スマホの代わりにキットカット。新CMのアイデアが絶賛されカンヌライオンズ受賞

休憩時間、ついスマートフォンに手が伸びる。バスを待つ間も、友人と話している最中でさえも。そんな現代の当たり前の光景に、誰もが知るあのお菓子がユーモアあふれる方法で切り込んだ。

KitKatの新しい屋外広告。言葉を一切使わないその一枚の絵が、世界最高峰の広告賞を制し、大きな話題を呼んでいる。

スマホがキットカットに変わるだけ。シンプルかつインパクト絶大な視覚表現

その広告キャンペーン『Phone Break』のアイデアは、驚くほどシンプルだ。

人々が日常のふとした瞬間にスマートフォンを眺めている、その手の中にあるスマートフォンを、一本のキットカットに置き換えただけ。

バス停で、カフェで、人々が手にしている黒い長方形は、スマホではなくチョコレート菓子。

この単純な置き換えによって、現代人がいかに無意識にスクリーンに没頭しているかを、見る人に優しく、そして的確に気づかせる。

あえて有名な「Have a Break」のスローガンを使わないことで、かえってその言葉の持つ本当の意味を考えさせる、見事な仕掛けだ。

© VML Czechia/YouTube

「休憩」の意味を現代に問い直す

KitKatが「休憩のお供」というメッセージを打ち出して、およそ70年。しかし、その「休憩」の意味合いは大きく変わった。

かつてのリラックスタイムは、今やスクリーンを眺める時間とほぼ同義。この広告は、そんな時代の変化を鋭く、そして温かい視点で捉え直す。

制作を担当した広告代理店VML Czechiaは、このアイデアをビルボードや駅のポスターといった屋外広告だけで展開。デジタル広告全盛の時代に、あえてアナログな手法で勝負し、世界的な注目を集めた。

言葉を超え、チェコに史上初の栄冠

この『Phone Break』は、2025年のカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルで、アウトドア部門のグランプリに輝いた。

チェコ共和国にとっては、これが史上初のカンヌグランプリ受賞という歴史的な快挙。

審査委員長も「現代社会を映す鏡であり、アウトドア広告の最高傑作」と絶賛したという。

国境や言語の壁を軽々と越え、誰もが共感できる一枚のビジュアル。その普遍的な発明こそが、世界に評価された理由だろう。

Top image: © iStock.com / Ekaterina79
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。