米メディアが評した、「史上最悪のキットカット」

世界中で愛される「キットカット(KitKat)」。その魅力のひとつが、地域や季節ごとに登場する多彩なフレーバー展開だ。ネスレ日本の公式サイトによれば、日本国内だけでも過去に400種類以上ものフレーバーが生まれてきたという。定番の味から、あっと驚くような組み合わせまで、その探究心は留まるところを知らない。

しかし、この尽きることのないフレーバーの追求が、時に予想だにしない評価と議論を巻き起こすことがある。アメリカの食専門メディア「Tasting Table」が先日配信した記事は、その名も『The Worst Kit Kat Candy Flavor, According To Our Taste Test(私たちの味覚テストによる、最悪のキットカットのフレーバー)』。

この衝撃的なタイトルが、今、静かな波紋を広げている。果たして、彼らが「最悪」と断じたフレーバーとは何だったのか。そして、この評価から私たちは何を読み解くべきなのだろうか。

全23種を徹底比較!
米メディアが酷評したキットカット
その意外な正体

「Tasting Table」が行った味覚テストでは、アメリカ市場で手に入る23種類のキットカットが俎上に載せられた。クラシックな定番フレーバーから、目新しい限定品まで、そのラインナップは多岐にわたる。同記事によれば、審査員たちは真剣な面持ちでひとつひとつを吟味し、「素晴らしいヒット作」もあれば、「見事な失敗作」もあったと率直に報告している。

そして、数あるフレーバーの中で、もっとも不名誉な「ワースト」の烙印を押されてしまったのは、「デュオ ストロベリー&ダークチョコレート」。同誌は、その選定理由を、強すぎる人工的なストロベリーの香りと期待外れの食感だと説明。「まるで薬棚にあるイチゴ味の咳止めシロップを想起させる味わいだった」と、かなり辛辣なコメントを残している。

Marcus Smith / Instagram

いっぽうで興味深いのは、これほどまでに多様なフレーバーが評価対象となった中で、もっとも高い評価を獲得したのは、なんと「Classic(オリジナルのミルクチョコレート)」だったという事実。

ちなみに、23種のランキングはこちらに詳しく。

長年にわたり世界中で親しまれてきた、あの赤色のパッケージの定番品。結局のところ、多くの人にとって、もっとも信頼できる味はそこに行き着くということなのだろうか。

同記事はまた、日本市場で2000年以降、数百種類ものキットカットが開発され、その斬新な試みの一部がアメリカ市場にも影響を与えていると指摘しており、フレーバーの多様化が進むグローバルな背景にも光を当てている。

「不味い」は誰の舌が決める?
国境を越えるキットカットが映す“味覚の壁”

もちろん、特定のメディアが「最悪」というレッテルを貼ったからといって、それが絶対的な真実となるわけではない。言わずもがな、味覚とは、きわめて個人的な感覚であり、育った環境や文化、慣れ親しんだ食のスタイルによって、その評価は大きく揺れ動くもの。

たとえば、今回「ワースト」とされたストロベリーとダークチョコレートの組み合わせも、ここ日本では人気の高い組み合わせの一つであり、もし日本のテイスターが評価すれば、まったく異なる結果が出た可能性も否定できない。

余談だが、日本におけるキットカットの成功物語には、「きっと勝つ」という縁起の良いフレーズが受験生のお守りとして定着した、というユニークな文化的背景が存在する。さらに、地域限定フレーバーや季節ごとの限定商品は、単なる菓子という領域を超え、その土地の魅力や旬の味わいを伝えるメッセンジャーとしての役割さえ担っている。こうした日本特有の文脈こそが、キットカットというブランドの奥深さを形作る、なくてはならないピースなのも興味深い。

数えきれないほどの新フレーバーが生まれ、そして消えていく。そんな激しい競争の中で、結局オリジナルが最高の座についたという事実は、革新性を追い求める商品開発の困難さと、定番商品が持つ揺るぎない魅力の強さを、あらためて示しているとも言える。けれど、これは決して新しい挑戦が無価値だという意味ではなく、玉石混淆のフレーバー群の中から「自分にとっての特別な何か」を探し出す冒険の楽しさを、暗に語りかけているようにも思える。

評価に惑わされず
「自分だけの好き」を

食品に関するレビュー記事は、私たちの購買行動や選択に、意識的にも無意識的にも影響を与える力を持つ。「最悪」や「最高」といった強い言葉は、その是非はともかく、人々の注目を集めやすいのも、また事実。

しかし、もっとも大切なのは、そうした外部の情報を絶対視せず、あくまで多様な意見の一つとして受け止め、最終的には自分自身の五感で判断する好奇心と主体性ではないだろうか。

「Tasting Table」が投じた「最悪のキットカット」という一石は、私たちに食を探求する上での原点、すなわち「自ら味わい、自ら判断する」ことの大切さを再認識させてくれる。無数に広がる選択肢の海の中から、自分だけの宝物のような「お気に入り」を発見するプロセス。それは、時に期待外れという結果を伴うかもしれないが、それ以上に、まだ見ぬ味との出会いや、新たな発見がもたらす刺激、かも。

多様なフレーバーがあふれ、情報が錯綜する現代だからこそ、既存の評価や評判に右往左往するのではなく、自らの舌を信じ、未知なる味覚の世界へと勇気を持って一歩踏み出してみる。その先には、きっと、あなただけの「最高においしい!」が待っているに違いない。

Top image: © iStock.com / Marjan Laznik
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