 

他にも、双眼鏡で自分の家を探してみたり、ダンベルを持ち込んで筋トレなんかもしてみたり。どれも悪くないけれど、正直なところ、搭乗中の30分間は見るものが多くて何もいらないかもしれません。むしろ何も持っていくべきじゃないのかも。ボーーーーっとすることこそが、最高のアクティビティなのかも。

 

でも、これは敢えてオススメしておきます。地上からこの光景を見たスタッフが、

 

「これをされたら嬉しくてはしゃいじゃうかも」

 

と絶賛していましたから。

©2019 TABI LABO

 

「す、き」

©2019 ETSU MORIYAMA

小山でしか見えないもの

©2019 ETSU MORIYAMA

搭乗体験の後は、小山バルーンクラブのみなさんと気球の後片付け。最初に入っていた袋に気球を収納するために、みんなで上に座って空気を抜きます。これがまた、ただ座っているだけのようでいて、実はとってもいい時間。映画鑑賞でいうと、エンドロールをボーッと見ながら本編のハイライトを回想する時間といったところ。実際の搭乗体験の時も、準備から後片付けまで体験出来るのですが、気球が上がる仕組みがわかるしおもしろかったですよ。

 

搭乗体験を終えた後、とっても穏やかな気持ちになっている自分に気がつきました。小山ならではの絶景が見られたからなのかもしれないし、単純に高い所に上ったからなのかもしれません。でも、

 

「結局、最後は風まかせなんだよ」

 

上空で聞いた、パイロットのこんな一言を思い出しながら、小山バルーンクラブのみなさんと一緒に気球の片付けをしていたら、なんとなく、この人たちと一緒にこの小山の空を飛んだからなのかもしれないなあ、そんなふうにも思いました。

 

ちなみに搭乗体験を終えた後、もし小山バルーンクラブに入りたくなったら入会も可能だとか。気球が好きで、小山に移住した人もいるんだそうです。いいなあ、私も入りたくなったけど、毎週末朝6時集合とな。早起き、だけが問題だなあぁ〜。

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取材協力:小山バルーンクラブ
Top image: © 2019 ETSU MORIYAMA

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