石炭49.7%、再エネ41.2%。中国の電力構造が映す「脱炭素の死角」

世界最大の石炭消費国が、ひとつの節目を越えました。中国の石炭火力発電が総発電量に占める割合が、2026年上半期に初めて50%を下回ったのです。華やかな数字の裏には、再エネだけでは埋められない「空白」が見え隠れしています。

石炭49.7%、再エネ41.2%
数字が語る「残り9%」の重み

中国の国家能源局(NEA)が2026年7月末に公表したデータによると、同年1月から6月までの石炭火力の発電シェアは49.7%。発電量にして約2.5兆キロワット時でした。

一方、風力や太陽光を含む再生可能エネルギーの発電量は約2兆キロワット時で、全体の41.2%を占めています。

この2つを足すと約91%。では残りの約9%は何が担っているのか。原子力やガス火力といった電源です。

発電シェアだけを見れば「たった9%」ですが、この9%こそが、天候に左右されない安定した電力を24時間供給し続ける役割を果たしています。再エネが4割を超えた今、この「脇役」の存在感はむしろ増しているのです。

設備は16.8%増えたのに、
発電量は9%しか増えていない

再エネの拡大ペースは目を見張るものがあります。2026年6月末時点で、中国の風力・太陽光の設備容量は合計19.5億キロワットに達し、前年同期比で16.8%も増えました。

ところが、発電量の伸びは約9%にとどまっています。設備の増加率と発電量の増加率に、約8ポイントもの開きがあるのです。

このギャップが意味するのは、太陽光パネルや風車を設置しても、曇りの日や風のない日には発電できないという、再エネの根本的な性質です。設備を増やせば増やすほど、「電気が余る時間帯」と「足りない時間帯」が同時に膨らんでいく。

私たちの暮らしに引き寄せて考えると、日本でも再エネの出力制御——つまり、せっかく発電した電気を捨てざるを得ない事態——が年々増えています。中国が直面しているのは、まさにこの課題のスケール違いの版なのです。

「脱炭素=再エネ100%」という
思い込みへの補助線

中国は2030年までにCO2排出量をピークアウトさせ、2060年までにカーボンニュートラルを達成する目標を掲げています。

石炭が50%を割ったことは、その道のりにおける確かな一歩でしょう。しかし、石炭が退場した分の電力を、変動の大きい再エネだけで埋めることはできません。

ここで浮上するのが、原子力の役割です。発電シェアでは目立たない存在ですが、昼夜を問わず一定の出力を維持できる特性は、再エネが大量に入った電力網を安定させる「土台」として機能します。

「脱炭素=再エネだけで達成する」という図式は、わかりやすいけれど現実とは少しずれている。中国の最新データは、そのことを数字で静かに教えてくれています。

私たちが電気のスイッチを押すとき、その向こう側にある電源の組み合わせについて、少しだけ想像してみる。それだけで、エネルギーの議論の見え方は変わるのではないでしょうか。

Top image: © iStock.com / PNK Photo
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。