「ヒジャブを着けたら、女性らしくなれた」――ラハマリア・アウファ・ヤジッド

ラハマリア・アウファ・ヤジッドさんはファッションを通して日本におけるイスラム教やムスリムへのイメージを変えようしているクリエイターだ。世界中でモデストファッションへの注目が高まっているけど、日本ではまだまだ。そもそも発信する人が少ない。東京生まれ東京育ちのアウファさんがヒジャブを着けてInstagramにセルフィーを投稿をすることは、大きな意味があるはずである……。

なんてインタビューの趣旨は彼女と話しているうちに忘れてしまいました。だって「お気に入りのファッション」と「イスラムへの信仰」を同じテンションで話すんだから。

それにしても、ヒジャブにベレー帽、オーバーサイズのカットソーというアウファさんのコーディネートは最高にイケてます。

「日本の風景にマッチするヒジャブを知って
着けるのが楽しくなっていった」

©Takeyoshi Maruyama

──今、ラマダン中ですよね?

 

はい、日中は水も飲めないんですよ。ただツラいのは承知の上。貧しい人の気持ちを知るだとか、めぐみが日々当たり前のように溢れていることに感謝をするといった意味が、ラマダンにはちゃんとあるんです。

それに日没後には近くに住んでいるムスリムの友人たちが私の家に集まって、一緒にご飯を食べて、とにかく駄弁るっていう楽しみもあるし。食べないという制限があることで生まれるコミュニケーションですね。

多い時には50人ぐらい集まるんですよ(笑)。

 

──ホームパーティーにしては人数が多すぎますね(笑)。

 

正直キャパオーバーですね。みんなで床に座って楽しくワイワイしています(笑)。

ラマダン明けには日本のお正月みたいにお祝いをして、挨拶回りもするんですよ。その時はだいたい150人ぐらいが、私の家に出入りするんです。

 

──田舎に親戚大集合!みたいで楽しそうですね。ところで、周囲のムスリムの方々は、アウファさんの活動についてどう思っているんでしょう?

 

みんなクリエイティブなことをしているよねと言ってくれます。否定的な意見はほとんどありませんね。

私のファッションをきっかけに、イスラムの世界に興味を持ってくれている人も実際にいます。

©Takeyoshi Maruyama

──ヒジャブは子どもの頃からずっと着けてるんですか?

 

イスラム教の女性は、思春期を迎えたらヒジャブを着けるのが義務で。本当は中学校や高校でも着けていなければいけなかったけど、制服の問題があったり、あとはまだ自分自身がヒジャブを着ける勇気がなかったりしたので、身につけていませんでした。

両親が自分のタイミングでいいよと言ってくれて、環境がガラッと変わる大学に入る時にヒジャブを着けはじめました。

最初はお母さんや親戚のお下がりの布を使って巻いてました。ただ、講義を受けている時に浮いてしまうんですよね(笑)。布の配色がオレンジとか派手なものだったんで。

 

──黒いのが普通かと思ってたら、違うんですね。

 

もちろん黒もあります。私のルーツであるインドネシアは暖かい国なので、ビビッドな色が多いんです。いわゆるエスニック柄もあるし。

だから、自分の中では「ヒジャブ=宗教着」でした。日本人の中にポツンと外国人がいるだけでも目立つのに、そこにヒジャブを着けていたら、そりゃ見られますよね。今だから笑えますけど、当時は落ち着きませんでした。

私が抱えていたモヤモヤは、ハナ・タジマさんのおかげで解消することができました。

 

──ハナタジマ……?

 

日本とイギリスにルーツを持つデザイナーの方なんですが、彼女が手がけるヒジャブコーディネートは、配色が日本らしくて、東京の街にいても違和感がないというか。黒やネイビー、ベージュなど、落ち着いた色が多くて、私の中ですごく可能性を感じたんです。

ヒジャブを着けるのが楽しくなっていったのは、彼女のデザインに出会った頃から。自分でどんどんと巻き方もアレンジするようになりました。

©Takeyoshi Maruyama

──お気に入りのデザイナーか〜。ファッションアイテムという側面もあるんですね、ヒジャブって。

 

私はヒジャブを着けるようになって、より女性らしくなった気がします。

自分の立ち振舞や言葉使いも意識するようになって、相手も丁寧に扱われるようになった。ファッションアイテムというだけでなく、ムスリムのシンボルでもあるので、食事の場面では「お酒や豚はダメなんですよね?」と配慮されるようにもなりましたし。

 

──その“女性らしさ”が、性差別につながっているという意見もありますよね?

 

イスラムの本質を知らない人からしてみれば、女性はヒジャブの着用を強制されていると思われがちなので、抑圧的なものとして捉えられているのが現実です。

信仰している人の中には国のルールや社会的立場により強制されて、やむを得ずヒジャブを着けている人もいます。ですが、自らの意思でヒジャブを選択し、その行為に真の価値を見出せたムスリムの方が多いと思います。

私もそのひとりです。

 

──すごくアホな質問で恐縮なんですが、暑くないですか?

 

着けはじめて7年経つんですけど、はじめのうちは夏でも長袖を着なければいけないなんて、生きていけるのかな?と思ってました。やってみたら意外と大丈夫でしたよ(笑)。

まあ、日差しが強い地域ではヒジャブがあった方が涼しいというメリットもありますし。言ってしまえば、耐え凌ぐことも信仰としては重要ですからね。

 

──やっぱりちょっと耐えてる!

 

耐える、と言っても、ただ盲目的に耐えている訳ではありませんよ。

もし何もないところで「我慢しなさい」と言われても、それは苦しいだけ。ただイスラム教では全ての物事には理由があると教えられています。

例えば、ヒジャブを着けるのは男性を無闇に誘惑しないため、とか。慎み深くあることの美しさを教えてくれています。ヒジャブをはじめ、宗教の教えを深く守ることこそ、人生を豊かで価値のあるものにすると信じているのです。

だから、意味のある忍耐は、むしろ美徳だなと思います。

 

──なるほど、です。

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