78億分の1の奇跡。「顔」の遺伝子がつなぐ、もう一人の自分
自分と顔立ちが似ている人が、世界には3人存在すると言われています。なぜ赤の他人であるのに顔が似ることがあるのか、疑問に思ったことはありませんか?
最新の遺伝子研究によると、他人同士でも顔立ちが似ている場合、特定の遺伝子構造に共通点があるというのです。顔認識技術を用いた驚きの研究結果から、私たち自身の未来に繋がる可能性を探ってみましょう。
「そっくりさん」現象は
奇跡の一致にあらず?
「ナショナルジオグラフィック日本版」の記事によると、スペインの「ホセ・カレーラス白血病研究所」が、顔立ちの類似性と遺伝子の関係について興味深い研究結果を発表しました。
研究チームは、カナダの写真家フランソワ・ブルネル氏が長年撮影してきた『他人の空似』の人々の写真に着目。1999年から続く膨大な写真シリーズの中から、とくに顔立ちが酷似しているペアを選び出し、彼らの遺伝子情報を詳細に分析したのです。
その結果、驚くべきことに、血縁関係がないにも関わらず、顔の骨格や肌の色、さらには水分保持に関わる遺伝子配列に共通点が見られたというのです。つまり、私たちの顔立ちは偶然ではなく、遺伝子という設計図に基づいてある程度プログラムされていると言えるかもしれません。
顔は個人情報の宝庫
進化する顔認識技術がもたらす光と影
この研究をさらに興味深いものにしているのが、顔認識アルゴリズムの活用です。研究チームは膨大な写真データの中から、「そっくりさん」を客観的に選定するために、空港や警察機関でも使用されている顔認証システムと同じアルゴリズムを採用しました。
近年、顔認識技術は目覚ましい進化を遂げており、私たちの生活にも急速に浸透しつつあります。スマートフォンのロック解除やキャッシュレス決済など、利便性を向上させるいっぽうで、プライバシーやセキュリティに関する懸念も浮上しています。
たとえば、2022年に発表された「米国国立標準技術研究所(NIST)」の調査によると、顔認識システムの中には、特定の人種や年齢層において、誤認識率が10~100倍も高くなるものが存在することが明らかになりました。もし、精度が十分でない顔認識技術が、犯罪捜査やセキュリティチェックなどに安易に利用されてしまうと、重大な人権侵害や社会問題に発展する可能性も否定できません。
遺伝子操作で「理想の顔」を手に入れる?
遺伝子研究と顔認識技術の進歩は、SF映画で描かれてきたような未来を現実のものとするかもしれません。
たとえば、自分の遺伝子情報に基づいて、将来的な容姿の変化を予測したり、美容医療に役立てたりするサービスが登場する可能性があります。さらに、倫理的な問題や安全性の課題は山積していますが、遺伝子編集技術を用いて、生まれ持った顔立ちを根本から変えてしまう未来も、決して絵空事とは言えないでしょう。
しかし、私たちは「美しさ」を追い求めるあまり、人間の多様性や個性を軽視してしまうような未来を望んでいるのでしょうか? 遺伝子という神秘のベールに包まれた「顔」をテーマに、私たち自身の価値観や倫理観が問われているのかもしれません。
👀 GenZ's Eye 👀
顔も情報化することができる時代を生きる私たちにとって、“顔”はただの識別記号になってしまうのか。遺伝子を使って何でも情報化することの裏には、アイデンティティの記号化が隠されているようにも感じる。