「誰がキング・オブ・ロックンロールやっちゅーねん」
どうも、亀です。
鶴は千年、亀は万年の、あの亀です。
人がうちらのこと“吉兆の象徴”とか“神の使い”とかって崇めてくれてるのは知ってますよ、ほら、うちら、万年生きるから。昔から置き物とか反物の模様とか掛け軸の絵柄とか、重宝がってくれてるの、正直、嬉しくは感じてます。
でもさ......ひとついい?
うちら、
こんな尻尾じゃありませんけども。
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「エルヴィス・プレスリーみたい!」
「『魅せられて』のときのジュディ・オングだね!」
「『イージー・ライダー』のデニス・ホッパーだ!」
あらゆる場所で都市化が進み、人が自然と触れ合う機会が減っていくなか、本物のうちらと接することが少なくなった子どもたちがこの置き物を見たら、きっとそんなふうに思うはず。
ちょい......
誰がキング・オブ・ロックンロールやねん。
うちら亀が、置き物やデザインにアレンジされるときにあしらわれる、このふっさふさのフリンジみたいな尻尾的なもの。
これ、「藻(も)」です。
繰り返しでなんですが、うちら亀、万年生きます。さすがに本当に一万年生きるわけじゃないけども、相当に長く生きます。こんな事例もあるくらい。
で、水のなかで長いこと暮らしていると、川底の石のように、うちらの背中には藻が生えたりもするわけです。そんな、背中の甲羅に藻が生えた長寿の亀を、人は蓑(みの)を被った姿になぞらえて「蓑亀(みのかめ)」と呼んで敬ってくれる、と。
そんな、なかなか出会うことのできない蓑亀を吉祥の象徴ととらえて、置き物や掛け軸なんかのモチーフにして愛でてくれることは、まぁね、悪い気はしません。
でも、これだけは覚えておいてください。
これ、尻尾じゃなくて
藻ですから!
あと、しばらく待ってたけど、誰もつっこんでくれなそうなんで、うち、自分でいいます。
子どもはきっと、
プレスリーもジュディ・オングも、
デニス・ホッパーのことも
あんまり知らないから!
「おやつなトピック」って?
Z世代のインターンから、この道うん十年のベテラン編集者まで、TABI LABO“ナカの人”がリレー形式で担当するコラムです。
Top image: © SHUHEI KOBAYASHI, 2023 NEW STANDARD