「歩行の自由法」発令へ、カリフォルニア州
9月30日、米カリフォルニア州にて「歩行の自由法」なる新法律が成立した。
インパクトのあるネーミングだが、そもそも「歩行の自由」とは何なのか。
勿論、これまでカリフォルニアでは歩行することが違法だった、という訳ではない。この「歩行」が指すのは、横断歩道や交差点以外の場所で歩行者が車道を横断する“ジェイ・ウォーキング”と呼ばれる行為のこと。
来年1月1日より施行されるこの法をもって、カリフォルニアでは(衝突の危険がある場合を除き)歩行者の車道横断が合法化されるわけだが、このタイミングで法案が持ち上がったのには理由がある。
じつは、これまでジェイ・ウォーキングで警察から違反切符を切られていたのは、黒人をはじめとする特定の貧困層の人々に偏っていたという。
安全な歩行だったにも関わらず、肌の色によって不当に狙われ、差別的・恣意的な取り締まりが行われていたのだ。
2020年には、ホームレスの黒人男性がジェイ・ウォーキングを指摘されて警官に止められ、その後射殺される事件まで発生。
「BLM」の運動を経て、この度ようやく職権濫用(というよりも人権侵害)に歯止めがかかったというわけだ。
法案を起草した州議会のフィル・ティン議員は、「この違反切符は特定の人々にのみ使われている。本当に歩行者を守るための法なのか、今一度考え直す必要がある」と語る。
警官が不当に取り締まるなら、規則を撤廃して「自由」にしてしまおう……“自由の国”らしい大胆なアイデアだが、跋扈(ばっこ)する悪質警官はそのままで良いのだろうか?
ちなみに、上記の事件にて殺人を犯した警官は、住民による抗議運動を差し置いて不起訴処分となっているそう。
自由を履き違えた警官と、自由を認められた被差別層。守るべきものをはき違えぬよう、今後も法整備が慎重に進んでいくことを願いたい。