「折れたバット」と「コーヒー豆のロス」が生み出すサステナサイクル
世のなか異色のコラボは数あれど、「野球」と「コーヒー」という交わるはずのない両者が出会うべくして出会った新プロダクトをご紹介。
キーワードは、サステナブルだ。
「珈琲箸」と聞けば、コーヒーの木を原材料とする箸かと思うが、その実、ここにバットが。正確に言えば元バットだが。
プロ野球をはじめ野球界では、年間10万本もの木製バットが使用されているそうだ。その材料のひとつアオダモは良質なバット材として人気だが、育つまでに70〜80年かかるため、保護育成が大きな課題となっている。
いっぽうで折れたバットや製造の際の端材の活用法は、野球ファンならずとも気になるところ。くだんの「珈琲箸」の原料は、こうした役目を終えたバットたち。
バット→箸のアップサイクルを2000年代初頭より行なってきたのは、大正10年創業の箸メーカー「兵左衛門」だ。球団スタッフから送られた折れたバットを職人が手作業で裁断し、箸として新たな生命を宿していく。
この折損バットをリサイクルした製品「かっとばし!!」に、今回コーヒー業界より、新たなサステナサイクルが加わった。
コーヒー豆のロスをうまくアップサイクルできないか……。
店舗で提供されるコーヒーには、コーヒー豆を細かく挽く段階でどうしても小さすぎてロスとなる粉があった。こうしたロスとなる豆のアップサイクルは、コーヒー業界共通の課題でもある。
立ち上がったのは“COFFEEを飲む以外でも楽しむ”をコンセプトに東京から日本各地、世界へと発信するプロダクトをつくりつづける「TYO COFFEE」。
店舗で出るコーヒーのロスを活用することで、今まで知らなかった環境問題を新しい分野の人々に広め、同時にコーヒーカルチャーを価値ある楽しみに変えたい。「珈琲箸」プロジェクトはそんな想いから動き始めた。
折れたバットからできた箸の持ち代(持ち手の部分)に、ロスになる細かく挽いたコーヒー豆を散りばめウレタン塗装でコーティング。適度な凹凸をつくることで滑り止めの役割を果たしている。
箸先をみつろうで仕上げた「ナチュラル」と漆塗装の「ブラウン」の2色展開は、和食器はもちろん、白磁や色もの、柄ものの食器もなんなく受け入れる包容力を感じる。
そして、姿を箸に変えても、どことなくバットを彷彿させるじゃないか。
交わるはずのなかった野球とコーヒー。
なにもしなければ、どちらもただの廃材。
白球を打ち返すかのごとく、ともにロスに立ち向かい、業界を超えたアップサイクルが新たな価値を生み出してくれる。イミ消費の時代において、ボクたちが手にしたいのはこういうプロダクトなのではないだろうか。
そうそう、箸の売上金の一部は、NPO団体「アオダモ資源育成の会」を通じて、アオダモの植樹や育成に利用されることで究極のアップサイクルが完成する、ということも付け加えておく。
『珈琲箸』