減税されても「安くならない」テイクアウトの裏事情
2027年4月から、飲食料品の消費税率が1%に引き下げられます。テイクアウトなら税率わずか1%、店内飲食は据え置きの10%。差は9ポイント。「じゃあテイクアウトのほうがかなりお得になるはず」——そう思いますよね。ところが、飲食店側の本音は少し違うようです。
半数以上が
「店内と同じ値段」を選ぶ

オンライン比較サービス「ミツモア」が、店内飲食を提供する飲食店の経営・運営に関わる533人を対象に行った調査(2026年8月実施)によると、テイクアウトと店内飲食の両方を行う店のうち、「テイクアウトを店内より安くする」と答えたのはわずか23.1%でした。
一方、「店内と同じ税込価格にする」が53.0%で最多。さらに「テイクアウトのほうを高くする」という回答も6.0%ありました。
合わせると、約6割の店が「テイクアウトを安くしない」方針です。
税率が9ポイントも開くのに、なぜ値段に反映しないのか。その背景には、「やりたくてもできない」という構造的な事情が見えてきます。
個人店の85%が
「自力で対応」という現実


調査で浮かび上がったのは、個人経営の独立店とチェーン・法人店の間にある大きな溝です。
「テイクアウトを安くする」と答えた割合は、法人・チェーン等が37.8%だったのに対し、個人・独立店はわずか17.5%。その差は20ポイント以上あります。
なぜこれほど差がつくのか。ひとつの手がかりがPOS(販売時点管理システム)の導入率です。法人・チェーン等では59.2%が導入済みなのに対し、個人・独立店は20.6%。
さらに、減税への対応を「自店の人員だけでやる」と答えた個人・独立店は85.5%にのぼります。外部サービスを活用するのはたった4.6%。
つまり、店内とテイクアウトで価格を分けるには、レジの設定変更だけでなく、仕入れや原価の見直し、会計処理の変更、スタッフへの教育、お客さんへの説明まで必要になる。実際、別価格を予定している店の約77%が「レジ以外の業務も見直しが必要」と答え、そのうち約77%が「新たな費用がかかる」と見込んでいます。
ミツモアはこの構造を「減税実装格差」と名付けました。制度上は同じ減税でも、それを店頭価格に反映できるかどうかは、店の経営インフラに左右されるということです。
「減税=お得」の前に、
知っておきたいこと

興味深いのは、現在テイクアウトをやっていない店の91.4%が「新たに始める予定はない」と答えている点です。減税をきっかけにテイクアウトに参入する動きは、ほとんど起きていません。
私たち消費者は、減税と聞くと「安くなるはず」と期待します。でも、行きつけの個人店でテイクアウトの値段が変わらなかったとしても、それは店主の怠慢ではなく、対応するためのインフラや余力がないからかもしれません。
2027年4月の施行まであと半年あまり。政府は2026年8月下旬にテイクアウト導入の支援策検討を打ち出しましたが、レジ機器の補助だけでは届かない課題がある——この調査はそのことを静かに示しています。
「安くなっていないけど、大丈夫?」ではなく、「安くできない事情があるんだな」と想像できること。それが、馴染みの店との関係をちょっとだけ変えてくれるかもしれません。






