Z世代は「ひとり時間」を誇れるものへ変えた。孤高の自己表現が生む「エモ消費」と「共感」の循環
「ソロ活」と聞いて、どのようなイメージを思い浮かべるだろうか。
かつては「寂しさ」や「気楽さ」といった文脈で語られることが多かったこの行動は、いまZ世代において、まったく異なる意味を帯び始めている。
それは単なる“おひとりさま”ではない。
内省し、感情に没入し、その体験を自分らしい形で表現し、他者との共感へとつなげていく——。Z世代のソロ活は、個人と社会をゆるやかに接続する、新しいライフスタイルへと変化しつつある。
現代を生きるZ世代の4割が
“ソロ活”を経験している

株式会社僕と私とが実施した「ひとり時間の過ごし方」に関する意識調査によると、直近3か月以内にソロ活を経験したZ世代は41.1%。これはY世代(37.7%)、X世代(22.9%)を上回り、若い世代ほど「ひとりで過ごす時間」を積極的に取り入れている傾向を示している。
注目すべきは、その内容だ。全世代共通で「ひとりカフェ」「ひとり映画」が上位に挙がる一方、Z世代では「ひとりカラオケ」(30.1%)や「ひとり推し活」(19.8%)といった、感情や嗜好への没入度が高い行動が他世代よりも多く見られた。
これらの活動は、単なる時間消費ではなく、「自分の好きなものと向き合うための時間」として機能している点に特徴がある。Z世代のソロ活は、日常の延長線上にありながらも、明確な意味づけを伴った行為として選択されていることがうかがえる。
「ひとり志向」は
Z世代特有の現象ではない
この傾向は、Z世代だけに限られたものではない。博報堂生活総合研究所の「ひとり意識・行動調査(1993/2023)」によると、「ひとりでいるほうが好き」と回答した人の割合は、この30年間で56.3%まで増加している。
とくに、趣味や余暇の分野において「ひとりで楽しむ」行動が広がっており、ソロ活は社会全体で徐々に浸透しつつあるライフスタイルだと言えるだろう。そのなかでもZ世代は、この流れをもっとも自覚的かつ能動的に取り入れている世代だと位置づけられる。
「気楽さ」を超えた価値——感情への没入

調査結果から見えてくるZ世代の特徴は、「気楽さ」だけでは説明しきれない。
ソロ活の印象として、Z世代では「感情に没入できそう(泣く・癒される・集中するなど)」が19.7%と、ほか世代より高い割合を示した。
これは、「ひとり」という状態が、単に自由であるというだけでなく、他者の視線や評価から離れ、自分の感情と向き合うための環境として機能していることを示唆している。
この感覚は、近年注目されている「エモ消費」と重なる。エモ消費とは、モノの所有そのものではなく、体験を通じて得られる情緒的な満足感や、記憶・感情の揺らぎを重視する消費行動を指す。
Z世代における「ひとりカラオケ」や「ひとり推し活」の支持は、この“感情への没入”を求める志向が、消費行動にも反映されている一例だろう。
内省と共有を両立させる
「孤高の自己表現」
Z世代のソロ活を特徴づける、もうひとつの重要な要素が「共有」。同調査では、Z世代の20.3%がソロ活について「SNSにも載せる(むしろ誇れる)」と回答している。これはY世代(15.7%)、X世代(12.3%)を上回り、ひとりで過ごした時間そのものを、ポジティブな自己表現として捉えている姿勢がうかがえる。
ここには、一見すると矛盾する構造がある。ソロ活は本来、他者から距離を取る行為。しかしZ世代は、その「孤高」の時間を閉じたものにせず、SNSを通じて他者とゆるやかに接続する。
ひとりの時間で感情に没入する(内省)
その体験を、自分らしい形で切り取って発信する(自己表現)
共感や反応を受け取る(他者との接続)
この循環によって、ソロ活は「孤独」ではなく、「孤高の自己表現」として再定義されている。
企業はZ世代の
「目的意識あるひとり時間」を
どう捉えるか
企業視点で注目すべきなのは、Z世代のソロ活が極めて目的意識的である点だ。
同調査において、「特に意識していない」と回答したZ世代は21.0%と、他世代よりも少ない。
つまり彼らは、「なんとなく」ひとりになるのではなく、「なぜこの時間をひとりで過ごすのか」を自分なりに理解したうえで行動している可能性が高い。
この前提に立つと、企業に求められる価値提供も明確になる。利便性や効率性だけでは不十分で、「そのひとり時間が、どれだけ感情に没入できるか」「その体験が、自分らしい物語として語れるか」「SNS上で、無理なく“誇れる表現”になるか」といった視点を含んだ体験設計が重要になる。
Z世代のソロ活は、「内省」と「共有」を往復しながら、自分らしさを更新し続ける行為。この構造を理解することが、これからのライフスタイル提案や消費トレンドを読み解く鍵になるだろう。






