じつは私たち、大気汚染の影響を受けているかも……
もはや聴き慣れた言葉になってしまった、大気汚染を代表する「光化学スモッグ」や「PM2.5」。
私たちの健康に害を及ぼすことは言うまでもないが、新たな研究により、工場や火力発電所などによって発生した有害物質は、新生児の出生体重にも影響をもたらすことが明らかになった。
この事実は、ノルウェー・ベルゲン大学の国際公衆衛生部門の研究者であるロビン・ムザティ・シンサマラ氏が、ミラノで開催された欧州呼吸器学会国際会議で発表したもの。
いわく、大気汚染レベルが高い地域に住んでいた母親から生まれた新生児ほど、出生体重が低かったという。
この研究は北ヨーロッパの呼吸器疾患の研究のデータに基づいており、妊娠中の母親が住んでいた植生密度や大気汚染物質量、母親の年齢、喫煙の有無、健康状態などが考慮されている。
では、出生体重の低さは新生児にとってどのような意味を持つのだろうか?
世界最大級の科学プレスリリースのプラットフォーム『EurekAlert!』にて、シンサマラ氏はこう述べている。
「胎児が子宮の中で成長している時期は、肺の発達にとって非常に重要です。出生体重が低い赤ちゃんは胸部感染症にかかりやすく、これが後に喘息やCOPDなどの問題を引き起こす可能性があることがわかっています」
この研究で注目すべき点は、調査対象の母親が妊娠中に住んでいた地域の大気汚染レベルは、欧州連合の基準値内だったということ。
大気汚染が顕著な地域でなくとも、出生児の体重減少は起こり得るようだ。
スイスの空気清浄器メーカー「IQエアー」が発表した2022年の世界の大気状況報告書によると、日本の汚染濃度の高さは131ヶ国のうち97位。
世界保健機関の安全基準値には収まっているが、この研究結果を踏まえると、日本でも大気汚染による新生児の出生体重の減少は起きていないとは言い切れない。