一見、ガソリンスタンド。中身はつくばで人気のパン屋さん

茨城県在住の友人が、めちゃくちゃお気に入りだって教えてくれたつくばのパン屋さん、「encuit(アンキュイ)」。

到着早々、問題が発生しました。

誰がどう見ても、右から見ても左から見ても、外観が、「ガソリンスタンド」ですっ! どゆことっ!

広いし、いいかなって思って…

パン屋さんですよね? はい、パン屋さんです。

「広いに越したことはないと思って探してたら、たまたまここが空いてたから。初めて見つけた時はなんだこれはと思ったんですが。あと最初はイメージで、嫌がる人もいたけどね」

なんてことを淡々と語る店長の小山洋樹さん。そういえば友人に、クロワッサンが美味しいから絶対食べてねって言われましたよ。

クロワッサン(170円+税)

「昔クロワッサンが苦手だったのよ。バターが重くて脂っこい。だから、自分が美味しいと思えるものを作ろうと思って、材料の配合とか色々試したりえらい真剣に考えましたよ」

サクッとして中はもっちり、バターのコクが香るも重たさはなし、そんな人気のクロワッサンは、クロワッサンが苦手な店主さんが開発したものでした。どうりで何個でも食べられちゃうわけですね。お客さんはみんな、3個、4個、6個ってまとめ買いしていきます。

他にもアンキュイにはすごい種類のパンがあるけれど、どれも小山さんが美味しいって認めたもの。

「絶対妥協しませんよ。ふざけて作ってても、自分が食べてみて美味しいって思わないものは出さない。みんなが美味しいっていっても自分が納得しなければ出しません」

カエルやら目玉やら。
ネーミングも独特

ケロッちゃ(125円+税)

面白いパンを見つけました。「ケロッちゃ」……カエルのあんぱん?

「カエル好きで。ブリオッシュ・ア・テットというパンを、カエルの形にしてみました」

つくばのシンボル、筑波山のガマになぞらえてではなくて?

「あ、それ違う方にもこの前言われたけど……それでもいいかもね(笑)」

味への妥協は一切ないけど、パンのネーミングに関してはかなりゆるゆるな小山さんです。

ちなみに“つくばの目玉”っていうクリームパンは、つくば市内のケーキ屋さんとかがどこもつくばになぞらえたおしゃれな名前の商品出してたから、それに習って名前をつけたそうです。これね。

つくばの目玉(120円+税)

「つくばって名前の付いたものが一つくらいあったほうがいいかなーってのと、形が目玉おやじっぽかったから。昔ながらのグローブ型のクリームパン、表面の硬いところが好きじゃなくて、皮一枚むいて食べたりしてたの。だからこの形に。上にクリーム絞りやすいし、しっとり焼きあがって美味しいでしょ」

はい、私もクリームパンの硬いとこ、むいて食べてました。この形、賛成!

独特の商品を作っておくと
お客さんが来てくれる

881(160円+税)

「“881(ヤバイ)”っていう名前のパンもあるんだけど、これは業者さんにお願いしていたサラミが予想より優しい味だったから、もう少しパンチあるものにしたいと思って香辛料を使って色々やってみたらこのような形に結果なっただけ。最初は日に2〜3個しか売れなかったのに、テレビで紹介されたら日に150〜160個とか売れちゃった」

それはヤバイ。

「こういう独特の商品を作っておくと、これ目的に来てくれるお客さんがいる。そういうコアなファンを作っておくと、商売は意外とうまくいくと思いますよ」

これは、おつまみにしたら、ワイン13杯飲みますね。

味と同じくらい大切なこと

アンキュイって、本当にすごい種類があって、結構どの時間に来てもいろんなパンが選べるんですよ。てっきりお客さんのリクエストとかを聞いてるうちにこんなに増えちゃったのかな〜と思ったら、小山さんは、偏屈だからリクエストされると作りたくなくなる、自分の作りたいと思ったものしか作らないっていうんです。でもその一方で、

「形もなるべくだったら一般にないようなものにとか、この素材はどういう形にしたら美味しくみんなの口に入るかとか、いい材料使いたいけど値段とのバランスやうまくいく生産工程はあるかとか、常にいろんなこと考えてますよ」

なんて、お客さん想いなことを言うんです。単純に材料にこだわるだけでは、価格が高くなってしまう。こだわった商品の魅力もあるけど、お客さんにとっては味同様に価格も大事だって。

「うちも最初は高いとか、小さいとか言われたけどね。でもぼやけた味は嫌いだから、一個食べて美味しいって満足できるように濃く作ってるんです」

ところで、もともと取手市の出身だという小山さんが、どうしてつくばでパン屋さんを?

「このお店を開いた時は、つくばはもうパン屋さん激戦区でした。ラーメン屋さん激戦区だと、いろんなお店があって好きな人は嬉しいじゃない。それと一緒。自分も参戦して盛り上げないとって」

これまた、お客さんのため。

自分たちがどれだけ
嫌な思いができるか

それから、こんなことも言っていました。

「スタッフには、こまめに焼きなさいって言うの。例えばクリームパンが1日50個売れるんだったら、10個を5回出されるより、5個を10回の方がお客さんにとっては嬉しいはず」

だって、パンは焼きたての方が嬉しいでしょ? って。

お店一番人気のクロワッサンも、最初は1日3回しか焼かなかったけど、4回、5回と焼く回数を増やしたそう。そしたら、その時間にお客さんが来てくれるようになり、結果たくさん売れるように。

「お客さんのためにどれだけ自分たちが嫌な思いができるか、それが、結果としてお互いに幸せになるんです。だから、お昼どきでもしょっぱいパンを一気に焼いて出すんじゃなくて、3〜4個をこまめに焼きなさいっていうの。その方がお客さんは嬉しいでしょって。めんどくさいんだけどね」

頑固者をにおわせる発言もあったけど、やっぱり小山さんは、お客さん想いな人でした。だって話しながら途中に見せる笑顔も優しかったもんね。

行ったことある人ならわかるかもしれませんが、アンキュイって、お店の扉を開けるとすごくワクワクするんです。その理由を、音楽のせいかな? パンの種類が多いからかな? なんてずっと考えてたんだけど、どうやら、お店のスタッフさんも、商品の一つ一つも、すごくお客さんである私たち想いだからなのかもしれません。某人気テーマパークばりに。もうね、みんなかわいくて全員まとめて連れて帰りたくなります。

ちなみに、クロワッサンの焼き上がり時間は、9時、10時半、12時、15時、17時ですよ。買いすぎに気をつけて、アンキュイ・ワールドを楽しんで来てくださいね。

Photo by Etsu Moriyama
取材協力:つくば市

encuit(アンキュイ)

住所:茨城県つくば市稲荷前33-1

TEL:029-879-7258

営業時間:9:00〜19:30

定休日:火曜日、水曜日

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。