インドのゴミ問題 パッケージの「神さま」にあるモノを加えたら・・・一気に解決!?
人口およそ12.5億人のインド。国民の約8割がヒンドゥー教徒(外務省調べ)という信仰心の厚いこの国で、あるゴミの始末をめぐって人々が悩んでいた。日用品のパッケージに描かれたヒンドゥーの神々。捨てたくても捨てられない…。
このジレンマに、革新的なアイデアを提案した企業が。彼らの製品はゴミを出さないばかりか、新たな生命が生まれるという。
「神さまは捨てられない…」
厚い信仰心ゆえのゴミ問題
敬虔なヒンドゥー教徒が多いインドでは、あらゆる日用生活品のパッケージに、彼らの信じる「神さま」が描かれている。ヒンドゥーの教えに従えば、神々の数は約3億3,000万。その種類は実に多様だ。
「神さまがプリントされているだけで、売れ行きだって大きく違うんだ」
露天商のこの言葉を聞くだけでも、どれだけ信仰が人々の生活の中に深く根ざしているかは、想像に難くない。商品を売る側もヒンドゥー教徒なら、買う側もまたしかり。
本来、消費者からすれば、必要なのは商品の中身であってパッケージではない。それでも、信仰の厚い人からすれば、神々が描かれた包装紙を「むげに捨てることなんてできない…」ということになる。
ある人は街路樹の下に不要となった包装紙を置く。“ポイ捨て”という発想ではなく、そっとそこに置いていく、というのが正しいのかもしれない。
ほかにも、橋の上から川の水の中へと落とす人。彼らは、わざわざこの場所にパッケージを捨てにやってくる。
「これは、いわば儀式みたいなものだよ。じゃあどうやって、神さまをゴミ箱に捨てることができるっていうんだい?」
ゴミを川へ流しにきた老夫は、じっと手を合わせて川下へと向かう包装紙を見送った。
たとえ尊い神々が描かれていようとも、大量に放置され、川に流されていく包装紙はやはりゴミ。ここに、消費者たちのジレンマが生まれていた。
捨てさせないアイデア。再利用のカギは「生まれ変わり」
カンプールに拠点を置くスタートアップ企業「Helpusgreen」が、社会問題化するインドのゴミ問題と、この“捨てるに捨てれない”包装紙に対して、革新的なソリューションを図った製品を開発した。インド家庭で頻繁に使用されるお香。パッケージには、もちろん神さまが描かれている。だが、彼らのお香「YAGYA」はゴミにならずに「花」になる。
使い終わった後のパッケージをそのまま土に埋めると花が咲く。ゴミを出さないばかりか、新たな生命を生み出すのだ。
100%土に還るYAGYAの包装紙には、ホーリーバジルの種が埋め込まれている。インク塗料も野菜から抽出した顔料を使用する徹底ぶり。
要らなくなった包装紙は、丸めて土の中に埋め水をやれば、やがて芽が出て花を咲かせる。
さらに、パッケージのQRコードを読み取り、咲いた花を写真に撮り専用サイトにアップすることで、次回購入時、製品が割引になるポイント付きだ。
人々の信仰心を尊重しつつ、ゴミ問題の解決に新たな一手を示したこのお香。小さな一歩が、やがてインド家庭の軒先にたくさんの花を咲かせるかもしれない。