セグウェイは乗り物じゃない! inつくば
いや、セグウェイは乗り物です。
でも、セグウェイはただ移動するだけの乗り物じゃない。
セグウェイは、“ロボット”だとな。
茨城県つくば市は日本で初めてセグウェイが公道を走れるようになった街。でもまた、なんで? ざっくり言うとそれは、
【その1】
セグウェイは、“搭乗型移動支援ロボット”という位置づけだから
【その2】
つくばは、さまざまなロボットの実証実験をしている街だから
……です。
「セグウェイは、ロボットという位置づけなんです。移動するための手段というより、移動を助ける、移動する時に街の人とコミュニケーションをとったり、街を新しい視点で見る手助けをするという点で、乗り物というよりかはロボットという考え方なんですね。今回のツアーでも、そんな風に感じてもらえると思いますよ」
日本で一番セグウェイが
走っている場所は…
今回ツアーガイドをしてくださる讃井(さない)さんは、まず、お手製の紙芝居でセグウェイの基本から世界事情までを、わかりやすく教えてくださいました。
「外国では、1000ヶ所以上の場所で街中をセグウェイが走っています。アメリカでは警察官がパトロールに使ったり、フランスでは街歩きをするように石畳を走ったりもしているんですよ」
日本では、羽田空港や公園などの私有地を走ってたり、一番保有台数が多いのは、なんとゴルフ場。でこぼこ道でも平気な、ちょっと太いタイヤのものが走っているんだそうです。セグウェイで移動するゴルフ、セグウェイゴルフって言うんだって(そのままやん)。
体の一部になるまで
練習するよ
座学の後は、いよいよ練習。ただ乗るだけ、と思いがちだけど、初めてだとまずバランスをとるのが難しい……。乗れたら今度はまっすぐ進む、90度、180度方向転換、それから、指示に従っていろんなパターンのジグザグ走行を練習します。一番のポイントは目線。いつもまっすぐ、遠くを見るように。
「前・後ろは体重をかければ動きます。横移動はほとんど体と一体化させて動かす感覚で。操作するぞ!って思ってしまうと逆に危ないです」
そして段差の練習。自転車よりタイヤが小さいしサスペンションがないので、思ったより「グゥエッ」となります……。
「わりと公道って段差があったり、落ちてる木の枝を踏んだりするだけでグラグラに。操作の方にばっかり夢中になってしまうと楽しめないし、つくばは公道を走るので、子どもたちが寄って来た時にはピッと止まってほしいんです」
だから練習は入念に。セグウェイが体の一部になるまで。普段は40分、長い時で1時間くらいやるそうですよ。おかげでツアー中に危ないって言われたり、これまで一度も怪我や事故などが起こっていないんだって。
最終試験もパスしたところで、いざ、つくばの街へ!
大きなお尻で失礼します(真ん中)
つくばのセグウェイツアーは、公道を走ります。駅前のイノベーションセンターを出発して、筑波大学そばにある松見公園まで。行って帰ってだいたい1時間くらい。ガイドさんは2名同行してくださいます。今回は、讃井さんと大久保さんにお付き合いいただきましたよ。
ちなみに、セグウェイに乗るのに必要な条件ってあるんですか〜?
「年齢は18歳以上で自動車の運転免許が必要です。運動能力は、普通に歩いて、階段の上り下りができるかだけ。練習したらみんな乗れるようになりますから大丈夫ですよ! 80歳くらいのおじいちゃんとか、片手が不自由なおじいさんとかも、講習してみて大丈夫だったので乗っていただいたことがあります」
体重は軽すぎるとセンサーが反応しにくいのでリュックを背負ってもらうことはあるけど、上も130キロくらいまでは大丈夫とのこと。
「あ、もう一つ大事なことがありました。人の話を聞けること! たまに若い男の子で、きゃっきゃしてじゃれ合いながらバランス崩したりしてて。教えるにも、話を聞いてくれないと(笑)」
みんな、ちゃんとガイドさんの話聞いてくださいね。人の話を聞くってのはね、オトナの基本よ!(上から失礼します)
そんなわけで、「つくばエキスポセンター」に到着しました。きゃほ〜い。
ここは、かつて開かれた科学万博つくば’85を記念して設置された施設。今は、科学館や世界最大級のプラネタリウムなんかが入ってて、外にはH2ロケットの実物大模型があります。じつは、中のプラネタリウムに入ったことがあるんですが、映像も音響も椅子の傾斜も最高すぎて、あろうことか、拙者、ほぼ爆睡……。
「あ、寝ますよね。筑波大生もよく昼寝に来てますよ(笑)」
50年後を想定して
街を作ったんだって
さらに進むと地図があったので、見てみました。
「つくばは全て計算されて作られた街。大通りは車の流れを優先し、渋滞が起こらない設計にしたんです。反対に駅中心部は亀の甲羅のようになっているんですが、これは車のスピードが出ないようにするため。歩行者の安全を考えたデザインなんですよ」
木を一本植えるのでも、空間と植物の専門家が話し合い、植物の生態から50年後の景観を考えて選び植える、みたいなことをしていたのだとか。
