もしも、自宅にバンクシーの絵が描かれたら?答えは「悪夢のような負担」らしい
バンクシーのスタイルについては、もはや説明するまでもない。
芸術か迷惑行為かはさておき、彼(彼女?)の“落書き”が及ぼす影響は絶大で、オークションやら観光やらで莫大な経済効果をもたらしている。また、社会問題をテーマとするバンクシーは、作品に風刺や問題提起を含めることも多い。
さて、もしも自分の家の壁に、バンクシーの絵が描かれたらどうだろう?きっと最初は大喜び。あの著名アーティストの作品が、家の一部になるのだから。
でも、最後には“悪夢”を見ることになるらしい。
英『The Times』誌の報道によると、家にバンクシーの作品が描かれたことで、ある夫婦が凄惨な選択を迫られたという。
2021年、サフォーク州に住む夫婦の自宅の壁に、バンクシーによっておよそ6m大のカモメが描かれた。ゴミ箱を覆うように描かれたその鳥は、ポリエチレンを食べてしまう動物を模した、環境問題を意識した作品だろう。
ふたりは最初こそ大喜びしたそうだが、その先に待ち受けていたのは、州議会から届いた「莫大な負担」を強いられる2つの選択肢だった。
1つは、保存のために年間4万ポンドを負担し続ける選択。そしてもう片方は、最大20万ポンド(およそ3500万円)を支払って壁を撤去すること。
それ以前にも、夫婦は観光地と化した自宅の壁を保全したり、絵を切り取って盗もうとする泥棒や塗り替えようとする厄介者から壁を守り抜くために手を焼いてきたそう。盗難の対策のために、自費で夜間警備員を雇う必要まであったという。
そこまでして守ってきた「自宅の壁」。それでも、その先に待っていたのは、悪夢のような2択だったのだ。
「バンクシーは、家の所有者がこんな負担を強いられているなんて気づいていないのでしょう。時間を戻せたらどんなにいいか……」
夫婦は嘆く。
ただし、バンクシーが作品の場所としてサフォーク州を選んだこと、社会問題を提起したことについては「感謝している」とも述べている。
どうだろう。これでもあなたは、自宅に彼の作品を欲しいと思うだろうか。
これまでの費用や撤去の20万ポンドを相殺するため、夫婦は作品をオークションに売却するつもりだという。他のバンクシー作品は、何も知らない市場の人間によって6桁(日本円なら8桁)を超える価格で取引されている。
彼らの「壁」も、同じように市場に届くことを願いたい。