YESでもNOでもいい。自分の意思を表現するって、なんて尊い。

自分の意思を持ってYES/NOを判断できる人は素敵だし、憧れるもの。

そう、今回のテーマは「臓器提供」にまつわる意思表示の話。その言葉の響きだけで

あぁ重そう……

と距離を置いてしまう人の気持ちもわかります。でも大切なのは、あくまでも「意思」を表示すること。YESでもNOでもいい。いつだって何度でも書き直すこともできます。

移植医療について少しお伝えすると、現在移植を待つ人は約15,000人いて、そのうち臓器移植が受けられるのは約400人。わずか2%なのです。

これを聞いて、なかには「YESだけど、そういえばどこにも意思表示していなかったな……」という人もいるのでは。意思表示ができるツールは、健康保険証や運転免許証の裏面、マイナンバーカードの表面、インターネットでの意思登録など、意外と身近にあります。

 

今回は、そんな「意思表示」を促すグリーンリボンキャンペーン「グリーン・チャリティー・アクション」に賛同している木佐貫まやさんと、大日方久美子さんにインタビュー。

「子どものためだからできることがある」「パートナーや愛犬を想うからこそ、自分を慈しむ」など、身近な思いやりが、社会全体に大きな意味をもつことを教えてくれました。

家族や手助けが必要な人を想うのは、自分のためなのかも—— 木佐貫まやさん

きさぬき・まや。ファッションモデル。2021年5月に男の子を出産。ご主人と豆柴2匹と5人で暮らしている。赤ちゃんと愛犬との毎日の散歩が日課であり癒し。

大切にしていることは
家族や友人と「とにかく話す!」

——ご出産おめでとうございます。赤ちゃんも木佐貫さんも、お互いにはじめてのことばかりかと思いますが、いまどんな心境ですか。

ありがとうございます。とにかく全部かわいいです。SNSで「まやちゃん、育児で落ち込むことないですか」とか「大変なことはないですか」ってメッセージをもらうんですが、そういうことを一切思わないんですよね。よく寝てくれるし、すごくいい子なんです。宝物。かけがえのない愛おしい存在ですね。

 

——毎秒、成長から目が離せないですね。

最近、寝返りをうちはじめたんです。ちょっと前までは壊れそうなくらいだったのが、日に日にからだも大きくなってる。最初はおむつ替えひとつでも手こずっていたけど、わたしもできるようになったし、赤ちゃんから表情や意思も感じられるようになって、お互いに慣れてきている感じですかね。楽しいことがどんどん増えています。

——お母さんになってから、気持ちや行動など変化したことはありますか。

妊娠してから、すごく健康になりました。子どもを守るのはわたしなので、体調を崩していられないなって。お腹にいたときは、野菜をたくさん料理に使ったり、添加物をなるべく摂らないようにしたり、口にするものを気をつけていたので、結果的にわたしも健康になりましたね。さっきもメイクさんにお肌を褒められました。

 

——家事に育児に仕事にと、毎日お忙しいとは思いますが、心の平穏を保つために気にかけていることはありますか。

人と話すことかな。悩み事があっても、家族や友だちに話しているうちに自分の考えが整理されたり、いろんな意見を聞くことで解決することが多いです。赤ちゃんと話しているか、犬と話しているか、家族や友だちと電話しているか。ひとりでじっとしていることがあまりないかも(笑)元気でいられる理由は、本当にまわりの人のおかげです。

 

——誰かとコミュニケーションとることって大切なことだなあと、この2年くらいでつくづく感じました。

そもそも、人が好きなんだと思います。小さい頃からいろいろな文化がまわりにあったことが大きいかな。わたしの父はスリランカ出身で母は日本人、兄は障がいをもっています。だから、いろんなバックグラウンドの人たちがまわりにいて、父の知り合いには海外の人も多かったし、兄の友だちには、車椅子乗っている子もいれば、全く話せない子もいました。でもそんなことは関係なくて、一緒にいるときはみんなで楽しく遊んでました。

 

