和菓子×サイバーパンク。羊羹を現代人のエネルギーフードに変える「TACT」の挑戦

日本の伝統的な和菓子である羊羹が、まったく新しい姿で世界に打って出ようとしています。千葉県のスタートアップ企業Delta Trading Japan株式会社が発表した新ブランド「TACT」は、羊羹を現代のエネルギー補給食として再定義するという、大胆かつ痛快なプロジェクトです。

©Delta Trading Japan株式会社

「古い和菓子」の正体は携行食だった

羊羹と聞いて、多くの方が思い浮かべるのは、お茶席に添えられた上品な甘味や、贈答品の定番といったイメージではないでしょうか。しかし、少し視点を変えてみると、羊羹には驚くべき機能性が隠れています。

常温で長期保存が可能で、少量でも高いカロリーを摂取でき、片手で食べられる。実はこれ、現代のエナジーバーに求められる条件とほぼ一致しているんです。

戦国時代には兵糧として携行されていたという歴史もあり、「日本最古のサバイバルフード」という表現は、決して大げさではありません。近年、マラソンランナーや登山愛好家の間では、行動食として羊羹を持参する人が増えているという話も耳にします。ジェル状の海外製エナジー食品が主流を占めるなかで、実は足元に最適解があった──そんな再発見の物語が、いま始まろうとしています。

たった4つの原材料という潔さ

同社が最初のプロダクトとして発表した「TACT1(タクトワン)」は、塩羊羹をベースにした一口サイズ(20g)のバー形状。15本入り300gで税抜き1,820円という価格設定です。

注目すべきは、その原材料のシンプルさでしょう。北海道産小豆、てんさい含蜜糖、寒天、そして千葉県山武の天然海塩。構成要素はわずか4種類。グルテンフリー、無添加、ヴィーガン対応と、いわゆる「クリーンラベル」──原材料がシンプルで消費者にとって分かりやすい食品表示──のトレンドにも自然と合致しています。

精製された白砂糖を使わず、てんさい含蜜糖を採用している点も見逃せません。職人仕立ての海塩があずき本来の甘さを引き立てる設計で、運動中でも食べやすいツルっとした食感とクリーンな後味を実現しているとのこと。市販のエナジーバーにありがちな人工的な甘さや添加物への抵抗感を持つ方にとって、これは魅力的な選択肢になりそうです。

サイバーパンクが開く新しい入口

同ブランドが掲げるビジュアルコンセプトは「和菓子×サイバーパンク」。伝統的な和の佇まいに、近未来的なデザイン言語を掛け合わせるという、一見すると矛盾した組み合わせが強烈な個性を生み出しています。

この美学的な戦略は、単なる見た目のインパクトにとどまらない意味を持っているのではないでしょうか。日本文化に馴染みのない海外の若年層にとって、サイバーパンク的なビジュアルは親しみやすい「入口」として機能し得ます。実際、同社がオーストラリアで実施した試食調査では、「小豆は海外で受け入れられにくい」という従来の通説を覆し、多くの参加者から好意的な評価を得たと報告されています。

適切なブランド設計とストーリーテリングがあれば、文化的な壁は想像以上に低くなる。同社はこの結果を、日本文化を現代的な文脈で再編集することの重要性を示すものと位置づけています。

伝統の「再編集」が生む可能性

©Delta Trading Japan株式会社

同社は「The New Classic Japan」をブランドコンセプトに掲げ、日本の伝統文化を現代のライフスタイルや価値観に適応させながら次世代へ継承することを目指しているといいます。現在、TACT1は同社ECサイト「JAPAN HUB」にて日本とオーストラリアの2市場で限定テスト販売中。今後は資金調達を進めつつ、スポーツやフィットネス分野のイベントへの参画を通じて、競技者やコミュニティとの接点を広げていく方針とのことです。

想定される利用シーンは、ランニングや登山、フィットネスといったスポーツ領域から、長時間の学習やデスクワークまで幅広く設定されています。

海外発のプロテインバーやエナジージェルが当たり前のように棚に並ぶ時代に、日本が数百年前から持っていた「答え」を、現代の文法で語り直す。それは単なるノスタルジーではなく、伝統の中に眠る合理性を掘り起こす行為です。羊羹がエナジーバーとして世界の棚に並ぶ未来は、もしかすると私たちが思っているよりずっと近いのかもしれません。

Top image: © Delta Trading Japan株式会社
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