いまZ世代が重視するのは「コスパ」「タイパ」よりも「プレパ」だった

あなたは「安定した人生」と聞いて、どんな姿を想像しますか?
大企業に入ること? 結婚して家庭を持つこと? それとも持ち家を手に入れること?──かつてはそんな“王道の安定”が思い浮かんだかもしれません。

しかし今の若者にとって、「安定」という言葉は、どうやらそのイメージとは大きく異なるようです。

The Third Strategy株式会社が先日公開した『最後のZ世代白書』。このレポートからは、安定を追い求めながらも、時代の変化に合わせて“安定そのもの”の意味を捉え直そうとする姿がみえてきました。

Z世代にとっての安定=「詰まないこと」

白書で主に紹介されているのは、Z世代一人ひとりのリアルな声。彼らは、自分の人生設計についてこんなふうに語ります。

18歳:学生

歌手になりたい。学生のうちに花が咲かなかったら、音楽関係の会社を作るために経営も勉強してる。

22歳:会社員

安定した収入は絶対必要。学生時代から続けていたSNS運用の仕事をしながら、普通に就職もする。

27歳:会社員・インフルエンサー

会社員とインフルエンサーを両立しているのは「安定株と変動株どっちも持ってる。」みたいなテンション。

一つの進路に向かってまっすぐ突き進むのではなく、夢を追いながらも次の選択肢を用意したり、二刀流の働き方をしたり──。彼らの考え方には、「いざという時の別の道を持っておきたい」という共通の発想がみえてきます。

一見すると、根気がない、見切りが早い、逃げ腰……そんな風にも映るかもしれませんが、彼らが実際に重視しているのは「常に動ける余白を残すこと」。言い換えれば、どんな状況になっても“詰まない”ようにしておくことなのです。

ここでいう“詰み”とは、将来の選択肢が閉ざされ、自分で意思決定できなくなる状態を指します。つまり、「ひとつの会社にしがみつくしかない」「進路が一択しかない」──そんな状況こそが、Z世代から見れば一番“不安定”に感じられるのかもしれません。

「コスパ」「タイパ」の次は「プレパ」に注目!

こうした価値観を象徴するのが、白書で紹介されている「プレパ(Preparation-performance)」というキーワードです。

「コスパ」「タイパ」に続く新たな“〜パ”概念として、いかに効率的に未来への備えを整えておけるかが彼らの行動原理になりつつある、といいます。

たとえば「ホワイト企業は安定だけど、安定に対するコスパが悪い」という強烈な声も。驚くかもしれませんが、この考えに共感するZ世代前半層(15〜22歳)はX世代の1.6倍にのぼるそう。

ホワイト企業に入れば安定は得られるかもしれない。けれど、そのための準備コストは膨大です。長い受験勉強に就職活動、さまざまな努力を経てようやく得られる安定なら、別の安定を探した方がよほど効率的。
さらにいえば、今の時代においてホワイト企業自体が本当に「安定」なのか、その前提すら疑わしいかもしれません。

つまり、Z世代にとって“安定”とは無条件にありがたいものではない。むしろ「効率が悪い安定」なら、わざわざそれを目指す必要はない──そんな割り切った姿勢すら感じられます。

「コト消費」よりも「コト投資」

The Third Strategy『最後のZ世代白書 -新安定主義』のデータをもとにグラフ作成

そんな彼らの価値観の変化は、消費スタイルにも表れています。

Z世代は、旅行や車、美味しい食事やお酒といった「今を楽しむ消費」よりも、貯金や美容、語学や資格勉強、時間を節約するサービスなど「未来の自分のための出費」を優先する傾向にあるそう。

「夜行バスより高くても新幹線を選び、その浮いた時間を勉強に使う」
「モノよりやりたいことに回したい。経験はなくならない」

これらの声からは、“楽しみ”さえも将来のために最適化しようとする姿勢が垣間見えます。Z世代にとって消費は、刹那的な「コト消費」ではなく、未来を広げる「コト投資」

若いうちから未来の可能性を広げ、選択肢を確保しておくことにこそ、価値を見出しているのかもしれません。

逃げ腰じゃない。“逃げ道デザイン”の合理性

言い換えればZ世代は、常に“先を読むこと”を生活のあらゆる場面で実践しているのです。

世の中に対する不安や混乱のなかで、どちらに転んでも“詰まない"ように、選択を最適化しながら動く。白書ではZ世代ならではのこうした姿勢を「新・安定主義」と定義しています。

Z世代は、現実をよく見ています。将来が不確実であることも、理想どおりに生きられないかもしれないことも、知っています。だからこそ、「どれだけの選択肢や逃げ道を用意しておけるか」に注目しているのです。

こうしてみると「逃げ道を準備する」という発想は、臆病ではなく合理的な生存戦略だとわかります。
むしろ、多様なシナリオを描き、そのための布石を早いうちから用意しておくという、Z世代らしい主体的で前向きなアプローチなのではないでしょうか。

不確実な社会を前にして、最も安定しているのは、揺るがない場所に留まる人ではなく、変化に応じて選び直し続けられる人──。彼らの「新・安定主義」は、これからの時代における柔軟でしたたかな生き方の指針ともいえるのかもしれません。

Reference: 最後のZ世代白書 -新安定主義- ©The Third Strategy

 

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