飲んで、香って、目にも楽しい「工芸茶」
お湯を注ぐとグラスのなかにキレイな花が咲く。そんなお茶があるのをご存知ですか?
中国茶の1ジャンル「花茶」。そのなかに工芸茶というものがあります。造形茶と呼ばれることも。その名の通り目でも楽しめるよう、お茶に細工を施したもの。
これが、とんでもなく美しかった!
ティータイムを
「目で味わう時間」に変える
工芸茶の茶葉はこんな感じ。直径2センチほどの石ころみたいな塊です。これをグラスに入れてお湯を注ぎ、しばらく蒸らしておくと……。
ほら、グラスの中に花が咲きました。赤、白、黄色、ステキでしょ?
三国時代(3世紀)以前より、中国茶の歴史は始まっているとされていますが、全国に広くお茶の習慣が根付いていったのは唐から宋にかけて。お茶は精神性と深くつながっています。人々は、お茶を飲みながら詩を吟じ、書をたしなみ、絵を描き、哲学を論じてきました。
そんな歴史ある中国茶ですが、工芸茶の歴史は意外と浅く、1980年代の安徽(あんき)省で考案されたといわれています。
「カタチで魅せる」お茶ができるまで
製茶し乾燥する前の茶葉を1枚ずつ丁寧に糸で束ね、ジャスミンや菊、百合、千日紅(センニチコウ)などの花を茶葉で包み込んで作る手の込んだお茶は、どのようにして生まれたのか?
欧米向けの紅茶の原料を多く栽培する福建省のように、じつは工芸茶もまた、輸出向けの献上品として誕生した背景があります。1990年代に入ると、中国各地でさまざまな工芸茶が登場します。細工技術も飛躍的に向上し、趣向を凝らした造形や包み込む花で個性を出す工芸茶が登場するようになりました。
当初は見た目の美しさに注目が集まっていましたが、近年は香り高く良質な茶葉を用いたものが増え、目でも香りでも、そして味わいでもティータイムを演出するお茶として親しまれています。
工芸茶はグラスで飲む
工芸茶を楽しむには、耐熱性のガラス(ティーポットでもグラスでもOK)がイチバン。熱湯を注いでゆっくり茶葉が開いて、花になる。この工程こそ工芸茶の醍醐味。
温めた耐熱用のガラスに工芸茶をひとつポンと入れます。フタをして(なければ小皿でもOK)3〜5分くらい待ちましょう。花が開けば飲み頃です。お茶が減ってきたらお湯を注ぎ足して2煎、3煎とお茶を楽しみましょう。
ちなみにお茶をいただいたあとは、水を入れ替えて水中花として楽しむのも一興です。
春を待つ蕾がゆっくりと開いていくように、お湯を注いだガラスポットのなかでじんわりと葉を広げる工芸茶。花が咲くのを待つ時間がきっと、今の季節とシンクロすることでしょう。工芸茶のもつ不思議な力は、新しい生活への活力を与えてくれるはずです。
「工芸茶」で検索してみて。いくつも種類があるので花の種類や飲み比べて、お気に入りを見つけてみてください。