深刻化するごみ問題に「廃棄物ゼロ」で挑むピザ屋のはなし
2023年11月、「麻布台ヒルズ」ガーデンプラザBにオープンし、連日多くの美食家で賑わうピザレストラン「Pizza 4P's」。
ベトナムで創業し、カンボジアそしてインドなどグローバルに展開するこの店、じつは日本人オーナーによって2011年に立ち上げられた。
世界で話題を呼ぶその味はもちろん、「廃棄物ゼロ」という大胆なコンセプトを掲げ、独自のサステナビリティに取り組んでもいる。
今回、カンボジア国内の店舗へと訪れ、彼らの取り組みを目の当たりにした。
プラごみ持ち込みでポイント還元!
店舗併設「RECYCLEルーム」
カンボジア国内に2店舗を有する「Pizza 4P's」。首都プノンペン随一の繁華街でグルメタウンのボンケンコンエリアに位置するPizza 4P's BKK1店には、独特のポイントサービスがある。
それは、レストラン利用客がプラスチックごみを持ち込むとポイント獲得できるというプログラム。貯まったポイントに応じてドリンクやピザが無料になったり、オリジナルのリサイクルコースターがもらえるというもの。家庭内で出たプラごみの分別回収推進を狙ってのもの。
こうして集まったプラごみは、店舗併設のリサイクルルームでさらに細かく分別される。利用客の持ち込んだものに加え、店舗で出た廃棄物は20種に分別されるというのだから、その徹底ぶりがうかがえる。回せるものは再利用へ。その意識が「Pizza 4P's」のアイデンティティでもある。
ごみを出さない、捨てない
徹底した再利用への意識
回収された廃棄物よりリサイクルされたプラスチックは、適切に処理・加工されたのち、調味料やカトラリーボックスとして店舗で使われてもいる。
プラスチック製品に限らずグラス類もワインボトルのアップサイクル品だし、ストローは廃棄されるサトウキビの繊維からつくられたものだとスタッフが教えてくれた。
こうした取り組みに賛同し、ともにプノンペンの環境を良くしていこうという団体も増えているようだ。下の画像はPizza 4P'sのネームが入ったコースター。プノンペンを拠点とするリサイクル団体「TRASH IS NICE」と協力して作られたもの。
リサイクル品の再活用はこれらツールだけにとどまらない。前述のBKK1は、1号店「Pizza 4P's 313Quayside」から出たおよそ8トンものプラスチックをリサイクルし、建設時に店舗設備に活用されてもいるというのだから頭が下がる。
良質なピザの味の評価にばかり目が行きがちだが、ごみを出さない、捨てない、彼らの廃棄物ゼロへの意識の高さこそ、Pizza 4P'sが世界から注目されているゆえんだということをあらためて実感させられた。
不要となったモノでつくる
「リサイクルアート」
さて、「313Quayside」店の入り口手前に、一際目を引くモニュメントが設置してある。このアート作品もやはりリサイクル。内部にはコロナウイルスのパンデミック期に使われた体温計が埋め込まれており、下部にはオープンから1年間で割れてしまった平皿たちを捨てずに作品に活かしたそうだ。
「不必要になったものを捨て“忘れる”のではなく、それらが必要とされていた時代を物語の一部として残しておきたい」という想いが込められているんだそう。
なぜ、カンボジアで
廃棄物ゼロを目指すのか
長く続いた内戦が明け、カンボジアは発展途上国ながら近年急速な経済発展を遂げてきた。いっぽうでプノンペンを中心に都市部の人口増加が引き金となって廃棄されるごみが処理のキャパをオーバーする問題が深刻化。大きな社会問題となっている。
国内で発生したごみは適切に処理されるものがすくなく、空き地や川沿いに放置されたり、水路へと投げ込まれることも少なくないそうだ。現にプノンペンでの滞在期間、道路脇や草むらに廃棄され異臭が漂う生ごみやトンレサップ川をたゆたうプラスチック容器をどれだけ目にしたことか。それらはいずれ国内の流れる川から海へとたどり着き、海洋漂流ごみとなって広く拡散されていく。
「ごみはごみ箱へ」
「資源ごみは分類を」
日本人の感覚からすればごく当たり前のことも、それらは収集や処理のシステムが確立してのものだということを意識させられた。深刻なカンボジアのごみ問題を前に、すこしでも改善すべく自ら積極的に動くPizza 4P's。彼らの掲げる「廃棄物ゼロ」は、決して夢物語では終わらない。現に、2022年は30トン以上の廃棄物をリサイクルすることに成功。リサイクル率は91.1%を達成したそうだ。
最後に、Pizza 4P'sもうひとつのコンセプトを紹介したい。
店名の「4P's」は「for peace」にもかかっている。平和のために、世界を笑顔に──。どこまでも崇高なビジョンに胸が熱くなる。でも、それすらも実現させてしまうのではないか。ピザ窯から距離が離れたテーブル席でさえ、そんな熱量を感じずにはいられなかった。
🇰🇭🇰🇭🇰🇭🇰🇭🇰🇭🇰🇭🇰🇭🇰🇭🇰🇭🇰🇭🇰🇭🇰🇭
褐色の大地や遺跡群だけが
カンボジアの魅力ではありません。
いま、カンボジアがおもしろい!
そんな記事のご紹介です
🇰🇭🇰🇭🇰🇭🇰🇭🇰🇭🇰🇭🇰🇭🇰🇭🇰🇭🇰🇭🇰🇭🇰🇭