アルゴリズムを制した「竹内まりや」──ベンのトピックス

アルゴリズムを制した「竹内まりや」──ベンのトピックス

みなさん、ベンのトピックスにおかえりなさい!

今日のトピックは、日本メディアですでに話題になっているけど、この記事は違う視点で紹介しようっていう内容……とにかく、話を先に進めよう!

日本のポップミュージック

邦楽を海外を輸出することって難しい!BABY METALやきゃりーぱみゅぱみゅなどのビジュアル的に面白いアーティストは成功しているけど、やっぱり、K-POPのように英語が上手な歌手が英語で歌うことが大事です。

いっぽう、J-POPは相変わらず日本語で歌ってます。でも、ベンのiPodにはたくさんJ-POPが入っていて、山口百恵とか大貫妙子なども入っていて、好きですよ。

イギリスでは、J-POPはかなりニッチなジャンルです。アニメのテーマ曲だったら好きって人もいたし、タランティーノの映画から梶芽衣子の曲を知っている人がいた。こんな感じにいつもJ-POPというと、マニアックなトピックだったんです。

あの曲を知るまでは……。

〜『PLASTIC LOVE』 by Takeuchi Mariya

その曲は、竹内まりやの『PLASTIC LOVE』。

この記事を書いている2019年7月現在で、Plastic LoverというYouTubeユーザーがアップした動画が再生されたのは2600万回以上になっています。「次の動画」タブに表示される別の誰かがアップした同じ曲でも900万回を数えているし、英語カバーは340万回を超えています。Slackerzというチャンネルが作り出した80年代日本のシティポッププレイリストは520万回以上だし、大橋純子とANRIの曲も同じように何百万回もの再生になっています。

もっと言うと、海外YouTuberが『PLASTIC LOVE』の現象を説明するミニドキュメンタリーまである。

この人気、一体どういうことだろ!?

海外でハマちゃった人が続出の『PLASTIC LOVE』。ニューウェーブ、シンセポップ、ディスコ、ジャズなどのジャンルが混ざってるし、80年代に生まれた作品独特のパワーもあるし、竹内まりやのピュアな声とともにマイナスな部分がない曲だとベンは思います。

バブル時代の素晴らしい音楽なのも分かるし、この曲を愛する人の気持ちだって僕は分かる……でも、ホントに知りたいのは「なぜこの曲を好きになった?」ってことより「どうやってこの曲を見つけたの?」ということ。
この曲は35年前に作られた、悲しい内容の日本語の曲だよ!外国人には歌の意味だって分からないはずなのに。

一応ですけど、『PLASTIC LOVE』人気についての次のような説が言われてもいます。

▼「『PLASTIC LOVE』は世界のオールタイムベストな曲だ!」というVICE英語版の皮肉っぽい記事。(いや〜、違うと思うなぁ)

▼K-POPの国際的な人気が影響しているという人の説。(ぜんぜん違うと思う)

▼ストレンジャー・シングスのような80年代トレンドの影響。(まあ、ちょっとは関係あるかなぁ)

▼VaporwaveとFuture Funkのサンプリングによる人気。(これは大きい影響があるかもね)

 

どれも正解な気がしないです。そんな中、ある記事で見つけたのがこれ。

▼“YouTubeのアルゴリズム”のおかげでは?

……ピン!ポン!これだ!

ア・ル・ゴ・リ・ズ・ム です

『PLASTIC LOVE』の成功は、YouTubeがコンテンツをピックアップするアルゴリズムによるプロモーションのおかげ、ということ。

で、YouTubeのアルゴリズムとはなんでしょうね?

YouTubeが最初に設立された2005年頃のアルゴリズムはシンプル。オススメなどにあがる動画は、再生回数の多いものでした。バイラルコンテンツになるのにはいいんだけど、動画のクオリティとか安全性(成人向けコンテンツがでてきちゃう)という面で広告クライアントに嫌厭されました。

06年にGoogleがYouTubeを買ってからは「どうやってもっと効率のいいアルゴリズムにできるか?」とあれこれ考えられたみたいです。そして、12年からは「成功のカギ = 視聴時間」という考え方でアルゴリズムを作り出すことに。
YouTubeのクリエイター達はそれまでより長い時間のコンテンツを作るようになったし、世界的にはVlogやライブゲーミング動画がブーム(例えば、日本ではHikakinGamesチャンネル)になった。これに加えて「セッション時間」、つまりユーザーがYouTubeに滞在した時間が重要になっていきました。

