この茶会は、生涯でただ一度のもの。『茶ッカソン in Tokyo 2017』に行ってきた

2017年はどんな年でしたか?
2018年はどんな年にしたいですか?
そんなことを考えるあなたのそばに、お茶があるといい……かも?

お茶を片手に、考える。
その名も「茶ッカソン」!?

11月29日(水)、12月16日(土)の2日間にわたり、『茶ッカソン in Tokyo 2017』が開催された。

茶ッカソンは、世の中をちょっとよくするアイデアについて、お茶を飲みながら議論する「現代版茶会」だ。発起人は、株式会社伊藤園 広告宣伝部の角野賢一さん。シリコンバレーのIT企業のカフェテリアへ『お~いお茶』を持ち込み、現地で日本茶ブームを巻き起こした人物だ。

サンフランシスコでの任期を終える直前、「世の中に良いインパクトを与えたい」と活動する起業家たちにインスパイアされ、自分も何かしたいと考えるようになった角野さん。そこで、当時さかんに行われ始めていたハッカソンのメソッドを取り入れ、お茶を飲みながら行うアイデアソン「茶ッカソン」を構想した。以降、海外ではシリコンバレー、シアトル、ニューヨーク、国内では東京、横浜、兵庫、京都、唐津で茶ッカソンを開催し、その活動は今年で4年目を迎えている。

課題解決から
観光施策まで!

茶ッカソンでは毎回、異なるテーマが設けられる。

例えば、第1回(シリコンバレー)では「サンフランシスコの人口の半数が無糖飲料を飲むようになるにはどうすればいいか?」、第6回(渋谷)では「SHIBUYAのコンシェルジュになろう!」から、続編では「インバウンド向けSHIBUYAマップを作ろう!」、などなど。

『茶ッカソン in Tokyo 2017』のテーマは、「NEW TOKYO GREEN TEA STYLE」。未来から求められるお茶のある空間ってなんだろう? という問いについてグループで考え、お茶の役割、本質的価値、そして可能性を探ろうという試みだ。

……と、概要やフレームは把握したものの、実際どんなことが起こるのかは謎だらけ。というわけで、『茶ッカソン in Tokyo 2017』の全貌を知るべく、両日とも潜入してきました!

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【DAY 1】
インプットワーク

1日目の会場となったのは、渋谷・TECH LAB PAAK。会場には、伊藤園『お〜いお茶』の茶殻が含まれた「さらり畳」(北一商店)が敷き詰められている。参加者はこの上で煎茶道を楽しんだり、坐禅を組んだりする。茶ッカソン名物のひとつだ。

イベントは19:00にスタート。
まずは、茶ッカソン発起人・角野さんと、構想段階から携わっている東京カルチャーカルチャーの河原あずさんが挨拶。そして、茶ッカソンの概要や今回のテーマ、思考の指針となる「利休七則」などを息のあったトークで説明し、さっそくインプットワークへ。

インプットワークは、A4用紙を使って行われる。
まずは紙を折って8等分に。それを縦向きに置き、左の枠には「お茶」、右の枠には「心地いい空間」から連想するキーワードをそれぞれ書き込む。そして、そのワードにまつわるエピソードや、ワードをつなぎ合わせて見えてくるものを、近くに座っている人とシェアする、という内容だ。

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30人の参加者の回答には、「緑色」「静岡」といった共通のワードが多く見られたが、なかには「おばあちゃん」といったパーソナルなワードや、「作法」といった苦い(?)経験に基づくワードも。あまりに身近で、深く考える機会がなかったお茶について掘り下げていくと、そこには多様な表情があることに気づく。

インプットワークの中盤では、DAY2のプレゼンテーションで審査員を務める株式会社伊藤園 専務取締役の社三雄さん、スウェーデン出身の日本茶インストラクター、ブレケル・オスカルさんも登場。

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『お〜いお茶』の生みの親である社さんからは、まっさきに「不思議」というワードが飛び出す。「世界では決して主流とはいえない緑茶が、今、世界で評価され始めている」という現状への思いを「不思議」という言葉に込めつつ、「お茶の心は、一生で一度の機会に“相手にして差し上げる”という一期一会の精神。それが世界の方々にも響く理由なのでは」と分析した。これにはオスカルさんも「わびさびともつながる部分がある」と頷く。

そして、オスカルさんからは「無限」というワードが。「水、ぬるま湯、お湯で淹れるとそれぞれ風味が変わり、どれもおいしい。コーヒーや紅茶にはない柔軟性に可能性を感じている」と説明。そして、心地いい空間については茶園を含む「山」と回答し、「高校3年生のときにお茶に恋をして以来、ずっとお茶が恋人。だから独身なんです(笑)」と会場の笑いを誘った。

