1万人が警鐘を鳴らす睡眠の実態、若年層に広がる「社会的時差ボケ」とは

現代社会において、人々の睡眠は多様な要因に影響を受けている。西川株式会社の「日本睡眠科学研究所」が1万人を対象に実施した『nishikawa 睡眠白書 2025』によると、特に子どもや若年層の睡眠が「黄色信号」の状態にあることが明らかになった。

本調査では、ライフステージ別、都道府県別、勤務形態別など多角的な視点から睡眠の実態を深掘りしており、平日の睡眠不足と休日の寝だめによって生じる「ソーシャルジェットラグ(社会的時差ボケ)」に焦点を当てた調査も行われている。

<調査方法>    

調査概要: 日本人の睡眠に関する意識・満足度調査               

調査手法: WEBパネル調査
調査時期: 2025年7月4日(金)~7月5日(土)

調査対象者: 全国の18歳~79歳の男女

回収サンプル数:

基本調査対象10,000人 ※居住地別・性年代別人口構成比に合わせて聴取
本調査対象 3,000人 ※基本調査1万人のうち、性年代別人口構成比に合わせて聴取
調査会社: 株式会社クロス・マーケティング

若年層に顕著な「社会的時差ボケ」の懸念

今回の調査で特に注目されるのは、若年層(10代〜20代)における「ソーシャルジェットラグ」の深刻化である。

「ソーシャルジェットラグ」とは、平日の社会的な時間と、休日や自由な時間に体が求める生物学的な時間との間に生じるズレを指す。このズレが体内時計を乱し、健康への悪影響が懸念されるものだ。

若年層の「ソーシャルジェットラグ」は顕著に大きく、10代の平均で2時間半、20代でも2時間のズレが確認された。就学児においては、学年が上がるにつれてこの傾向が増大し、高校生では2時間ものズレがみられるという。

小学校低学年の30分から、中学生で約1時間半、高校生で2時間へと急増するこの現象は、思春期特有の体内時計の夜型化や、朝の部活動、夜間の塾といった社会的なスケジュールの影響が示唆されている。

また、睡眠満足度が低い人ほど「ソーシャルジェットラグ」が大きくなる傾向も明らかになり、平日の睡眠不足を休日の寝だめで解消しようとすることが体内時計の乱れにつながっていると推察される。

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子どもたちの睡眠不足とライフステージごとの実態

厚生労働省が推奨する「健康づくりの睡眠ガイド2023」の適正な睡眠時間の目安と実際の調査結果を比較すると、子どもたちの睡眠不足が顕著であることが判明した。

小・中・高校生の8割以上が平日に適正な睡眠時間を確保できておらず、特に高校生は約93%と最も高い割合を示した。休日も高い割合で睡眠不足が続いており、これは成長期にある子どもたちの身体的・精神的発達に長期的な悪影響を与える可能性を示唆している。

一方で、高齢者では平日約30%、成人では平日約26%が適正な睡眠時間をとれていないという結果だった。

都道府県別の睡眠時間ランキングでは、平日の平均睡眠時間が最も長いのは「岩手県」の7時間40分、最も短いのは「福井県」の6時間35分だった。

休日は「熊本県」が8時間11分でトップ、最下位は「高知県」の7時間9分である。休日と平日の睡眠時間のギャップは全国平均でおよそ30分程度だが、「秋田県」では44.6分差と最も大きかったようだ。主要都市の東京都、大阪府、愛知県は7時間台の中でも下位に位置している。

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ビジネスパーソンの睡眠と経済損失

睡眠不足は個人の健康問題にとどまらず、社会全体にも影響を及ぼす。睡眠不足による日本の経済損失は年間約20兆円と言われている。

ビジネスパーソンの睡眠実態を勤務形態別に比較すると、「フレックスタイム制」の人の睡眠の質満足度が最下位となった。

勤務時間管理の自由度の高さが、かえって生活リズムの乱れを招いている可能性が示唆されている。「ソーシャルジェットラグ」もフレックスタイム制の人が2時間のズレと一番大きい結果だった。

睡眠不足による仕事のミス経験については、全体の43.1%が「ある」と回答した。具体的には「やるべきことを忘れる」「入力ミスや書き間違い」「作業や操作ミス」などが上位を占めている。特にフレックスタイム制や裁量労働制の人は、睡眠不足によるミス経験率が高い傾向が見られた。

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睡眠の質向上のための対策と期待

調査では、睡眠の質向上のために実際に行って改善効果があったアイテムとして「枕」がトップに挙げられた。

次いで「マットレス」が続き、乳酸菌やGABAなどの「機能性ドリンク」も上位にランクインした。今後購入・取り入れたいアイテムとしては「オーダーメイド枕」が1位となり、「リカバリーパジャマ」への期待も高いことが明らかになっている。

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