ヘアスタイリストが選んだのは「母手づくりのエプロン」

味、サービス、雰囲気、客層……お店の価値をそれだけで決めてもらっちゃ困る。街は百花繚乱、目を奪われるエプロンだらけ。わざわざ店まで足を運ぶ価値はここにだってある。

というわけで、働く人たちのアガるエプロンをじっくり拝見。ついでに教えて!そのエプロンどこのですか?

©YUJI IMAI

ヘアサロン「Acotto La'bas」
店長の特別な非売品

ヘアサロンにおけるエプロン着用のシーンといえば、主にブリーチやカラーやパーマの薬剤を使う場面。髪型だけでなくファッションだってお手本にされるであろうヘアスタイリストたち。作業着といえど、こだわりがないとは思えない。

下北沢Acotto La'bas店長の岡本光太さんにもこだわりがあった。普段からワークウェア好きの彼が選んだのは、シルエットがきれいなDULTONのエプロン。機能的にポケットが配された胸当てタイプ……ところが、サロンの日常にワークエプロンはあまりにも堅牢すぎた。

「生地が重すぎて肩がこっちゃって。おまけにシザーベルトとの相性が悪い。かっこいいんだけど、とにかく使い勝手がよくなかった」。

一般的なデニムよりさらに丈夫な16オンスの綿布。腰のサイドまでしっかり巻き込む生地が、同じく腰に装着するシザーベルトを覆ってしまい、商売道具のハサミやダッカール(髪留めピン)を取り出しづらい。仕方なくエプロンの上からベルトを巻くと、今度はその重さがさらに肩へとのしかかるという悪循環。

そんな不便さに頭を悩ませていた折、救世主が現れた。

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「義理の母にお願いしてつくってもらったんです」。

写真に映るエプロンの出自の意外さに面食らった。聞けば、お義母さんは洋服のパタンナー、デザイナーとして活躍されていたお方。岡本さんの嘆きを聞き、ならばサロン仕様のエプロンをつくってあげよう、となったそう。

飾りっ気のないシンプルなつくりだが、機能性に特化したヘアスタイリストのための道具。スタイルにもビシっとハマる。

求めたのは軽さと機動性

工夫は随所にある。たとえば大きめにつくられた左右のポケット。ゴム手袋をごそっと収め、ダッカール(髪留めピン)を並べてはさむのに十分な幅と深さを担保している。膝下までと長めにとった丈も動きやすいようスリット入りだ。

「椅子に腰掛けてカットするときにスリットがないと突っ張ってしまってやりにくかったんですよね。立ったり座ったりするときのストレスも格段に減りましたよ」。

特筆すべきはシザーケースとの棲みわけ。胸当てエプロンの場合どうしても腰の脇に巻き込んでしまうところ、両脇から腰へのラインを短くすることで、腰紐を結ぶ位置が自然と高くなるよう設計。これでシザーケースとの共存が可能となった。

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ワークウェア調のベージュを選んだのは、岡本さんの遊びごころ。カラー剤がペンキのようにエプロンに重なっていく、その経年変化を楽しもうというのが狙いだ。余分な装飾を排してシンプルであることに徹したヘアスタイリストのためのエプロン。どこを探しても見つからない。

取材協力:Acotto La'bas

Top image: © YUJI IMAI
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