太陽系で起こる、史上最大の「悲劇」────火星が重力で衛星を引き裂いてしまう

火星の衛星フォボスは、主たる火星の力によって「引き裂かれる」かもしれない────。

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米国の天文学会の最新の研究によると、フォボスはおよそ4000万年後には裂けてしまうという。

フォボスは、最大直径27キロほどの天体で、火星から6000キロほどの軌道を7時間40分程度で1週している。

太陽系の中ではもっとも主星の近くを周っている衛星なのだが、軌道が不安定で、火星の重力によって100年で約1.8メートルほど接近しているため、このまま進めばいずれ衝突すると考えらている。

しかし、11月に公開された研究によると、フォボスは火星と衝突するより前に重力によって引き裂かれる可能性があるのだそう。

この兆候は、フォボスの不思議な特徴である「しま模様」から読み取られたもの。

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これまで、この模様は大昔に起きた小惑星衝突の傷跡だと考えられていたものの、実際は塵が沈んだ谷であり、火星の重力に釣られて星が引き伸ばされることで少しずつ広がっていることが分かったのだ。

フォボスの内部には硬めの層があり、これが火星の重力が生む潮汐力によって歪むことで表面の塵が沈んで谷状の溝ができている、というのが研究チームの見解。

すなわち、これが進むと溝はどんどん広がり、やがては裂けてしまうということ。

もっとも近くに居るいわば「近衛隊」なのに、主人の力によって引き裂かれてしまう──運命に抗えない様が、それとなく“悲劇っぽさ”を感じる。

地球にも影響がありそうだし、どうにかフォボスが救われることを願いたい……けど、まあ4000万年後の話だし、別にいっか。

Top image: © NASA
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