世界はいろんな人がいるからおもしろい。

——家族や友人から言われて印象に残っている言葉はありますか。

母はいつも「世界はいろんな人がいるからおもしろい。だから障がいを恥ずかしがることなんてないよ」と言っています。インスタグラムのDMで「わたしは恥ずかしくてまやちゃんのように話せないです」とか「お兄さんのことをどうやってパートナーに伝えましたか?」といったメッセージをもらうんです。自分の経験や考えを話すことで「悩む必要はないよ」ということがSNSを通じて伝わればいいなあと思います。

 

——木佐貫さんやお母さんのようなオープンマインドな姿勢に勇気づけられている人はたくさんいると思いますよ。

家族みんなオープンだと思います。父には小さい頃から何度も「食わず嫌いはよくない」って言われてますし。食べ物もカルチャーも人も、先入観で決めずに自分が経験してから考えるほうがいいんじゃない?って。

 

——ちなみに嫌いな食べ物はありますか。

ないです!なんでも美味しく食べます(笑)

——社会がこうなるといいなあと思うことはありますか。

お母さんになってから、妊婦さんと子どもがよく目に入るようになりました。電車やレストランで、赤ちゃんの泣き声を気にしているお母さんをみると、赤ちゃんが泣くことって何も悪いことじゃないのに、気をつかわないといけないのは大変だなって思うんです。マタニティマークをつけていても、残念ながら席を譲ってくれない方はいますし……。それぞれの立場や意思が尊重されることで多様性が生まれ、みんなにとって居心地のいい場所がもっと増えるといいなあと思います。

 

——最後に、臓器提供の意思表示について率直な気持ちをお聞かせください。

わたしはいま臓器提供の意思表示をしていませんが、前向きに検討しています。いまの気持ちならYESって答えます。でも、いろいろな経験や状況で変わるかもしれないので、その時の気持ちを素直に書いておければと思っています。身近な人を想うことが、わたしにとって考えるきっかけのひとつでした。

 

——まずは、考えてみる・話してみるだけでもいいかもしれませんね。

そうですね!大切なことなので、意思表示について家族や友人とも話して、理解を深めていこうと思います。そして、意思表示につながればいいですね。

アウター(A PUPIL|UTS PR)/ワンピース(WRAPINKNOT|UTS PR)/その他スタイリスト私物

 

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グリーン・チャリティー・アクション

「誰かから提供された大切なものを受け取る」という体験を通して、臓器提供の意思表示への理解を深めてもらうために開催されるチャリティーマーケット。今回インタビューに応じてくださったおふたりをはじめ、6名の方がセレクトしたアイテムが出品されます。なお、売り上げの一部は移植医療の普及啓発活動に寄付されます。10月16日はグリーンリボンデー。ぜひ、自分にできることから参加してみてください。

→詳しくはコチラ

「助けていたつもりだったけど、救われたのはわたしでした—— 大日方久美子さん

おびなた・くみこ。パーソナルスタイリスト。アパレルブランドのスタイリングをはじめ、コラボ商品の企画、モデルなど多方面で活躍中。ライフワークとして保護犬の活動もおこなっている。2016年に著書『”エレガント”から作る大人シンプルスタイル』を発売。最近、数人から「あなたの中には武士がいる」と言われたとのこと。薄々、自覚はしていたらしい。

きっかけは運転免許証。

——臓器提供の意思表示をされていますが、そのきっかけは何だったのでしょうか。

車の免許を取ったときでした。もらった運転免許証の裏に、意思表示の記入欄があって、そこで初めて自分が意思表示をすることで臓器提供が可能になるんだということを強く意識したんです。

 

——「YES」を選択することに、迷いや葛藤はありましたか。

わたしのなかではごく普通なことでした。「そういうことなのね。もちろんですよ」って。免許を受け取ったその日に日付とサインをした覚えがあります。

 

——何かを決断したり意思表示するときには、とくに重要なことであればなおさら、知識やバックグラウンドが必要になるかと思います。何を基準に決めましたか。

最後の最後まで人のためになれるって、なんて素晴らしいことだろうって思ったんです。だから、できるだけ健康でいようと心がけています。たとえば、腸内環境をととのえて、肝臓や腎臓をきれいにしておこうとか。それは自分の健康のためでもありますしね。

