インドのYouTubeチャンネルがすっごい人気なのは自然の摂理──ベンのトピックス

みなさん、ごきげんよう、ベンのトピックスです!

ちょっと前に書いた「竹内まりやの記事」を読んでくれましたか?まだだったら……読んでね!

あの記事で、竹内まりやのこと書きましたけど、YouTubeのアルゴリズムの話もしました。そこででてきた「キング・オブ・アルゴリズム」のことを覚えてますか?

今日は、そんなYouTubeのアルゴリズム的に成功しているチャンネルと、その結果見えてくるユーザー数の大きな構造変化についてお伝えしたいんです。

「キング・オブ・アルゴリズム」のチャンネル

日本のYouTubeユーザーの数、特に若い層はどんどん増えてますよね。

前の世代がテレビに憧れたように、YouTubeなどのインターネット上のプラットフォームでエンタメコンテンツを見つけています。これにはイイ部分もワルい部分もあるとベンは思っています。

多くの人に使われてて、誰でも簡単に利用できるプラットフォームというのは、新しいクリエイターや新しいコンテンツを発見するのに適してますよね。でも、子どもがアクセスするから、無修正のコンテンツがいくつもあるのはちょっと危険です。

で、いま日本のユーザー数は世界のトップ10に入るくらいいます。でも、やっぱり、YouTubeと聞くと「アメリカ」ですよね。数がぜんぜん違う。

アメリカは人口の50%以上がYouTube愛用者で、どこの国とも比較にならない数!(中国は、YouTubeが禁止だから単純比較はできないのかもしれないけど)。

それだけ巨大なアメリカのYouTube市場だけど、子どものユーザー数がすごい増えてます。そして、アメリカの子どもの滞在時間はヤバいです。

というところで、最初の「キング・オブ・アルゴリズム」を紹介しますね。

7歳のライアン・カジさんです!

日本でも知ってる人が多いと思う「Ryan's Toys Review (ライアンズ・トイズ・レビュー)」。タイトル通りなんだけど、ライアン・カジくんがオモチャをレビューするチャンネルです。

やってること自体は普通なんですが、7歳のライアンの年収は25億円を超えています(今年は30〜40億円ぐらいになるかも)。

どうしてこのライアンズ・トイズ・レビューはそんなに稼げるのかは、アルゴリズム的によくできている点が多いから。
まず、ライアンの動画は“どれも時間が長い”こと。そして、“頻繁にコンテンツをアップロード”している。関連する「次の動画」がどんどん続くから、“滞在時間もスゴい”ことになる。
そんなファミリーフレンドリー(いやいや、広告会社フレンドリーだよね)で、オモチャメーカーとか動画スポンサーも見つかりやすいコンテンツ。

実際にこれを見始めると、「次の動画」や「オートプレイ」ボタンをお腹が空くまで押し続けてしまう子どもが多いんです。

そんなことがあるから海外ではYouTubeの子ども向けコンテンツについて、見過ぎてしまうのを制限したり、好ましくないコンテンツから防ぐ方法がないのか、議論されることが多いです。

でも、子どもを糖分やタバコ、アルコールといった中毒性の高いものから遠ざける手段はたくさんできているけど、ゲームやSNSは、ほぼ無制限。これは社会として、複雑な問題だよね。

ちなみに、ベンはゲームもSNSも嫌いじゃないし、よく使ってるけど、安全なものだとは思ってないです。

ベンが紹介したいのは
こっちの「キング・オブ・アルゴリズム」

子どもに与える影響の多いライアンのチャンネルだけど、今日ベンが本当に紹介したかったのは別にあります。このチャンネルは、YouTubeだけでなくインターネット全体の人口分布の変化も示しているんです。

それが、YouTubeでもっとも登録数が多いチャンネル「T-Series」です。

T-seriesがYouTubeのトップに躍り出たのは、ごく最近。ほとんどの日本人は知らないだろうし、アメリカでもそんなに多くのユーザーに見られているわけではありません。ただ、ヨーロッパ、特にイギリスだと、登録者のコミュニティがあったりもします。これらの結果も、地理的な理由なんです。

もったいぶってるけど、もうちょっと成功した理由のヒントをお伝えしましょう。

T-Seriesはボリウッドのチャンネル

成功の理由、だいたいわかりますよね?

YouTubeは世界のどこよりも、インドで新規ユーザーを獲得しています。やはり世界第2位の人口がいる国だし、第1位の中国が検閲で不自由なインターネット市場になってますよね。インドはまだまだ発展途上の国なんだけど、スマホとインターネットユーザーは急増。数年かけて、政府と通信事業会社がインド中に巨大な4Gのネット環境も整備しました。

だから、YouTubeにアクセスできる環境は抜群。インドのレストランでは、テレビが置いてあってボリウッド作品や音楽が勝手に流れてくるのが普通のことでした。でも、いまはお店もお客もテレビが必要ない。4GのWi-Fiが揃っていてインターネットにどこでも繋がるから、食事をしながら多くの人がダラダラとYouTubeを見ます。こういう条件はアルゴリズムに強く味方します!

話をT-Seriesのことに戻しますが、このチャンネルをつくっている「スーパー・カセッツ・インダストリーズ」という会社もアルゴリズムに適う一因。インドのレコードレーベルであり、映画製作会社でもあります。1983年に設立されて、インドのソニー・レコード(ソニー・ミュージック・インディア)より大きいくらい。

彼らは、設立から35年以上かけてつくってきた音楽と動画をたくさん保有しています。そして、ボリウッドは映画やMVをハリウッドと比較にならないスピードでバンバンつくります。だから、古いのも新しいのもコンテンツをたくさんアップロードできるんですね〜。新しいファンも昔のファンも楽しめるわけです。

そしてT-Seriesのように、1日5回もコンテンツをアップロードしていれば、アルゴリズム的にヒットする条件にマッチします。

インドは、アメリカみたいに子どものインターネット利用に規制もほとんどないから、子どもだって夢中になってしまう。識字率がまだまだ低いインドにとってはイイことかもしれないけど……。

それに、インドではWhatsappの詐欺とか、フェイクニュースの問題だって多い!でも、インターネットをやめることはできないんですよね。

将来どんなアルゴリズムに修正される?

前回の「竹内まりやの記事」の記事で書いた通り、YouTubeのアルゴリズムは怖いほど有効だと思います。

このままならば、40年経っても竹内まりやを聴く外国人ユーザーを見つけることができるだろうし、子どもたちが無限に夢中になるコンテンツを与え続けることもできる。YouTubeをチェックするインドのインターネットユーザーは、まだまだ増える。

このアルゴリズムはスゴく興味深くて、将来どのように修正をかけてくるのかも楽しみです。いや、ベンは本当はその力を少し怖がっているかもしれない。でも、ジャーナリストとして、元研究者(ベンはロンドン大学の大学院生だったんです)として、アルゴリズムから学べることはたくさんあると思うんです。

だから、ベンもYouTubeをチェックし続けちゃいます(笑)。

Top image: © Naomi Nemoto
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。