「ヒジャブを着けたら、女性らしくなれた」――ラハマリア・アウファ・ヤジッド

「喜んでヒジャブを着けて
私は自信を持っている」

©Takeyoshi Maruyama

──コーディネートにヒジャブを取り込む秘訣ってありますか?

 

日本のファッションって、可愛いなと思うんです。服の雰囲気もですけど、アクセサリーや小物の使い方も好きで。その可愛さになんとかヒジャブをあわせたい!とかは考えていますね。

例えば、日本のアパレルショップに行ったら、当然マネキンはヒジャブを着けていません。この洋服にどうやってヒジャブを巻いたらマッチするのかな?と頭の中でイメージするんです。

あとは、自分の骨格や顔立ちにあわせて、着る洋服と巻くヒジャブを決めています。そういうことを考えるのは楽しいですよ。

 

──あらためてなんですが、アウファさんにとってヒジャブって制限じゃなくて、楽しみなんですね。

 

パズルみたいな感覚ですね。組み合わせることを楽しむという感じかな。

ヒジャブを髪の毛みたいに捉えてるんですよ。その日の気分でヘアスタイルを変えるように、色や長さ、巻き方もアレンジする。

私はどちらかと言うと丸顔なので縦長に印象づけるためにトップを尖らせることが多くて今日は分け目を真ん中からズラして意識的にアシメントリーにすることで髪の毛をなびかせるようなイメージで巻いてるんですがメイクではアンニュイな雰囲気を演出するために黄色のマスカラとあとはそばかすも付け足してみたんですけど、どうでしょう?そばかす、気づいてくれてました?

 

──メイクにまで注目してなかった。スミマセン……。

 

いえいえ、ぜんぶ自分が好きでやってることなので。今みたいに勢いに乗っちゃうと話が止まらなくて、よくファッションのことしか考えてないとか言われます(笑)。

ただ、あくまで宗教の教えを守ることが大前提です。私にとっては、やはり信仰が一番大切なことなので、ファッションだけが独り歩きしないように、誠実に日々を過ごしています。

©Takeyoshi Maruyama

──ファッションと言えば、世界中でモデストファッションが注目を浴びています。

 

日本ではまだ浸透していませんが……実は日本人のファッションって、モデストファッションとも捉えられるんです。

 

──!?

 

トレンドのひとつとして、オーバーサイズがありますよね。イスラム教では、ヒジャブで髪を隠すだけでなく、体のラインを隠すように教えられます。だから、ムスリムの服装は基本的に大きいサイズが多いんです。

偶然の一致みたいな感じですね。今着ているシャツは「オーバーサイズTシャツ」という商品名でした。

 

──たしかに欧米に比べて、わりと体型をカバーしたり、隠したりする傾向はあるかも。そんな日本のファッション+ヒジャブっていうのが、アウファさんのスタイルなんですね。

 

簡単に言えば、そんなところです。

ファッションだけじゃなくて、発信も楽しんでます。

Instagramにアップしてるほとんどの作品は、メイクやスタイリング、空間づくりから撮影まで、すべて自分でやることにこだわっています。撮影の回数を重ねるごとに、作品の質は上がっていて、自分には何が足りないのか、どんなことに向いているのか、どんどん見えてくるんですよ。そこに感動とやりがいを感じます。自分自身を知るための「ものさし」として、自撮りは欠かせない。

客観的に見れば、街なかでカメラと三脚を持って自撮りをしているので、変な人ですよね(笑)。

©Takeyoshi Maruyama

──自分のファッションやスタイルを発信しはじめたのって、何かきっかけがあるんですか?

 

実は自撮りは小学校の時からやっていました。はじめの頃は、趣味の範囲だったのですが、「発信」を意識するようになったのは、大学生活後半あたりからですね。

大学の専攻が建築だった関係でイラストレーターやフォトショップの使い方や、基本的な写真の構図や色の仕組みを学ぶ機会がありました。本格的なカメラも買って、作品の表現の幅が一気に広がったんですよ。

作品をみんなに見て欲しいという気持ちはもともとあったのですが、私は言葉で何かを発信することに長けおらず……。

ちょうどその頃にInstagramが流行りはじめたんです。写真作品で自己表現をするInstagramの特性が私とマッチしていたので、それ以来はどんどん発信するようになりました。

ハッシュタグとかを使って、いろんな人に見てもらおうって考えましたね。たくさんのユーザーに楽しんでもらうために、自分のフィードの色調を統一したりして、世界観づくりにこだわりました。

多くの人がポジティブな反応をしてくれています。

 

──今ではInstagramの公式アカウントからもフォローされています。

 

ありがたい限りです。最初は何かの間違いだと思ったんですけどね。

チェックしてみるとフォロワーの数は多いし、間違いないなと確信できました。お褒めの言葉があったInstagramからのメッセージをスパムだと思っていたのは、本当に申し訳ないです(笑)。

 

──Instagramでは、どんなメッセージを伝えたいと考えていますか?

 

いろいろな気持ちがありますね。

「イスラム教は堅苦しい」や「ムスリムは時代遅れ」というネガティブなイメージを持たれてしまうことが多いし、ヒジャブなんて女性への抑圧だとかも言われるし。

ただ私たちは、自らの意思で喜んでヒジャブを着けているし、私の知る限り、ヒジャブを纏う女性って自信に満ち溢れているんですよね。それを知らずに、「その布ははずせますか?」とか言われたり、ムスリム女性の社会的地位がネガティブなものとして話題にされてしまうのは、あまり心地よくないです。

 

──ごちゃごちゃ言われたくない、と。

 

自分ではそう表現しないですけど、ニュアンスは合ってます。誰かの人生に首を突っ込んでくる人が必ずいますよね。とくにSNSは表面的なコミュニケーションになってしまいがちだし。

写真でその人がどんな表情をしていても、その人が心の中では何を考えているかなんて、結局その人になってみないと分からないものです。人間に限らず、この世に存在するありとあらゆる生命にも同じことが言えます。自分以外の何者になるかなんて、不可能ですよね。

みんな同じ人間で、それぞれがいろんな気持ちを抱えながら生きている。特別枠なんてないんです。

そして、Instagramを通して、もっとムスリムに対するイメージをフラットにしたいです。街中の本屋さんにいろんな本が並んでいる中で、ムスリムが表紙のファッション誌があったり、ごく一般のコーディネート紹介のコーナーで、ちゃっかりムスリムがいるのもいいですね。そのくらいナチュラルな感じが理想です。

様々な文化を受容できる日本にしたいし、それが実現できる可能性は十分にあるなと思っています。

ラハマリア・アウファ・ヤジッド

インドネシア人の両親をもつ、東京都出身のクリエイター。ヒジャブを使ったモデストファッションを提案し、東京らしいセンスを取り入れたメイクやファッションをInstagramを中心に発信している。スタイリングアドバイザーとしても活躍中。

 

【Instagram】https://www.instagram.com/aufatokyo/

Top image: © Takeyoshi Maruyama
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。