エベレストの氷河、登山者の「尿」で150トン融解か【研究結果】

気候変動が氷河を溶かしている——。そう聞けば誰もが頷くでしょう。けれど、エベレストのベースキャンプで氷を溶かしていた犯人のひとつは、もっと生々しいものでした。登山者たちの「尿」です。

2,000人の体温が、
氷点下の氷河に注がれる

英「Daily Mail」が2026年9月4日に報じたところによると、ネパール測量局の科学者チームが、エベレスト・ベースキャンプの足元に広がるクーンブ氷河への登山者の尿の影響を調査しました。

クーンブ氷河は標高約5,364m、世界最高所に位置する氷河です。

研究チームが注目したのは、2023年の春季シーズン。この時期、ベースキャンプには登山者やトレッカー、サポートスタッフなど2,000人以上が滞在していました。

人間の尿の温度は、体温とほぼ同じ約37℃。それが常時0℃以下に保たれた氷の上に直接排出されます。

チームの計算では、この期間中の尿だけで氷河の氷を150トン以上融解させた可能性があるとのこと。150トンといえば、大型トラック約10台分の重さに相当します。

糞便は回収、尿は20年以上「放置」
という制度の盲点

驚くのは、この問題が長年見過ごされてきたことです。

エベレスト・ベースキャンプでは2003年から、排泄物のうち糞便についてはブルーバレルと呼ばれる青い樽で回収する仕組みが整備されてきました。

しかし尿については、氷上にそのまま排出される状態が20年以上続いていたのです。固形物は「汚染」として認識されやすい一方、液体である尿は目に見えにくく、対策の優先度が低かったのかもしれません。

そしてエベレストを訪れる人の数は年々増えています。毎年数百人がヒマラヤに押し寄せ、登頂という究極の挑戦に挑んでいる。人が増えれば、当然、尿の総量も増える。影響は拡大の一途をたどっています。

「観光する身体」が
環境負荷になるという現実

この研究が突きつけるのは、氷河融解の原因が「地球規模の気温上昇」だけではないという事実です。

その場に人間が「いる」こと自体が、環境を変えてしまう。私たちの身体は呼吸し、汗をかき、排泄する。それは生きている以上、止められません。

日本でも、富士山では登山者の増加による環境負荷が問題となり、入山規制が導入されました。「自然を楽しむ」行為と「自然を傷つける」行為が、実は同じ身体から生まれている。

オーバーツーリズムの議論は、交通渋滞やゴミの問題として語られがちです。でも、エベレストの尿の話は、もう一段深いところを問いかけています。

私たちが「そこにいる」だけで、場所は変わる。旅先で何を残し、何を持ち帰るのか。その問いは、標高5,000mの氷河だけでなく、週末に出かける山や海にもつながっているのではないでしょうか。

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TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。