© Naomi Nemoto

年々、アップロードされる動画の量が増えていくので、YouTubeは2016年に機械学習するアルゴリズムエンジンを採用しました。不適切なものや著作権コンテンツ、再アップロードなどの動画をフィルターしながら、滞在時間と視聴時間が稼げる動画を応援してくれるものでした。

ちなみに、この年のトランプ大統領選挙で、いい方法を見つけたんですよね。それは、動画の数が多くてニッチなジャンルだと滞在時間が一番よかったということ。

だけど、そこで話題になっていたのは、政治的陰謀とかナンセンスな話、それにフェイクニュース。これらの動画の視聴者は30分以上のやつを何十も観るんだけど……問題なのが、彼らがクレージーってこと(笑)。この時、海外のメディアからYouTubeのアルゴリズムは「誤報エンジン」というアダ名をもらいました(笑)。

17年になると、YouTubeはそういう問題を直すことにしました(ちょっと手をつけるのが遅いけどね)。滞在時間が長く、ファミリー層に相応しいコンテンツをプッシュする新しいアルゴリズムに変更。まあ、仕組みについては秘密で守られているし、ありえないくらいムズイよ。

『PLASTIC LOVE』は“だいたい完璧”な動画です

すっかり話の主役を放置しちゃったから戻そう。竹内まりやの『PLASTIC LOVE』は、2017年以降のYouYubeアルゴリズムに対して、よくできた“だいたい完璧”な動画なんです。なぜかを3つのポイントで説明しているから、もうちょっとこのコラムに付き合ってください!

①サムネイル

『PLASTIC LOVE』のサムネイルは、1984年にフォトグラファーのアラン・レベンソンが撮った竹内まりやの笑顔の写真です。インスタを使う人は分かるかもだけど、人間の顔を写しているほうが、写していない画像より「いいね!」がついて、クリックされることが多いです(特に顔がきれいだったり、笑顔の女性だとね)。

他の成功した例だと、DJ Boringの『Winona』はサムネイルにウィノナ・ライダーの美しい顔を使っていた。これは、偶然の一致じゃありません(アルゴリズムに偶然の一致はないよ!)。

いま現在、成功しているYouTuberは、みんな顔を写しているサムネイルを使います。サムネイルは大切ですよ。最高な動画をつくっても、誰もクリックしなければ、失敗ですよ。

②滞在時間と視聴時間

「PLASTIC LOVE」はポップソングとして短くはない、7分56秒の曲です……激長なんです!まあ、DJ Boringの『Winona』は8分32秒だけどね(ハウスの曲としては普通かな)。

YouTubeの動画の平均時間は4分30秒くらいだから、『PLASTIC LOVE』を最後まで視聴したら、YouTubeのアルゴリズムの評価は二倍ぐらいになるんですよ。これは自分の仮説なんだけど、サムネイルからのクリック率が高い上に、曲の魅力も相まって動画を全部視聴した人数も比較的に多い動画なんだと思います。

③関連動画も多いニッチなジャンル

先にも書いたけど、YouTubeのアルゴリズムが評価するのは、動画が多くて、ニッチなジャンルであること。次の動画、その次の次、次の次の次……と視聴してくれたら、その評価は高くなります。シティポップ、ハウス、90年代のブリットポップには、たくさんの音楽が既にありますよね。だから、関連動画も数えられないくらいに多い。

新しいコンテンツとそのファンを生み出すのは、時間もかかるし大変なこと。でも、バブル時代の音楽はもうできあがっているので、MP3と画像や動画イメージがあれば、すぐにアップロードできてしまいます。だから、動画数が多くて、ニッチな人気ジャンルに成長しやすい。そう思えるでしょ?

それに、『PLASTIC LOVE』を聴いたら、必ず次の曲も聴きたくなるしね!

そういう意味で、竹内まりやのこの曲が、キング・オブ・アルゴリズムなんです。

成功しているチャンネルはまだまだあるよ

シティーポップも、ハウスミュージックも強力でニッチなジャンル。でも、つい聴いてしまうんですよね。DJ Boringの『Winona』も載せておくから、ベンの言っていることに嘘がないかこっちも試してみて。

そして、近いうちにベンのトピックスで『PLASTIC LOVE』より、『Winona』より、2019年の現在でYouTubeアルゴリズム的に成功しているチャンネルを紹介しようかと思ってます!待っててね。

Top image: © Naomi Nemoto
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