——そう思うに至ったきっかけがあったのでしょうか。

なにか経験やきっかけがあるわけではないけれど、常に命については当たり前のことのように日々考えています。たとえば、車を運転するとき。いまでも運転するときは緊張しますよ。愛するワンちゃんたちに出会ってから、命についてより身近に考えるようになったかもしれないです。

 

——今日はキャンディちゃんとムーちゃんも一緒に撮影に来てくれました。大日方さんのおうちにはもう2匹の保護犬がいるんですよね。

彼らは癒してくれて、幸せな気持ちにさせてくれて、そして学びを教えてくれる。保護犬というと動物愛護という感じがしますけど、わたしが助けていたつもりが、彼らに救われたって感覚です。

——日向ぼっこしている姿を見るだけで癒されます。

たとえば、コンビニに行くのにたった5、10分家を空けただけでも、帰って玄関開けると、1週間ぶりの再会かな?ってくらい盛大に「おかえりなさい!」って出迎えてくれるんです、しかも毎回(笑)すごく嬉しいんですよ。なのに、どうして人間はできないんだろうって。だからわたしは夫が車で仕事の出先から帰宅したら「おかえり!今日もちゃんと帰ってきてくれてありがとう!」って犬たちと一緒にしっぽふりふりしながらお迎えするんです(笑)

 

——仲良しですね。意思表示のことを家族と話すことはありますか。

話します。でも、母と夫はわたしの意思表示に対して複雑な思いがあるらしく、まだ話し合いは続いています。そのなかでお互いを理解できたり、まずは話し合うことが重要かもしれませんね。

 

まわりは変えられないけど、
自分次第で景色は変わる。

——SNSでも積極的に社会課題への問いかけや、自分のオピニオンを発信したり、話し合いの場を設けようとしている印象です。

ちょっと前までごく普通の会社員だったので、インスタグラムを始めてから、いろんな人にいろんなことを言われることに正直びっくりしました。

でも、目を背けたら乗り越えられないから届いたメッセージはすべて読むようにしました。「そんなことないもん!」って思うものもあれば「これ図星だな」ってものもあります(笑)それはしかと受け止めて反省して。そう繰り返しているうちに「バカ」とか「アホ」とか、以前だったら重く響いていた言葉に対して悲しみも怒りも感じなくなりました。わたしには必要のない言葉だと思えるようになったんです。

そのとき、自尊心の本当の意味がわかって、自分を尊いと思うことができるようになりました。誰かの言葉で自分が傷つく必要なんて絶対ないし、自分で自分を守ってあげないとって。まわりは変えられないけど、案外いろんなことを自分で変えられるんだなって思います。

——臓器提供やその意思表示について、自分ごと化して考えることってなかなか難しいかもしれません。

自分の身やまわりに起きたりしないとわからないですよね。でも、自分のこととして考えてみることってとても大切。急に何かになることはできないけど、いろんなことを経験してそのレイヤーを少しずつ積み重ねていくことならできるんじゃないかなと思います。

 

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グリーン・チャリティー・アクション

「誰かから提供された大切なものを受け取る」という体験を通して、臓器提供の意思表示への理解を深めてもらうために開催されるチャリティーマーケット。今回インタビューに応じてくださったおふたりをはじめ、6名の方がセレクトしたアイテムが出品されます。なお、売り上げの一部は移植医療の普及啓発活動に寄付されます。10月16日はグリーンリボンデー。ぜひ、自分にできることから参加してみてください。

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すでに8人に1人は意思を表示。
あなたも「今の気持ち」を表示しませんか?

現在、新型コロナウイルスの影響を受けて臓器提供や移植が減っているという事実があります。一方、離れて暮らす家族や大切な人のことを想う機会は増えているのではないでしょうか。

 

誰かのためにできること。

YESでもNOでもいい。意思表示をすること。まずは関心をもって家族や大切な人と意思表示についてぜひ話してみてください。その行動は、きっと多くの人の支えにつながるはずです。

→詳しくはコチラ

styling:山田莉樹(木佐貫まや)、hair&make-up:榎本洋介