インプットワークでお茶について再認識した後は、グループワークへ。

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参加者は3人組になり、お茶を淹れる人、絵を描く人、絵にコピーをつける人とそれぞれ役割を決める。そして、「お茶がある空間 in 近い未来」というテーマにそって作品を仕上げていく。

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「近い未来」というキーワードから、2020年の東京オリンピックを想定したり、未来でもあえて変わらないでいてほしいものを描写するグループも。多かったのはデジタル×お茶の組み合わせで、急須でお茶を淹れてくれるドローンや、お花見シーズンに活躍するお茶くみロボットなど、ユニークな案が挙がった。

その一方で際立ったのは、お茶がもつ普遍的な価値への期待だった。ほっとするもの、懐かしいもの、大切な人との空間にあるもの……。「近い未来」に私たちをとりまく環境がどれほど変わろうとも、私たちが元来もっている普遍的な感情のそばにあってほしい。参加者の多くは、そういった共通認識でお茶をとらえていた。

ただし、「なんかいいよね」という感情だけでは、お茶はいつか衰退してしまうかもしれない。その役割、価値を再認識したからこそ、見いだせる可能性にはどんなものがあるだろう? そして、私たちが東京で叶えうる、未来のお茶のスタイルとは何だろう?

ワークショップが終わると、DAY2のプレゼンテーション本番に向けてグループを再編成。

茶ッカソンを2日にわけ、さらに期間をあけて開催することについて、角野さんは「その期間にグループのメンバー間でコミュニケーションをとることができ、再会というものがあるのが茶ッカソンのよさ」と語った。

事前の準備ができるという利点だけでなく、一期一会という禅の精神にも適ったスケジュールになっている茶ッカソン。最後は禅の精神に則り、全員で坐禅をして閉会となった。

【DAY2】
メンタリング+
プレゼンテーション

DAY1から約2週間あけて開催されたDAY2は、9:30スタート、19:00終了という長丁場。

会場となったTABI LABOのイベントスペース「BPM」には、おなじみの「さらり畳」が敷き詰められている。

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まずは前回のインプットのおさらいから。そして、今日のスケジュール、プレゼンテーションの審査項目(独創性、現実可能性、波及効果、プレゼンテーション、チームのビジョン各5点)などの説明と共に、オーディエンス全員の投票によって決まる「オーディエンス賞」受賞グループには『お〜いお茶』1年分が、審査員の投票によって決まる優勝グループには『Google Home Mini』+オスカルさんの著書『僕が恋した日本茶のこと』(駒草出版)がサイン入りで贈られることがアナウンスされ、会場のテンションは一気に上がる。

そんな興奮をいったん坐禅で沈め、気持ちを切り替える参加者。

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そして、さっそくグループごとにプレゼンの作成へ。

10:00〜15:30のグループワークの合間には、メンタリングの時間が設けられた。これは、メンターの角野さん、河原さん、そして株式会社伊藤園 デジタルコミュニケーション室 室長の小笠原嘉紀さんにその時点でのプレゼン内容を共有し、指示を仰ぐことができるというシステムだ。これにより、プレゼン内容の穴を詰めることができたり、不安や疑問を解消して本番に臨むことができたりするようになっている。

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メンタリングは本番を想定し、まずは5分間のプレゼンタイムから始まる。

2週間の間にすでにかなり内容を詰めてきているグループもあれば、数案のなかで迷っているグループも。いずれにせよ、どのグループも課題に対し真摯に向き合う姿勢が印象的だった。なかには、「現代の需要はモノからコト、コトからトキへ動いている」という鋭い洞察からイベント空間を提案するグループや、「冷たい東京」「暖かいお茶」という相反するふたつのイメージを繋げ、キャッチーなプレゼンを繰り広げるグループも。メンターからは「すごいなぁ」と感嘆の声がもれる。

一方で、参加者たちに真剣に向き合うからこそ、ときに厳しい意見も飛び交った。なかでも多く聞かれたのが、「お茶の文脈が弱い」という内容。「未来から求められるお茶のある空間」というテーマにおいて、「空間」の部分に注力しすぎるあまり、お茶である必要性、説得力に欠けているアイデアも見られ、指摘が入った。