これがウワサの“栓抜きタワー”
そして「松見公園」に到着。
池のそばにある展望台は、地元の人に「栓抜きタワー」っていう愛称で呼ばれてるんですって。そしてこのタワーを含む公園全体の設計は、菊竹清訓氏という方が手がけたもの。
「つくばの建築物は、磯崎新とか、谷口吉生とか有名な方の作品がたくさんあって、じつは建築マニアの聖地なんですよ」
公園内には芝生があって、ここにレジャーシートを敷いて休憩します。
「冬場は、つくばの特産・福来(ふくれ)みかんを使った筑波山型のサブレ、夏場は福来氷というお菓子とお茶をお出ししてます」
それをいただきながら、いろんな話を。
「あ、トタンコットンカフェも美味しいですよ! パンケーキがフワッフワで、平日でも9〜10時に整理券とらないと入れないけど」
「やぐら寿司は行きました? ネタも大きいし、あそこは美味しい」
「シェ・レノンも美味しい。田舎風フレンチ。本当に美味しい」
今回の休憩中、3人で話したのは、主につくばの美味しいお店について。食いしん坊万歳! 普段も、話が盛り上がると休憩が長めになるそうです(笑)。
小さなことに気がつける
それがセグウェイスピード
ちょうどツアーに参加した時期は、桜がきれいでした。トンネルみたいになってるところもあったりして。
「夏は緑、秋は紅葉がきれい。季節によって見える景色も違って楽しめますよ」
ツアーの途中、きれいに手入れされた花壇も見かけました。これは、市民ボランティアの方々が手入れをされているんだそう。
すぐに止まれて安全というのもそうだけど、時速6〜8キロのセグウェイスピードで走っていると、こういう小さなところに気がつけたりもするんです。
「あ、植物が好きなガイドさんもいて、その方はコースに咲いてるお花の話をしてくれますよ。基本的な内容は一緒ですが、ガイドさんによっておしゃべりの内容もいろいろです」
ちなみに、もっとセグウェイの性能自体について話すガイドさんもいるみたい。でも、リチウムバッテリーがこうでとか、ジャイロセンサーは1分間になんたらかんたらとか……かなりマニアックなようですが(笑)。
さ、他にもあちこちに寄りながら、ツアーもいよいよ終盤。つくば駅の方に帰って来ました。で、渡りました、横断歩道。じつは私、これを今回一番の楽しみにしてて。こんな感じになりましたよ。……ん?
アビイ・ロードやん(by ビートルズ?)
この感じ。進行方向逆だけど、4人じゃないけど、ビートルズの名アルバム「アビイ・ロード」のジャケットみたいじゃない?
ちなみに走ってるのは、つくば駅すぐそばの交差点の横断歩道です。私、だいぶ渋い顔してますけど、かなり楽しんでますよ。……楽しんでますよ!(念のため2回)。
最後に立ち寄ったのは、つくば駅そばのペデストリアンデッキの上。
「天気がいいと、ここは筑波山とH2ロケットが一緒に見えるポイントなんですよ。今日は、見えますね!」
スタンプ3つで常連認定。
特別コースに出られます
ツアーの後はこういった手帳がもらえて、3回走るとリピーターさん認定が。
「いろんな場所に行けるようになります。隣駅のほうまで行ったり、カフェでお茶したり、つくばってパンの街だったりするので人気のパンを買いに行ってみんなで公園で食べたり」
楽しそうだぞ。3回来ちゃいそうだぞ。
「手帳には、今日走ったコースのメモを描いてもらってもいいと思いますよ。子供たちと触れ合ったところにはニコちゃんシール、お花が綺麗だった場所にはお花のシールを貼ったりして」
ツアーを体験したお客さんにアンケートをとると、じつはセグウェイ自体の感想よりも、
「いろんなことを知ることが出来てよかった」
とか、
「つくばの街を好きになった」
とか言う声の方が多いんだそうですよ。これはまさに、新しい視点で街を見ることのお手伝い。やはりセグウェイは、ただの移動手段ではないようです。
「こういったツアーを通してセグウェイの安全性と良さがたくさんの人に伝われば、今後いろんなところで乗れるようになります。外国から来たお客さんも増えるので、日本っていいところだなぁと感じてもらえる機会にもなればいいなあと思って。つくばはその夢を実現するための第一歩なので、頑張ってます」
と、大久保さん。
私もだいぶ楽しんだんですが、ひとつ心残りがあるんです。それは、街の人に手を振れなかったこと。出来なかったんですよね。シャイなんで(白目)。
でも今回、つくばはセグウェイに対して温かい街だということがわかりました。だから次は絶対にチャレンジしようと思います。お母さん! 私、セグウェイ乗って、街中で手を振りまくるよ!
住所:茨城県つくば市吾妻1-10-1 つくばイノベーションプラザ前
TEL:080-3434-8360
営業時間:ツアー開始時間 午前9:30〜/午後13:30〜(約2時間30分)
(*冬季12月〜 午前9:30〜/午後13:00〜)
開催日程:土日祝日(HPにて要予約)
定休日:不定休