環境と調和する未来の街づくり「グリーンビルディング」に注目
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毎日のように報道される異常気象、じわじわと値上がりする光熱費……。私たちはいま、地球環境と経済の両面で大きな転換期を迎えている。
世界のエネルギー使用量、資源消費量、温室効果ガス排出量において、建築物・建設セクターは高い割合を占めている。地球全体の環境政策にとって、この分野での取り組みは待ったなしのようだ。では、具体的にどんな取り組みが有効なのか?それを実現するひとつつのカギが「グリーンビルディング」というキーワードだ。
地球温暖化ストップへ!
グリーンビルディングという選択
「建築」と聞いて何を思い浮かべるだろう。高層ビルが立ち並ぶ都会の風景?それとも、歴史を感じる伝統的な建造物? 私たちの生活に欠かせない建築物は、同時に地球環境にも大きな影響を与えている。国連環境計画の報告書によると、世界のエネルギー消費の約3分の1、温室効果ガス排出量の約40%は、建築物が占めているとされている。資源を大量に消費しCO2を排出し続ける建築は、地球温暖化を加速させる要因のひとつとなってしまっている。
この状況を打破するための希望となるのが「グリーンビルディング」。太陽光発電や地熱エネルギーなどの再生可能エネルギーの利用、雨水や中水利用による水資源の節約、高断熱化による空調効率の向上など、さまざまな技術や工夫で環境負荷の大幅な削減が可能な建築物として、近年注目を集めている。
グリーンビルディングってどんな建物?
グリーンビルディングという言葉からは、緑に覆われた屋上庭園や太陽光パネルがずらりと並ぶ近未来的な建物を想像するかもしれない。もちろん、それもグリーンビルディングのひとつの形。しかし、グリーンビルディングはもっと身近な存在になり得る。オフィスビル、商業施設、学校、病院など、あらゆる建築物がグリーンビルディングの考え方を取り入れることで、環境に優しくそして人にとって快適な空間に生まれ変わる。
たとえば、自然光を最大限に活用した設計や、自然換気を促進する工夫によって、照明や空調の使用量の削減が可能となる。断熱性能を高めることで、冬は暖かく夏は涼しい室内環境を実現し、エネルギー消費を抑えることも可能だ。また、リサイクル素材や地域産材の活用は環境負荷低減だけでなく、地域経済の活性化にも貢献する。このようにグリーンビルディングは地球環境だけでなく、私たちの暮らしを豊かにする可能性を秘めていると言えるだろう。
世界のグリーンビルディング最新事例
サステナビリティ×デザインの融合
世界では、環境意識の高まりとともに、従来の概念を覆すような斬新なグリーンビルディングが次々と誕生している。デザイン性と機能性を両立させた建築物は、私たちの心を躍らせ、未来への希望を与えてくれる。
注目すべき事例のひとつが、シンガポールの「スマートビルディング」だ。
高層ビルが立ち並ぶ都市国家シンガポールでは、建物のエネルギー消費量は深刻な課題となっている。そこで導入されたのが、センサーやAIなどを駆使してエネルギー消費量や室内環境を最適化するスマートビルディング。最新のテクノロジーを駆使することで、省エネルギー化を実現するだけでなく、居住者の快適性や生産性向上にも貢献している。「スマートネーション」を掲げるシンガポールは、グリーンビルディングにおいても世界をリードする存在と言えるだろう。
いっぽう、北欧デンマークの首都コペンハーゲンでは、海上コンテナを再利用した学生寮「Urban Rigger」が話題を呼んでいる。船の上に設置されたコンテナは、まるでSF映画から飛び出してきたような近未来的なデザイン。しかし、その見た目だけでなく、環境性能にも優れている。太陽光発電や雨水利用システムを採用し、エネルギーと水資源の効率的な利用を実現。限られた土地を有効活用しながら、持続可能な都市開発のモデルケースとしても注目されている。
日本のグリーンビルディング
2050年、私たちの街はどう変わる?
日本も、2050年カーボンニュートラル実現に向けて、グリーンビルディングの普及促進に力を入れている。政府は、省エネ基準の強化やグリーンビルディング認証制度「CASBEE」の普及など、さまざまな政策を推進。企業もESG投資の拡大や環境配慮型製品の開発などを通して、持続可能な社会の実現に向けて積極的に取り組んでいる。
2021年4月に改正された「建築物省エネ法」では、新築される建築物の省エネ基準が強化された。これは、エネルギー消費量削減への意識を高め、グリーンビルディングの普及を促進するための重要な一歩だったと言えるのではないか。また、CASBEEは、建築物の環境性能を総合的に評価する認証制度で、取得することで建物の価値向上や企業イメージの向上に繋がる。
未来の日本の街並みは、グリーンビルディングによって大きく変わるだろう。今以上に太陽光発電パネルが設置された住宅やオフィスビルが立ち並び、緑豊かな屋上庭園が人々の憩いの場となる。エネルギー効率の高いスマートビルディングは、快適な居住空間を提供しながら地球環境にも配慮する、さらに革新的で持続可能な建築が登場するに違いない。
グリーンビルディングは、単なる環境問題への対策ではない。それは、私たち人間の未来に対する希望であり、より良い社会を創造するための力強いツールと言える。