下北沢の老舗カレー屋はキッチンでも「ワークエプロン」
味、サービス、雰囲気、客層……お店の価値をそれだけで決めてもらっちゃ困る。街は百花繚乱、目を奪われるエプロンだらけ。わざわざ店まで足を運ぶ価値はここにだってある。
というわけで、働く人たちのアガるエプロンをじっくり拝見。ついでに教えて!そのエプロンどこのですか?
下北沢の老舗カレー
二代目はワークエプロンでキッチンに立つ
カレー激戦区のイメージが下北沢に定着する以前から、この町でカレーといえば「茄子おやじ」。創業29年の老舗は、カレーと珈琲をレコードを聴きながら味わう店。初代オーナーからのれんを引き継ぎ、音楽活動も続ける西村伸也さんのエプロンが今回の主役だ。
「最近、新調したばっかりなんですよね」。
おっ、Carhartt!?
ロング丈のエプロンは、ウエストまわりや裾にようやくシワが出始めている。前身頃だけで大小10のポケットは、さらにサイドにも2つ。もちろん、カレー屋にこの量はtoo muchだが、このスタイルも西村さんのお気に入り。
最大の魅力は頑丈さ。タフなダック生地は一度二度洗ったくらいじゃ簡単にはヘコたれない。使い込むほど生地は柔らかくなるのに、前述のシワは深く刻まれ表情をつくる。
「感覚的なものなんでしょうけど、薄手のエプロンよりがっちりタフな生地のほうが身が引き締まるんですよね」。
12オンスのがっしり生地。リベット留めで機能的に区切られたポケット。
“ストリート”を身につけていたい
アメリカンワークウェアのアイコンは、1990年代に入ると西海岸のHIP HOPシーンにおいてそのスタイルが受け入れられ、ストリートウェアとしての地位を確立。ほどなく、その波は日本にもやってきた。
「世代的にワークウェアがストリートファッションとして、めちゃくちゃ流行った時代。きっとそういうのも影響しているだろうな。つねに音楽シーンとともにあったし。いまでもワークスタイルが好きで、どうせならエプロンもCarharttがいいなって」。
ハンマーループのペインターパンツ、カバーオール、Tシャツ、ニットキャップ。ほとんどアップデートすることなく、いまも90年代のストリートのにおいがする。そういった部分にも惹かれると西村さんは言う。
音楽とファッションとカルチャーが交錯する下北沢で四半世紀以上、頑なに創業時からのカレールー1種で勝負する茄子おやじともリンクする部分がある。
Carharttでも敵わない
カレー屋特有のニオイ
「毎日カレーをつくっていれば油が飛び跳ねてくる。多少シミにもなりますが、それに耐えられるエプロンでないとダメなんですよね。エプロンは汚れてなんぼだと思ってますから(笑)」。
汚れを気にしないで身につけられる。それもCarharttの醍醐味だ。ところが……タフなエプロンをもってしても敵わない、カレー屋特有の悩みがあるそうだ。
「むしろ天敵はニオイ。カレーに欠かせない玉ねぎを毎日10時間くらい炒めるんですが、玉ねぎのニオイって強烈なんですよ。エプロンに蓄積されていって、最後はもういくら洗っても取れなくなる」。
然しものCarharttでも、玉ねぎのニオイばかりはどうにもならない、か。
Carharttのエプロンでキッチンに立つ。いかにも下北沢らしい光景。それを目にした若いお客が興味を示す。
「洋服やロゴは知っていても、ガチなワークウェアは始めて見るって子が多いんでしょうね。エプロンもあるんすか!みたいな反応ですから」。
流れるレコードのアーティストや曲名を教えるように、ブランドの説明をしてあげる。カレー屋にいながら音楽やファッションを軸に会話がつながっていく。こういうのもまたシモキタらしさだ。
Carhartt Firm Hand Duck Apron
1889年設立のアメリカを代表するワークウェアブランド。エプロンはショート丈のDuck Nail Apronと、このロング丈がある。
取材協力:茄子おやじ