今、世界中を駆けめぐる「おにぎりレボリューション」を知ってますか?
近年、おにぎりに注目が集まっています。
日本の食文化を後世に遺すべく、「ぐるなび総研」が発信する「今年の一皿」に昨年選出されたのも、やはりおにぎり(正確には「ご馳走おにぎり」)だったことは記憶に新しいところ。
そしていま、“おにぎり熱”は日本にとどまらず、海を渡り「ONIGIRI」として世界中で一大ブームを巻き起こしています。いったい、この大波はどのように世界を駆け巡っていったのでしょう。
なぜ、「おにぎり」は
世界で受け入れられた?
2000年来より、ニューヨークやロンドンをはじめ主要都市には「ONIGIRI」が存在していたことを筆者も記憶しています。ですが、その多くはSUSHIコーナーの一角でやたらと三角に成形されたものだったり、海苔を巻かずゴマをふったり、いわゆる塩にぎりだったり……。
やがて、訪日観光客がどっと押し寄せるようになると、コンビニで手に取るおにぎりの存在が大きく影響してきたのではないかと想像します。そして2018年秋、浅草の名店「おにぎり 浅草 宿六」が「ミシュランガイド東京2019」でビブグルマンに選出されたあたりから大きく潮目が変わったのではないでしょうか。
中身の具材を選べる利点は、お寿司と違って生魚が苦手な人にも受け入れられ、ベジタリアンやヴィーガン、さらには宗教上の理由がある人たちにも手に取りやすく、健康と利便性を求める人々のニーズを満たしていきました。
また、グルテンフリーが根付いてきたのもちょうどこの頃。加えて玄米や雑穀米でもつくるおにぎりに健康志向の高い人たちが飛びついたことは言うまでもなく、世界で活躍するトップモデルたちがONIGIRIを手にインスタ投稿する絵が拡散されていきました。
こうして並べてみても、おにぎりが世界へ羽ばたく要因は枚挙にいとまがありません。
こうした世界の“おにぎり熱”にいち早くアクションを起こしていたのが「おむすび権兵衛」。2013年、米ニュージャージー州に海外1号店をオープンさせると、2017年にはパリに進出。行列の絶えない人気店としてパリの人々から愛されているようです。
パリで進化を続けるおにぎり
「Parisian onigiri」って?
ところで、現在ONIGIRIブーム真っ只中のフランスでは、おにぎりを再解釈し具材をカスタマイズした、フランス風フュージョンおにぎり「Parisian onigiri」なるものが次々と登場しているようですよ。
電子出版プラットフォーム「Medium」において「The Onigiri Revolution」と題された記事より一部ご紹介いたします。
いわく、牛肉やサーモンといったフランス人に馴染みのある食材を活かしたものから、最近ではドライトマト、クリームチーズ、さらにはご飯にオリーブオイルを混ぜ合わせることで変化をつけるなど、サンドイッチのバリエーションを凌ぐパリ風ONIGIRIが展開されているんだとか。
著者Joel Fukuzawa氏の見解によると、こうした再解釈アプローチは2015年ごろ日本でブームとなった「おにぎらず」の独自性やオリジナリティが反映されたものだとも。なるほど、そう捉えると「Parisian onigiri」も「おにぎらず」も、ともに“おにぎり”というフレームのなかで味とエンタメ感を追求した結晶と言えなくもない、か。
いずれにしても、フランスの例のように世界各地へと飛び火したおにぎりが再解釈され、その土地の食文化の中で生まれ変わっているとするなら……氏が題した「The Onigiri Revolution」の意が読み取れなくもない、のでは?
日本人の米の消費低下の起爆剤となるか?
ところで、日本のソウルフード「おにぎり」がこうして世界で羽ばたくいっぽで、農水省の発表によれば、日本の一人当たりの米の消費量は年間55.2キログラムだそう。じつはこれ、他のアジア諸国と比較しても圧倒的に少なく、その数は年々減少傾向にあるそうです。
こうしたお米離れの現状に、もしかしたら、おにぎりが日本人の米の消費低下に歯止めをかける起爆剤となるやもしれませんね。