2023年のキーワードを読み解く、3人の言葉

政治も経済も、当然わたしたちを取り巻くビジネスも「動く年」。そんな2023年に向けて、この記事では3つのキーワードを取り上げたい。

ファクトフルネス、ダイバーシティ、そして、情報のバランス

いずれもすでに世の中に流通しているワードだが、その捉え方は簡単じゃない。

ファクトフルネスをビジネスでどう活かすのか?

いち社会人としてダイバーシティをどの視点からみるのか?

氾濫する情報をどうバランスよく収集するか?

山口周さん、龍崎翔子さん、緒方憲太郎さんにそれぞれの視点から、これらのキーワードについて語ってもらった。

楽観的リアリストになれることこそ、
ファクトフルネスの効果
——山口周さん

山口周

慶應義塾大学院文学研究科美学美術史学専攻修士課程修了。ボストン コンサルティング グループ等で戦略策定、文化政策、組織開発などに従事。ビジネス書も多数あり、『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』でビジネス書大賞2018準大賞、HRアワード2018最優秀賞(書籍部門)を受賞。

ファクトとデータに基づけば
悲観的になることはない

今現在、社会はダメになってきている、日本はどんどん悪くなっている……などなど。そんなふうに考えている人がたくさんいると思います。そう、今は“悲観的ロマンチスト”が多い。たしかに悲観的になることは文学的だったり、ロマンチックではあるけれども、きちんと現実を捉えれば、オプティミスティックな事象がたくさんあることに気づくはずです。

日本国内に目を向けてみましょう。青少年の犯罪のピークは1950年代の話だし、所得格差をあらわすジニ係数がもっとも高かったのは昭和一桁台の話です。この100年で日本は間違いなく進歩しています。もちろん、良くなっている面も悪くなっている面もある。ただ、良くなっていることは良くなっていると、きちんとファクトやデータに基づいておさえておくべきだと思うんです。

もちろん、私もネガティブな気分になることもありますよ。酔ってやさぐれることだってある(笑)。けれど、ファクトに触れて、冷静に考えれば、楽観的になれることってとても多いんです。

悲観的ロマンチストではなく、楽観的リアリストになれる。これが私が思うファクトフルネスであることの効果です。

情報の精査よりも、情報源の精査を

さて、当然、ファクトフルネスな状態で、楽観的リアリストでいるためには、しかるべき情報ソースにあたる必要があります。

情報を精査することの重要性はいろんなところで語られますが、じつはこれが難しい。ビジネス書のベストセラーを思い浮かべてください。考え方や話し方に関する本はたくさんありますが、情報の入れ方に関する本はほとんどありません。また日本の受験勉強は情報処理を鍛えることに重点がおかれており、情報収集や精査に関してはあまり鍛えられない。インプット、プロセッシング、アウトプットという流れで考えると、インプットの方法はあまり語られないんです。それだけに難しい。

だからこそ、情報自体を精査するよりも、信頼できる情報源を持つことを薦めたいと思います。政府機関の発表、日本だと日経新聞、海外だと公共放送のBBCや、営利企業ではあるもののウォールストリート・ジャーナルなども信頼できると考えています。日本の報道と海外の報道を見比べるのもいいと思います。

加えて、余計な情報は極力入れない、ということも大事です。日常生活のなかで時間は限られています。信頼できるメディアを持ち、あとは追いかけない。現代社会では難しいかもしれませんが、無料で意味のない情報が垂れ流されている今だからこそ、シャットアウトすることも必要です。

たしかに現在の日本では、未来へのネガティブなニュースが多いかもしれない。一般論として、ネガティブなニュースのほうが耳目を集める傾向もあるだろう。

だからこそ、信頼できるメディアや機関からのファクトやデータのみを取得するべきという山口さんが「信頼に値する」と挙げてくれた日経新聞の記事を日常的にインプットするのであれば、日経電子版がおすすめだ。

 

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「イケてる選択肢、ないやんか!」
その状況はハッピーじゃない
——龍崎翔子さん

龍崎翔子

1996年生まれ。株式会社水星代表、株式会社CHILLNN代表、ホテルプロデューサー。2015年に株式会社水星(旧社名:L&G GLOBAL BUSINESS, Inc.)を設立。「HOTEL SHE, KYOTO」「HOTEL SHE, OSAKA」などを開業したのち、2020年にはホテルの自社予約プラットフォームのための新会社CHILLNN, Inc.設立。2022年5月に産後ケアリゾート「CAFUNE」開業。

私がプロデュースするホテルには、多様性がない!?

私はホテルのプロデュースをしていますが、一般的にホテルに求められるダイバーシティって「多様な人たちを受け入れること」なんです。極端に言えば、宿泊するのが若者であっても、おじいちゃんおばあちゃんであっても、気持ちよく宿泊することができる空間であることが大事。けれど、そうしてダイバーシティを意識した結果、どのホテルも均質化してしまうんですね。

それに対して私がやっているのは “選ぶ側” のダイバーシティと言えます。特定の人に特化したホテルを作ることで選択肢に多様性が生まれる、という意味です。たとえば今、産後ケアにフォーカスしたホテルをプロデュースしているのですが、これは「出産後の女性の負担をサポートしたい」という想いから、助産師さんや保育士さんのサポート付きで、子育ての技術を身につけてから自宅に帰っていただくという宿泊プランになっています。

これ、私のなかでは “選ぶ側” のダイバーシティなんです。産後ケアに特化したホテルは、あらゆる人を受け入れるホテルじゃない。前述のダイバーシティとは違う。けれど、視点を変えると、お客さんがホテルを選ぶ際の多様性は生み出しているというわけです。

