Z世代リーダーは、どこで育つのか。品川で始まる「Z ERA FES」という実験

新産業市場の創出や社会課題の解決において、Z世代の存在感は年々高まっている。そのいっぽうで、彼ら自身が直面するキャリア形成やリーダーシップの課題は、いまだ明確な解を持たない。

そうした状況のなか、品川を舞台に開催される大規模カンファレンス「Z ERA FES 2026」は、Z世代と社会をつなぐ“実験場”として注目を集めている。

「Z ERA FES 2026」が示す
Z世代リーダー像の現在地

©株式会社Neeew Local

株式会社Neeew Localが主催する「Z ERA FES(ゼラフェス)2026」は、Z世代を中心としたリーダーカンファレンスだ。2026年3月13日(金)・14日(土)の2日間、セガサミーホールディングスが運営する「トンネル東京」(品川区西品川)を会場に開催される。

本イベントの特徴は、単なる成功事例の共有にとどまらず、Z世代リーダーが直面している構造的課題そのものを議論の俎上に載せる点にある。新産業市場への参入、政治・経済との向き合い方、ミクロとマクロを横断した意思決定など、テーマは多岐にわたる。

2025年開催時には、2日間で12セッション、登壇者54名という規模で実施され、登壇者同士のYouTubeコラボレーションや事業連携といった具体的な成果も生まれた。Z ERA FESは、議論を“場限り”で終わらせず、その後の実践につなげてきた点で、他のカンファレンスと一線を画している。

2026年はさらに踏み込み、パネルディスカッションに加えてディベート形式のセッションや参加者からの質問を軸にした「お悩み相談」を新たに導入予定。これは、情報を受け取る側と発信する側を分けない設計であり、双方向性を前提とした構造になっている。

Z世代リーダー論の変化と
カンファレンスが担う役割

©株式会社Neeew Local

近年の複数の民間調査(2023〜2024年)によると、Z世代の若手社員が「理想の上司像」として重視する要素は、精神論や根性論ではなく、「困ったときに具体的なサポートをしてくれること」だとされている。割合としては約半数に達するという報告も。

また、Z世代のキャリア観に関する調査では、「将来なりたい自分像を明確に描けている」と回答した層は2割台にとどまるとされており、自己理解や目標設定に課題を抱える実態も浮かび上がっている。

こうしたデータを踏まえると、「Z ERA FES 2026」で扱われるテーマは、単なるスキルアップや起業ノウハウに限定されない。能力・キャリア・人間性を含めた“立体的なリーダーシップ”をどう構築するかという問いが、セッション全体を貫く軸になると読み取れる。

特に2026年のプログラムでは、「若手リーダーによる令和型マネジメント論」「AI活用に関する実践的な相談型セッション」「Z世代首長が集う自治体セッション」など、Z ERA FESならではの切り口が明確に打ち出されている点も特徴的だ。

品川という「場所性」と
スタートアップ・エコシステムの接点

Z ERA FESが継続的に品川で開催されている点も見逃せない。主催者は、開催拠点である品川区が目指すスタートアップエコシステム形成への貢献を、イベントの中長期的な目的として掲げている。

日本全体に目を向けると、経済産業省の公表資料では、国内スタートアップ数は2021年比で増加傾向にあり、2023年時点で約22,000社規模に達したとされている。また、令和4年度第2次補正予算では、スタートアップ支援関連として過去最大規模となる約1兆円が計上された。

こうした官主導の動きに対し、Z ERA FESは地域を起点に、人材と思想をつなぐ“民間側のハブ”として機能する設計を取っている。東京圏というヒト・カネ・知が集中する環境の中で、Z世代リーダーにフォーカスした場を定点的に設けることは、エコシステムの次世代化を促す一つのアプローチといえるだろう。

無料開催に見る「マス化」と
コミュニティ形成の設計

2026年のZ ERA FESは、3回目の開催にして初の無料開催(2日間出入り自由)となる。これも、より多くの層にイベントの価値を届けるための判断だろう。

Z世代のキャリア意識に関する各種調査では、安定志向やプライベート重視といった価値観と、長期的な成長意欲が併存していることが指摘されている。無料化は、こうした層にとって参加障壁を下げると同時に、「まず触れてみる」機会を提供する仕組みとして機能する。

さらに注目すべきは、本開催に先立って行われるサテライトイベント群だ。Peatixでのオンライン・オフラインイベントや、品川区内での体験型企画「Z湯」など、日常に近い文脈での接点が複数用意されている。これにより、Z ERA FESは単発のイベントではなく、段階的に関与度を深めていくコミュニティ設計を採っていることが分かる。

Z世代リーダーの「場」を
社会の資産へ

Z ERA FES 2026は、情報提供型カンファレンスというよりも、次世代リーダーが試行錯誤できる社会的インフラに近い存在。議論し、出会い、実践につなげる。その循環を地域から立ち上げようとする試みは、日本のスタートアップ・エコシステムにおいても示唆的である。

品川という都市の一角から、Z世代の問いがどこまで社会に波及していくのか。その動向は、次世代の働き方やリーダー像を考える上で、一つの重要な観測点となりそうだ。

『Z ERA FES 公式SNSアカウント』

【X「Z ERA FES 2026|3/13-14@大崎】
https://x.com/zerafes_jp
【Instagram「Z ERA FES 2026|3/13-14@大崎」】
 https://www.instagram.com/zerafes_jp

Top image: © 株式会社Neeew Local
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。