「首をかしげるよ」ってつくばで言われるパンを食べた。そしたら…

つくばにある、千年一日珈琲焙煎所の大坪さんが言ってたんです。

「ブロートツァイトのパンは、食べるたびに首をかしげちゃうんですよね」

って……。実は、私もなんです。私も、ここのパンを食べるたびに首をかしげています。しかも、どのパンを食べても。

なんでこんなに
美味しいんだろうって…

「お店の隣に引っ越したい」

前回の引っ越しから、まだ数ヶ月しかたっていない金欠のこの私に、本気で引っ越しを考えさせたつくばのパン屋さん。その名は、「ベッカライ・ブロートツァイト」だああぁ! せめて、お店から徒歩5分圏内に住んでいたい。本気。

でも、そんな風に思うのは私だけじゃなくて、とにかくつくばの人たちが褒めるんですよね。そして絶対に食べるべきだって言うんです、このサンドイッチを。

これな。じゅるり。

ブロートヒェン ゼザム+モッツァレラ、ビオ、トマト(税込410円)

具はハムやチーズ、レバーペースト、タンドリーチキン……。チーズは国産のものを北海道から、海外のものは近所にあるチーズ輸入のお店から仕入れているそうで、このチーズがまた美味しいのです(チーズの種類もいろいろあります)。

レモンピールとジンジャー(税込160円)+クリームチーズ(税込100円)

レモンピールやチョコチップの入った甘いパンには、クリームチーズを。ジャムやピーナッツバターなんかも選べます。パンの種類とサンドする具材の組み合わせ数がとにかくたくさん。優柔不断なので、サンド具材の書いた黒板とパンを交互に見ながら、目が回るかと思いました。でも、決して「オススメはなんですか」なんて聞かないでくださいね。

欲望のままに
お選びください

「結局最後は、食べておいしいかどうかなんじゃないかなぁ」

そんな風に、店長の菅原さんは言うのです。確かに、ブロートツァイトのパンはどれもこだわりの詰まったもの。なのにお店には、原材料にせよ、ポリシーにせよ、説明書きのようなものが見当たりません。

「普段は聞かれなければほとんど説明はしないですよ。パンに入ったドライバナナとクランベリーがどこどこ産のオーガニックで……とか言われても、食べる前にお腹いっぱいになっちゃうかなぁって」

食べて気に入ってくれた人に聞かれれば、実はこういうものなんですって教える程度なんだそうですよ。

「今、逆になってることが多い気がして。食べもの屋さんってビジュアルだったり、説明が先。お肉にしても、どこどこ産の牛からからこれだけの量しか取れないんですよ……とか言われても、実際美味しいかどうかは、食べてみないことには」

確かにそれは、目とか耳で食べる、みたいなこと。

「で、実際食べて美味しくないなって思っても、言いにくい雰囲気とかもありませんか?(笑)」

……ある(笑)。

「ベスト3はなんですか」
は禁止とします

「売れてるベスト3をくださいって言われることも結構あるんです。何かの情報を見てお店まで来てくれたんだと思うんだけど、きっとその方は、売れてるものをここまで買いに来るのが、食べることよりも大きな目的になっちゃってるんだと思って……」

目の前にはもうパンがあるのだから。頭でいろいろ考えない。ショーケースの前に立って、欲望のままに選べばいいと思うのです。

私のおすすめは、レモンピールとジンジャーのパンにクリームチーズを挟んでもらうやつ。セグウェイツアーでお世話になった大久保さんは、バゲットにツナとセミドライトマト、パルミジャーノを挟んでもらったやつがおすすめって言ってましたよ。全部制覇したい!

ブロートヒェン キュルビスケルン+ツナ、セミドライトマト、パルミジャーノ(税込380円)

そうは言うけれども。

素材へのこだわりはもちろんちゃんと、と言うか、強くあるのです。

ショコラクロワソン(税込280円)

「粉は、海外のものはオーガニックの認証を取っているもの。国産のものに関しては今は北海道と栃木のもの使っています」

“オーガニック”って、ちゃんと第三者機関に調べてもらって認証をもらわないと名乗ってはいけないって、知ってましたか?

「北海道のものは認証は取っていなくてもそれに準ずるもの。無農薬・無化学肥料で作られたものを使っています」

国産小麦ってだけで安心っていうイメージがあるけど、農薬は、使うところは使うんだそうで。

「基準以内の農薬で作ってるっていう場合でも、具体的にどのくらい使ってるのかなってところも調べたいんです。どこで誰がどのように作ったのか、そこまで辿らないとなと思って。イメージだけでの判断をしないようにしたいなって」

このこだわりは、食べればわかるのです。(マジやぞ)

いいものを作ってる
生産者さんを応援したい

ちなみに、お店にはいろんな生産者さんの野菜や果物なども置いてあるんですね。

これは、パンを買いに来たお客さんが楽しめればいいのかなって思ってのこと。商品は曜日で変わり、場所代はとっていないそうです。

「つくばには、小さい形でも考えを持って作っている生産者さんがいっぱいいる。今はネットがあるとはいえ、もっと日の目を浴びてもいいような気もしていて。中には自分たちが見ても少し高いなぁというものもあるんですが、それも、なんらかの思いがあってそのスタイルで作ってるんだと思うんです」

なんとなく感じていたことだけれど、つくばって、強い信念を持っている作り手が多い気がします。

「なんかみんなぼんやりかもしれないけど、何かイメージがあってモノ作ったり店構えてたりする人が多いんじゃないんですかね。大坪さんの店もそうですよね。商売、というよりもっと別のところを目指している感じがするんですよね」

新しいことしないと
自分が飽きちゃうから

ちょうど取材の時に、お店の常連さんがいらしていて、その方がこんなことも言っていました。

「いいものを扱っているお店ができると、つくばはちゃんと人が来るんです。地方都市って資源に恵まれてるのもあって、安いってことが全てを差し置いて正義になってしまいがち。でもつくばは、いいものを作ったらちゃんと認めてくれる土壌がある」

そしてそれを選んでくれる人がいる。これは、私もつくばのいろんなお店を回りながら、ずっと感じていたことでした。

そしてここブロートツァイトにも、いいものという言葉ではくくれないほどいいものがたくさん。でも、菅原さんはまだまだ先へ行くようで。

「同じアイテムでも、今度知り合いに紹介された熊本の粉を使ってやってみようと思って。面白い材料に出会うと、いろいろとやってみたくなるんです。同じことやってると、自分が飽きちゃって」

近々、ドイツにも行くそうです。ベルリンに興味のあるパン屋さんがあって、そこで数日研修させてもらうんですって。もうこの人は……どこまで美味しいパン作る気なんですか(泣)。

「プレッツェルも絶品ですよ」

帰りがけに、常連さんがこの一言。初めてお店を訪れた日、お店の前のベンチで小さな女の子が頬張っていたのを、私も見逃しませんでしたよ。次、私も絶対食べる!(鼻息)

Photo by Etsu Moriyama
取材協力:つくば市

ベッカライ ブロートツァイト

住所:茨城県つくば市天久保2丁目10-20

TEL:029-859-3737

営業時間:7:30〜売り切れ次第終了

定休日:日曜日と月曜日

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。