推し活するZ世代の82%がブランドバッグを支持。見栄ではなく「自己充足」のため
コメ兵グループの株式会社K-ブランドオフが、20〜29歳の「推し活を積極的に行う層」386名を対象に実施した調査結果が、なかなか興味深いものでした。ブランド品の導入意向がある人は82.1%。でもその持ち方が、どうやら上の世代とはまるで違うようなのです。

「目立ちたい」はたった15.8%という事実
ブランド品を持つ理由として最も多かった回答は、「現場での自分のモチベーション(気分)を上げるため」で48.4%。一方、「同担の中で差をつけたい・目立ちたい」と答えた人はわずか15.8%でした。約3倍の開きがあります。
この数字を見たとき、正直に言うと少し驚きました。ブランド品といえば、長らく「持っていることを誰かに見せる」ための記号だったはずです。ヴィトンのモノグラムもシャネルのマトラッセも、その存在感は他者の視線を前提に設計されてきた。ところがZ世代の推し活層にとって、ブランドバッグは「他人にどう見られるか」ではなく「推しの前に立つ自分をどう整えるか」のための道具になっている。
言い換えれば、ブランド品が外向きのステータスシンボルから、内向きのセルフケア装備へと意味を変えているということです。推し現場に向かう自分の気持ちを高めるための、いわば「鎧」。誰かに見せつけるためではなく、自分自身を奮い立たせるために身につける——その感覚は、推し活をしていない人にとっても、案外わかる気がしませんか。大事なプレゼンの日にお気に入りの靴を履く、あの感覚と地続きかもしれません。
「持ち歩ける貯金」という合理性


もうひとつ見逃せないのが、ブランド品を「持ち歩ける貯金」「資産」に近い感覚で保有しているという回答が61.7%にのぼったこと。購入時にリセールバリュー(再販価値)を意識する人も61.6%とほぼ同率です。
つまり、感情だけで買っているわけではない。「いざとなれば売れる」という出口を最初から計算に入れたうえで、ブランド品を選んでいるのです。実際、推し活資金——チケット代や遠征費、グッズ代——を捻出するためにブランド品を売却した経験がある、あるいは将来的に売るつもりだと答えた人は66.1%。そしてリユースショップで推しの担当カラーや推しが着用していたブランドアイテムを探したことがある人も、同じく66.1%でした。
この「買う入口」と「売る出口」が同じ割合で存在しているという事実が、とても象徴的です。ブランド品が「一生もの」として棚に飾られるのではなく、推し活という生態系の中を流動する資産として循環している。K-ブランドオフの担当者も「Z世代がブランド品を持たなくなったわけではなく、その意味づけが『自分を支えるため』へと変化している」とコメントしています。
所有の意味が変わるとき、市場も変わる

推し活関連の消費市場は約4.1兆円規模とも推計されています。その巨大な経済圏の中で、ブランド品が「ゴール」ではなく「燃料」として機能し始めているとしたら、ラグジュアリー市場そのものの前提が揺らぎます。
グローバルに見ても、The RealRealやThredUpといった海外のリセールプラットフォームが発表するレポートでは、Z世代がリセール市場の成長を牽引しているというデータが繰り返し示されています。リセールバリューを意識した購買行動は日本だけの現象ではなく、世界的な潮流のひとつです。
ただ、日本のZ世代推し活層に特徴的なのは、その循環の動機が「推しを応援し続けること」に紐づいている点ではないでしょうか。バッグを買い、現場で気分を上げ、次の遠征のために売る。その一連の流れが、推しへの愛情と自分自身のケアを同時に成立させている。
「高いものを持つ」ことの意味が、見栄から自己充足へ、そして流動する資産へと変わっていく。この変化は、推し活をしている人だけの話ではなく、私たちの「持つ」という行為そのものへの問いかけなのかもしれません。