そもそも、私が会社を経営している目的は、選択肢に多様性をもたせることなんです。ほら、世の中には「イケてる選択肢、ないやんか!」という瞬間ってあるじゃないですか(笑)。仕方なくそのなかから選ばざる得ない……そういう状況ってハッピーじゃない。その人が環境に合わせることになりますからね。

……つまり、何が言いたいかっていうと、ただ、ダイバーシティっていう言葉ひとつとっても、その捉え方にはいろいろあると思っている、という話です。

多様な視点でものを見るために

これからのダイバーシティって、多様な性的指向を持つ人や宗教などさまざまなバックグラウンドがある人、あるいは身体障害がある人たちが包含されるカルチャーを作っていこうという話だけでなく、価値観の多様性という意味も含まれてくると思います。

だけど、人間は無意識に自分の観ている世界をスタンダードと考えてしまいます。「他の人は違うかもしれない」、そんなふうに多様な視点でものを見るためには、トレーニングも必要だと思います。

例えば、私自身は独身で子どももいない。なのに、産後ケアのホテル事業を行っているわけです。なぜ、出産後のお母さんたちのことを思って、サービスが提供できるのか?じつは難しいことではないんです。SNSなどで、自分とは違う、彼女たちの視点をインストールすることで、解像度をあげているんですね。

私の場合は、そのためのツールがTwitterなど、生の声を聞けるSNSですが、この記事を読んでいるビジネスパーソンの方々だと、また違ってくると思います。

いずれにせよ、多様な視点でものを見る。そのトレーニングのもっとも簡単な方法のひとつが、情報に接するということではないでしょうか。

ビジネスシーンでダイバーシティを語る時、スタッフや働き方の多様性の話になるが、龍崎さんがみているダイバーシティは、必要な情報に接することで得られる価値観の多様性。そして、あらゆるビジネスパーソンに必要なのは、多様な経済ニュースやその解説を含んだコンテンツなのは言うまでもない。

 

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ジャンクな情報ばかりを摂取して
ビジネスパーソンとして成長できるだろうか?
——緒方憲太郎さん

緒方憲太郎

1980年生まれ。Voicy代表。大阪大学基礎工学部卒業後、同大学経済学部を卒業。公認会計士の経験を積んだ後、世界一周の旅へ。その後アメリカで会計事務所Ernst&Youngに就職。帰国後、ベンチャー企業の支援家を経て、2016年に株式会社Voicyを創業。Voicyは2022年時点で、会員登録者数165万人を超える音声プラットフォームとなっている。近著に『新時代の話す力』。

どんな情報を、どうやって収集するか?
考え直す

もとより情報っていろいろな目的がありますよね。エンタメのように気分を高揚させるもの、自分の行動をより良くするためのもの、人との共通点を作るためのもの。そして、今は時代の動くスピードがものすごく早くなっているので、次の時代に何がくるのか?までを探さなくちゃいけない。

一方で、人がその情報に対してどう思っているんだろうか?という観点も出てきました。ヤフーやYouTubeのコメント欄やTwitterあたりがそうです。今話題のものは何かとか、周囲においていかれないようにとか、もしくは炎上しないようにしなきゃといったリスク回避のために情報収集している人もいるでしょう。

さらに言えば、情報収集の方法にも注目です。今までは情報って「何を収集するか?」ということが大事でしたが、今、時代は「どうやって収集するか?」という点でも選択肢がたくさんあります。

情報収集って目か耳からしかできないんですよ。例えば、僕が運営している音声プラットフォームVoicyは、聴くコンテンツを提供しています。耳からの情報収集は、何かをしながら生活の時間を犠牲しないで情報収集ができるメリットがあります。また、生の声を届けているので、その情報を発している人の声の震えとか、そういった温度みたいなものまで受け取ることができます。

一方で読むコンテンツは、好きにスキップできる、自分のほしい情報を集めやすいというメリットがあります。また、しっかりと深く読み込むことで、教科書的な使い方にも適しています。

どちらがいいか、というよりも、選択の問題ですね。

このように、いろんな角度から、情報を取り巻く環境が変化してきています。

どんな情報を、どうやって収集するのか?

僕たちはあらためて考え直す時期にきているんじゃないでしょうか。

情報にアクセスする上で
これからめちゃくちゃ大切なこと!

さて、ビジネスパーソンとしてこれから情報にアクセスする上で、めちゃくちゃ大切なことがあります。

バランスです。

みなさん、子どもの頃「いい栄養を摂らないといい大人にならないよ」みたいなことを言われてきたと思うんです。ビジネスパーソンも同じ。良い情報を摂取しないと、いいビジネスパーソンになれません。ジャンクフードのようなゴシップや刺激的な情報ばかりを摂取していてもダメ。つい食べちゃうんですけどね(笑)。それでも、鶏むね肉も食べたほうがいいし、ブロッコリーだって食べたほうがいい。

困ったことに、食事は偏りがあると、胃がムカムカしてくるから歯止めが効くんですけど、脳はしっかり自己管理しないと満足できず、無意識のうちにジャンクな情報に偏ってしまいます。また、最適なバランスは、人それぞれでもあります。

だからこそ、自分に必要な栄養バランスを考えて、情報を摂取していくこと。刺激的な情報だけでカロリーを満たすのではなく、たまにはSNSをログアウトしてフラットな情報を見てみたり、尊敬する人が何を考えているのかチェックしてみること。ニュースは日経電子版で、人の話を聴きたい時はVoicyで(笑)といったふうに、SNSのアルゴリズムに頼るのではなく、信頼できるメディアを使って、自分で栄養バランスを整えてみてほしいですね。

緒方さんの言うように、今の時代は情報収集に意識的にならないと“ジャンクな情報”ばかりを摂取してしまう。偏りがなくフラットに経済ニュースをチェックすることができる日経電子版は、間違いなくヘルシーな情報源だ。

 

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