また、個人的に印象的だったのは、お茶に対する見解だった。DAY1のインプットワーク、そしてこの2週間真剣にお茶と向き合ったことにより、お茶=崇高なもの、という意識に偏りがちになるシーンも。もちろんお茶はすばらしいものなのだが、小笠原さんはずばり「本質的な味って、実はそんなに変わらないんですよ」と説く。その上で「何が一番大切な価値なのか、もう少し考えてみてください。きっといいプレゼンになると思います」と激励した。

全7グループのメンタリングが終わったときには、すでに正午を回っていた。会場にはFOOD unit GOCHISOのケータリングが到着。そば茶のドレッシングでいただくサラダや、台湾茶で煮た豚のロースト、ジャスミン茶がベースのシロップを和えた白玉のデザートなど、お茶づくしのランチメニューが並んだ。

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愛らしいごちそうを片手に、各グループはメンタリングの内容を踏まえ、プレゼンをブラッシュアップ。16:00スタートの本番に向け、会場の緊張感は徐々に増していく……。

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そしていよいよ、プレゼンテーション本番!

審査員は、DAY1のスペシャルゲストだった社さんとオスカルさん、そして、エイ出版社『Discover Japan』副編集長の今智子さん、株式会TABI LABO 代表取締役の久志尚太郎の4人。

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審査員は、7グループ7様の「NEW TOKYO GREEN TEA STYLE」について、ときには頷き、ときには和み、ときには疑問を呈しながら聞き入っていた。

チーム【シン・利休】がJR山手線を利用した「グリーン茶両」を提案すると、オスカルさんからはすかさず「茶室をイメージした車内デザインはすばらしいけれど、本当の畳じゃない理由は?」とツッコミが。メンタリングで鍛え上げられたメンバーは動じることなく、「訪日観光客のことも考え、快適性を優先している」と返答。頼もしい姿を見せた。

審査員は、「創意工夫が詰まっているプレゼンで、聞いていて楽しい」(今)、「お茶のことをすごく勉強されているのが伝わる」(社)と感心する一方で、「完璧すぎて(笑)。どこに自分の気持ちを寄せていけばいいのかわからなくなる部分も」(久志)という想定外の意見も。

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渾身のプレゼンテーションが終わると、審査の時間へ。参加者は、お茶でホッと一息つきながらお互いを労い、審査の結果を待つ。

約30分後、結果発表の準備が整うと、河原さんから驚きの内容が。

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「急遽、賞を増やします!」

本来、オーディエンス賞とグランプリの2つだけだったのだが、投票結果で同票を獲得したグループがいたため、オーディエンス賞は2グループに贈られることに。さらに、一連のプレゼンテーションに感銘を受けた北一商店、TABI LABOからもそれぞれ特賞が用意されることに!

そしてついに、オーディエンス賞から発表が始まる……。

オーディエンス賞(1組目)
【シン・利休】

オーディエンス賞1組目は、「お茶でTOKYOを暖かく」をコンセプトに、JR山手線に「グリーン茶両」を作ることを提案した【シン・利休】。

東京には多くの外国人観光客が来るのに、冷たいという印象を持たれている事実にスポットを当て、インバウンド向けの施策も兼ねた車内イベントを提案。茶室風にアレンジされた車内では、お茶のレクチャーや暗闇きき茶といったイベントを体験できるといった内容だ。

驚きなのは、メンタリングの時点では「グリーン茶両」のアイデアは存在していなかったこと。当初は、地元・観光客・ホテルをつなぐ観光案内所を提案しており、その交流の場でお茶を提供するという内容だった。

それに対し、「冷たい東京をお茶で暖かく」といったコンセプトはメンターから絶賛されたものの、「お茶じゃなくてもいいのでは」(小笠原)、「ビジネス? もしくは社会貢献? そこに一言で言い切れるストーリーがあるかないかが重要」(河原)という意見も。

メンタリングを終え、コンセプトはそのままに急遽「お茶のある空間」を再考することにしたメンバー。短時間でプレゼンを組み直し、社さんからは「やはりコンセプトが素晴らしかった」とコメントが。メンバーは「今日出たばかりの“グリーン茶両”というアイデアが認められてよかった」と受賞の喜びを語った。

オーディエンス賞(2組目)
【お茶しよう!】

「忙しい日常で、みんなでホッと一息つく」をコンセプトに、どこでもお茶の空間を広げることができるキッチンカー「野点カー」や、お茶の日(10月1日)に開催する「お茶フェス」、そして誰でも簡単にお茶を点てることができる「リング抹茶」というプロダクトまで幅広く提案したチーム【お茶しよう!】。

