映画業界で巻き起こる「対比鑑賞」戦略。今年を象徴するのは「Glicked(グリックト)」

2023年夏、世界中を熱狂の渦に巻き込んだ「Barbenheimer(バーベンハイマー)」現象。映画館でまったく異なる2作品を連続鑑賞するスタイルは、映画業界に新たな可能性を示した。

そして今、その後継として「Glicked(グリックト)」という言葉が誕生し、注目を集めている。

ハリウッドが仕掛ける「対比鑑賞」戦略

「NBC News」によると、グリックトとは今年11月に公開されたミュージカル映画『Wicked(邦題「ウィキッド ふたりの魔女」)』と歴史スペクタクル『Gladiator II(邦題「グラディエーターII 英雄を呼ぶ声」)』を組み合わせた造語

前者は『オズの魔法使い』のウィキッド・ウィッチを主人公にした、歌と踊りが魅力のファンタジーミュージカル。対する後者は、剣と砂埃が舞う古代ローマを舞台にした、男たちの熱き戦いを描く作品だ。

去年流行した「バーベンハイマー」に引き続き、なぜハリウッドはここまで「対比」にこだわるのか?それは、まったく異なる世界観を持つ2作品を連続鑑賞することで生まれる、これまでにないエンタメ体験を提供しようという戦略がそこにあるように思えてしまう。

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「Glicked」が誘う、非日常への没入

「Fandango」が実施した2024年ホリデーシーズンにもっとも期待される映画に関する調査では、回答者の約65%が同作品の2本立て鑑賞に興味を示したという。実際に劇場に足を運んだ観客からは、「まるで別世界にタイムトリップしたみたい!」「感情がジェットコースターのように揺さぶられた」といった声が上がっている。

映画館という非日常空間で、異なる世界観を連続体験することで、観客はより深い感動や興奮を得られる。これが「対比鑑賞」の最大の魅力と言えるだろう。

映画館体験を進化させる「イベント化」の波

興行成績データを追跡する企業「Comscore」のシニアメディアアナリストであるポール・ダーガラベディアン氏は、昨今の対比鑑賞ブームを「ソーシャルメディアでの話題作りにつながり、観客動員に大きく貢献する可能性を秘めている」と分析する。

事実、その効果ゆえか、公開初週末の北米興行収入で『Wicked』は約1億1400万ドル、『Gladiator II』は約5550万ドルを記録した。バーベンハイマーの成功体験を踏まえても、今後もハリウッドは対比鑑賞を軸とした、映画館ならではのイベントを仕掛けてくるだろう。

“映画館離れ”が叫ばれる昨今、対比鑑賞は映画の楽しみ方を進化させ、観客を再び劇場へ呼び戻す起爆剤となるかもしれない。

👀GenZ's Eye👀

ホリデーシーズンということもあり、鑑賞後の感想交換や議論がより活発になることでしょう。ふかふかの座席のおかげで快適に過ごせるうえ、整った映画館の環境だからこそ可能となる作品の比較鑑賞も楽しめそうです。

Top image: © iStock.com/matt_benoit
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