実在しない超売れっ子インフルエンサー、およそ16億円を稼ぎ出す
「美しく整った顔」「メリハリと丸みのあるボディ」「魅力的な衣装」「豊かなライフスタイル」──。
一般的に人々の理想とされる要素を併せもつと噂の、とある“インフルエンサーたち”が今、話題になっている。
ピンクのボブの彼女はImma、その下はLil Miquela。「DIOR」や「FENDI」といった世界有数のブランドと契約する彼らの収益は、じつに十数億円規模だそう。
さて、この2人にはある共通点が──。
彼女たち現実には存在しない、AIインフルエンサーであるというのだ。SNSには、彼女たちに魅了されたファンが多数。Lil Miquelaに至っては、すでにフォロワー数が280万に迫る勢いだ。その魅力づけをしているのが、彼女のもつストーリー性。ちなみに、Blawkoという男性のAIインフルエンサーと付き合っているんだとか。
このように、ファンらはふたりの関係性も含めてAIインフルエンサーのとこを支持している、ということだろう。もはや、“リアル”かどうかは関係なく。
急成長する
AIインフルエンサーの世界
見た人に「実在」と信じ込ませてしまうほどのリアリティをもって作成されるAIインフルエンサーは今後も成長が見込まれ、市場規模は約6500億円まで達するとの予測もある。
それを裏付けるビジネスモデルを紹介しよう。バーチャルインフルエンサーによるマネタイズの一例を『The US Sun』が報じている。
まず、グラフィックデザイナーやデジタルアーティストを抱える企業がAIプログラムを用いてキャラクターをデザイン。これを用いて大手ブランドとコラボレーションしたSNS投稿を行うことで、およそ150万円ほどの報酬を得ることとなるようだ。
“可能性は無限”
AIインフルエンサー起用のメリットとは
AIインフルエンサーの可能性については、有識者たちから肯定的な意見が多い。
以下も『The US Sun』より、グローバルインフルエンサーマーケティング企業「IZEA」の創設者Ted Murphy氏のコメント。
「バーチャルキャラクターの台頭が広告業界を変革すると思います。彼らは人間という“制約”に縛られていないのですから。複数の場所に同時に存在し、あらゆる言語を使い分け、信じられないほどの技を行使し、自由に完全なリデザインをすることができます。これにより、ブランドストーリーテリング、マーケティング、および観客参加において、無限の創造的可能性が提供されるでしょう」
また、Instagramの専門家Estelle Keeber氏の意見はこう。
「彼らは疲れることなく、事前に定められた時間に投稿することで、ターゲットオーディエンスと潜在的な顧客との定期的なエンゲージメントを確保できます。また、コスト面でもメリットが。高価なモデルや写真家を雇う代わりに、AI生成のキャラクターならいかようにもビジュアルをカスタムでき、予算に優しく、誰もが望む容姿を表現できるわけですから」
言わずもがな、人間には限界がある。が、AIインフルエンサーにはそれがない。そう考えると、有名ブランドがAIインフルエンサーたちを契約するのも頷ける。
あいまいな現実と虚構の境界線
いっぽうでバーチャルインフルエンサーに異議を唱える人もいる。
プロフィールに「私はAIによって生成されました」と表記するなど、AIコンテンツに“透かし”を入れるべき、こう唱えるのは英『BBC』をはじめ司会業で活躍するLara Lewington氏。自身、AIインフルエンサーについて、現実と虚構が曖昧になる恐れがあり、厳格な規制を設けるべきと主張する人物だ。
AI全盛の時代にそのすべてを非とする必要はないだろう。ただ、彼女が言うように我々はもう、なにが本物なのかすらわからなくなってしまう現状にある。前述の2人がそうであるように……。
そう考えると、一定のクレジットなり表現手段は将来的に議論される必要があるのかもしれない。ちなみにこの部分、現在は作成者に依存している。
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多様なボディタイプのモデルが起用されることも多くなってきた昨今。それでも、コレクションが開催されれば、やはり似た体型のモデルで統一されてきているようにも見受けられる。そこへ登場するした、外見を容易くブランドイメージに合わせることができるAIインフルエンサーたち──。
多様性とは、ボディポジティプとは。モデル業界のスタンダードは今後も懐柔に変化していくのだろう。