メンタリングの時点から、完成度の高いプレゼンテーションを披露していた同チーム。野点カー、お茶フェス、リング抹茶といったコンテンツはすべてその時点で提案されていたものだった。概ね高評価だったものの、「数十年後に何が生まれるか。そのビジョンを持って」(河原)とアドバイスを受け、本番では「自分と人とを大事にする時間へ、お茶の力で回帰できるようにしたい」とその展望を強調した。

その提案力をベースにしつつ、オーディエンスを最も驚かせたのは、プレゼンテーションの創意工夫だった。他のチームがパワーポイントのスライドでプレゼンを進めるなか、動画を作成し、オーディエンスをあっと言わせた。特に、プロダクト「リング抹茶」に関しては、動画で使い方を説明したことで、会場にいた全員がすぐに使い方を理解することができた。

社さんは、「利便性のあるプロダクトを作り、それを届けるためのキッチンカーを作り、フェスという空間を作る。伝統的な抹茶の利便性を高め、広めるという行為は、とても意義のあることだ」と賞賛した。

北一商店賞・TABI LABO賞
【Salon】

「東京のポテンシャルでお茶を最大化する」をコンセプトに、客同士でお茶を入れあう空間を作り、人と人とのリアルなつながりを実現することを提案した【Salon】。

メンタリングの時点では、「常設スペースとポップアップ(イベント)、どちらが適している空間なのか」と迷いを打ち明けていた同チーム。しかし、ターゲットやビジョンはかなり明確で、同時に、なぜ迷っているのか、なぜそう思うのかを説明できる、ロジカルな思考に長けているグループだった。

その思考回路を手伝ったのが、今回の茶ッカソン参加者最年少となる高校3年生のメンバー。「社会人と学生が気軽にコミュニケーションをとれる場」という明確なビジョンも、「お酒と違い、お茶は全世代の人が気軽に飲める」という説得力もそこにひもづく部分が多く、メンターにしっかりと届いていた。

「常設かポップアップか。その答えを出すには、お客さんにどういう体験をしてもらいたいか、どういう気持ちになってほしいかを考えること」(角野)というアドバイスに対し、メンバーからは「審査項目の“実現可能性”はどの範囲をさすのか」と鋭い質問。これには「マネタイズできるかどうかも大事だが、サステイナブルかどうかのほうが重要」(河原)と、その事象を起こし、続けていく意義を説くことを勧めた。

また、お茶を淹れ合うというコミュニケーションの前提についても指摘が入る。「茶ッカソンというイベントがあり、そのなかのコンテンツとしてお茶を淹れ合うというシナリオがあったので、みなさんに楽しんでもらえたのでは。お茶を淹れ合うシチュエーションに持っていくまでのデザインが必要」(河原)。茶ッカソンを通し、お茶との距離が近くなったことで、盲目的になっていた部分が浮き彫りになるワンシーンだった。

【Salon】は最終的に、90分の時間制、ワンコインで参加者同士がお茶を淹れ合い、お茶への知識を深めながらコミュニケーションを図る空間「茶論」を提案。そこで、「相手を思って手間をかけること」「その手間を受け取る感動を体験すること」という構図を説明した。

メンバーは受賞後、「実は今日までみんなそろって集合できたことがなかった」と準備期間に不安があったことを述べつつ、「当日にブラッシュアップできてよかった」と安堵の表情を浮かべた。

北一商店賞の賞品であるオフィシャルカレンダーを受け取り、畳の席へ戻るメンバー。しかし、突然「もう一度立ってください」と声がかかる。困惑するメンバーに、久志が「実はTABI LABO賞も【Salon】に贈りたいと思っています」と発表! 「メンバーに高校生がいて、若い子のアイデアが入っているのがいいなと思いました。“茶論”実現に向けてがんばってください」と激励の言葉を送った。

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そしていよいよ、『茶ッカソン in Tokyo 2017』を制したチームが発表される時が!

優勝
【TEAM2020】

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「お茶を中心にして家族の団らんを図る」をコンセプトに、畳の上でくつろぎ、茶を飲みながら楽しめる親子向けの野外映画祭「TOKYO GREEN CINEMA」を提案した【TEAM2020】。

実は、朝の時点ではメンバーひとり(+お子さん)しか来ておらず、「他のメンバーは!?」「別のチームと一緒にやってもらおうか……」とハラハラの展開を迎えていた同チーム。それがきっちり全員そろい、さらには優勝してしまった!というドラマチックなストーリーも手伝い、会場には惜しみない拍手が巻き起こった。

