Z世代の間で広がる『神経系調節』ブーム。個人のセルフケアか、社会構造の問題か

緊張が続く現代社会において、自分の「身体の反応」を整えようとする人が増えている。

SNSでは“nervous system regulation(神経系調節)”という言葉が広まり、氷風呂や瞑想、呼吸法、身体を軽く刺激する動きなどが共有されてきた。

これらは気分転換の流行ではなく、長く続く緊張状態から抜け出そうとする試みとして広がっている。

“nervous system regulation(神経系調節)”とは何か

神経系は脳と身体を結び、呼吸、消化、危険への反応などを調整する。

安定しているとき、人は緊張すべき場面では集中し、休める場面では力を抜き、やがて落ち着いた状態へ戻る。しかし、この切り替えがうまく働かない場合、身体は緊張状態のまま固定されやすくなってしまう。

専門的な知識に思えるが、神経系の話題は医療分野だけの話題ではなくなりつつあり、SNSでは焦燥感や不眠、頭痛、消化不良などに対する様々な実践が紹介されているのだ。

たとえば心理療法や薬物治療、マインドフルネス、森林浴、サウナ、冷水浴、音を使ったリラクゼーションなど多岐にわたる。

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根本的な原因は社会側にあるケースが多数。個人ではなく「社会課題」としての認識も重要

セルフケアのトレンド化はポジティブに思えるが、ストレスにおける根本的な原因は社会構造的なものであり、すり替えられるべきではないとの指摘もある。

たとえば、労働環境の悪化や貧困による生活習慣の乱れなど、社会状況が人々の生理的なバランスを乱すケースは多く、本来変えるべきは過度な負担を強いるシステムそのものであるはず。

またエピジェネティクス(後天的遺伝)の研究によれば、蓄積されたストレスは遺伝子を通じて次世代にまで受け継がれるとされている。つまり、個人の努力の範疇を超え、遺伝子レベルで神経系が乱れてしまっている可能性すらあるというのだ。

Dazedによると、心理療法士のAmber Thornton氏は「神経系の調節を考える際には、修正に焦点を当てるのではなく、楽しむというアプローチが必要」と語り、こうした実践を行う際に義務感が伴われるべきではないことを強調している。

効き目を感じられなくなったり、やるべき課題の一つ(=緊張感を生んでしまうもの)に変わったりしてしまったら、専門家の助けを求めるのが賢明だ。

トレンドの加速によって日頃のケアが浸透すると同時に、社会問題としても注目される必要があると言えるだろう。

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