原木しいたけは、つくばの森を救う

ひょっとすると、先日茨城県つくば市でお会いした「なかのきのこ園」の社長・飯泉さんは、つくばのC.W.ニコルなのかもしれない……そんなことを考えながら、先日狩りに行って持ち帰ったしいたけを食べていました。え? みんなC.W.ニコル知らない? あの森が大好きなおじさんだってばよ。

その話はおいおいすることにして、とりあえずこのしいたけ、すんごいですよ。まず歯ごたえがえらく気持ちがよい。さらには味が濃い。加えて苦手な人も多いしいたけ独特のエグ味もありません。

こんなの、初めて…。

そして写真に撮ると妙にかわいい。

「うちのしいたけは全部、“原木栽培”で育てています」

原木栽培ってのは、糖などの栄養を入れて人工的に作ったブロックで育てる“菌床栽培”に比べると、めちゃくちゃ手間がかかってしまう栽培法。

20〜25年のコナラやクヌギを山から切り出してきて、そこに菌を移植するんですが、この原木1本あたりの値段も今すごく高騰しているんだとか。

しかも、農薬や化学肥料は一切使わず、原木の栄養と水だけで育てるんですって。

「菌床栽培だと、菌の移植から採れ頃になるまで早くて3〜5ヶ月ぐらい、一方の原木栽培は温度管理下で早くても1年、長いものだと2年くらいかかりますよ」

手間がかかる上に収穫スピードと量の問題もあって、周りはどんどん菌床栽培に代わりつつある中、原木栽培のものは1割くらいしかないんだとか。

でも、食べ比べるとわかるけど、味が全然違います。生産風景もいろいろと見せていただきましたが、この手間暇をかけて育てられたからこその味だな、という感じ。

それにしたって、どうしてつくばでしいたけ狩り? って思いませんでしたか。じゃあ、こちらをご覧くださいませ……。

か、かわいくないですか?
(ハァハァ…)

ね、かわいいですよね?(きのこ大好き)

なかのきのこ園が原木の保有数が日本一らしいと聞いて、そこに生えてるしいたけの数を想像したら、いてもたってもいられなくなってしまい。しかも、一年を通してしいたけ狩りができるとな。実際にしいたけ狩りが楽しめるスペースは限られているんですが、それでも普段見られない光景が広がっていて血圧があがりまくりました(ちなみにしいたけには血圧を下げる作用があると言われているらしいですYO)。

ヒダの開き具合で
採れ頃をチェックせよ

やはり、大きいものが採れ頃ですか? って聞いてみたところ、そんなこともないとな。見極めのポイントは、裏を見ること。

こんな感じでヒダがつまりすぎておらず、かつ開きすぎていないものがグー。ちなみに、もっともっとヒダに寄りまくると、ナイアガラの滝みたいな写真が撮れます。

収穫は、最初はおそるおそるだけど慣れてくると楽しくて止まらなくなり、採りすぎます。原木からしいたけをもぎ取る時の感触がまた独特で、これ、文字で説明するとですね、なんかこう…メリメリメリメリ、ズボっ! って感じです。

こんなに採りました。けどどうする私。一人暮らしだぞ。(おすそわけしました)

木を切らないと、森は死ぬ

初めのほうで、「原木栽培は、木を伐採してそこに菌を移植して育てる」と言いました。これを、自然破壊じゃないかって思う人もきっといますよね。だからちゃんと説明しておきます。

みんなが美しいって思ってる里山の風景って、実は定期的に人が入って木を切るなどの手入れをしているから保たれていたりして。放置され続ければ、その里山はいずれ荒廃してしまうって、生物の授業で習ったはず。

「年をとった木を定期的に切ると、そこから新しい芽が出て森を若返らせることができるんです。それに、しいたけ栽培に使用して栄養を使い果たした原木では、カブトムシが育ちます。その糞は、堆肥になって木を育てます」

資源を循環させながら環境を保全していく、これを「環境保全型農林業」と言って、原木しいたけを作ること、食べることは、つまり森や自然を守ることに繋がっていくというわけ。

「元気に成長する木は、二酸化炭素を吸収して地球の温暖化も抑制します。新鮮な空気を生み出し、同時に多様な動植物の生息圏作りにも貢献する。ちなみに年に3回、このあたりの生き物と触れ合う教室なんかも開いていますよ」

そう、きのこ園の経営の傍ら、飯泉さんは「NPO法人 里山再生と食の安全を考える会」を設立し、原木栽培の副産物で木質系バイオマスの土壌改良材を生産したり、里山を拠点とするグリーンツーリズムで地域の人々と交流したりもしているのだ。

ただのきのこ園の社長さんじゃないんですよ、彼。なんか、つくばのC.Wニコルみたいでしょ? きっと、つくばの森を守る人なんです。

持ち帰ってもよし
採れたてを食べてもよし

ちなみに、しいたけ狩りは電話での予約制。当日は事務所で袋をもらい、最後に採れたグラム数を量ってもらい支払いをします(300円/100グラム)。事前に予約しておけば、園内にあるバーベキュー施設で採りたてを食べることもできますよ(一人前1500円と2000円のコースがあります)。

見逃さなかったですよ私。つくばの地酒、稲葉酒造場さんの「男女川(みなのがわ)」も置いてありました(“ダンジョガワ”と読んではいけません。“ミナノガワ”です)。焼きたてのしいたけと冷やの男女川、絶対最高。うん全体最高(写真には写ってないけど、浦里酒造店さんの「霧筑波」もかなりおすすめです)。

すんごい風味!
しいたけクッキー

最後に、こんなのもあるんですよっていただいたクッキーが、よく見たら「しいたけクッキー」でした。おそるべき原木しいたけのポテンシャル……。つくば市物産館や、つくば駅構内のお土産ショップ「つくばの良い品」などでも購入できるので、是非一度食べてみてほしいです。口の中がね、しいたけのウマ味まみれ。グアニル酸パラダイス!

 

森のめぐみクッキー・しいたけ(180円+税)
Photo by Etsu Moriyama
取材協力:つくば市

なかのきのこ園

住所:茨城県つくば市中野169

TEL:029-836-6003

営業時間:8:00〜17:00(*不規則に早く終了することがあります)

定休日:年中無休(バーベキューは水曜日がお休みです)

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。