メンタリングの時点では、都営荒川線で東京と四季を楽しむ「東京茶電」と、お茶を飲める映画祭との2案を持ってきた【TEAM2020】。しかし、メンタリングルームで様子を見る限りでは、どちらの案もあまり自信がない様子だった。メンターからも「お茶に紐づいている体験かどうかが少し弱いかも。ターゲットを絞りすぎているのかな?」(角野)、「映画はおもしろい気がする。しかし、映画とお茶の組み合わせやシチュエーションをもっと考えなければ」(小笠原)、「叶えたいシチュエーションありきで、そこから逆算してみては」(河原)と指摘が飛び、かなりシビアなメンタリングとなった。

アドバイスを受け、チームは映画祭の案に絞り、ブラッシュアップすることに。そして、映画祭を通じ「心地いい空間を提供すること」を念頭に置き、理想とする映画祭のシチュエーションを固めていった。ターゲットは家族連れ。家族との団らんを通じ、「未来に伝えたい幸せの気づき」がある空間作りを目指すことに決めた。

上映作品には『となりのトトロ』を挙げた。そして、縁側で登場人物たちがおはぎとお茶を味わうシーンに合わせ、参加者も同じものを味わうことができるといった工夫も提案。また、映画のシーンに合わせ、お茶のアロマを焚くといった総合的な空間演出プランも、会場のハートをつかんだ一因となった。

審査員からは、「言われてみれば、トトロの香りって考えたことなかった(笑)。家族連れを考慮し、17時スタート、19時終了というタイムスケジュールもありがたい。子どもの記憶にも残るイベントになるのでは」(今)、「トトロのワンシーンと同じ体験ができるというのは、ユーザーのインサイトとしてはわかりやすく、正しい。僕も参加したい」(久志)、「未来のことを考えるとき、やはり次世代を大事にしなければと思う。家族を大切にし、子育てをしやすい街づくりにもつながるはず」(オスカル)と軒並み高評価。最後は社さんが『お〜いお茶』を開発したときのエピソードにふれながら、「お茶って一体なんだろう?と考え続けた。お茶は、家庭的な雰囲気を持っているもの。それは古い価値ではなく、未来永劫続く価値だと思う。こんなふうにお茶に対して真摯に考えてくれて、本当に感謝している」と、【TEAM2020】をはじめ、全チームのプレゼンテーションに敬意を払った。

メンバーは「みんなそろうのかとドキドキした(笑)」と朝の出来事を笑い飛ばしながら、「茶ッカソンがなければ出会わなかった人たちばかり。いいメンバーに恵まれ、いい思い出ができた」とこの2週間を振り返った。それは、茶ッカソンで何度も言及された、一期一会——禅の精神、そのものだった。

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そして、茶ッカソンも終わりに近づく。最後はもう一度、インプットワークへ。

DAY1同様、参加者にはA4サイズの紙が手渡された。同じように8つに折ると、左の枠に「自分の2017年」、右の枠に「今回の茶ッカソン」に関するキーワードを書くよう、河原さんが指示する。

「それぞれのキーワードに、何かつながりはありますか? それをヒントに、2018年のマイ・キーワード書いてみてください」

参加者は、今回の茶ッカソンという体験を未来に繋げるため、真剣に最後のワークに取り組んだ。そして最後はもう一度、「一期一会」の精神を振り返る。

「出会った瞬間にすべてが決まる。
 そして自己を超越する。

 今この茶会は、
 生涯で ただ一度のものである。」

ここでいう「茶会」が指すのは、茶ッカソンだけではないのだ。
この「茶会」は、出会いであり、別れであり、もう二度と巡り会えないかもしれないことへの切なさであり、それを乗り越えて今この時を全身全霊で生きることへの、強さを指すのではないだろうか。

そして、自己を超越するということを噛み砕いてみると、利己的な感情では説明できない、誠実さということなのかもしれないと感じた。

今回参加者は、同じチームのメンバーのために、今自分ができることを、できる限りやろうとエネルギーを費やした。拙い部分や、不安な部分があったとしても、その思いを伝えようと懸命にメンターと向き合い、審査員と向き合い、オーディエンスと向き合った。そして、未来を生きる大切な誰かが、少しでも幸せで穏やかであるようにと知恵を絞った。定量的ではないその姿勢は、曖昧に思われるかもしれないが、誠実さ、という一言に凝縮されるように思う。

私たち全員が持ちうる普遍的なものこそが、実はもっとも崇高な精神なのかもしれない。そんな一期一会の心を感じながら、私も会場を後にした。

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Photo by 【DAY1】Sayu Hayashida/【DAY2】Kenji Oshima(TABI LABO)
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