「超加工食品」は、なぜ米国を蝕むのか

フランス発の食品スコアリングアプリ「Yuka」が、超加工食品(UPF)の健康リスクとその拡散を支える産業構造を包括的にまとめたレポートを発表しました。世界8,500万人超が利用する同アプリが突きつけたのは、「食の不健康は個人の問題ではなくシステムの問題だ」という強烈なメッセージです。

米国の食卓を覆うUPFの実態

同レポートによると、超加工食品は現在、米国の食品供給の70%を占めています。さらに米国と英国では、子どもと青少年の1日の摂取カロリーの60%以上がUPFに由来するとのこと。

注目すべきは、問題がカロリーや栄養バランスだけにとどまらない点です。2019年のNIH臨床試験や2025年にNature Medicineに掲載された研究では、栄養素を同等に揃えた条件でも、UPF食のほうが体重増加を引き起こすことが示されました。つまり「何を食べるか」だけでなく「どう加工されたか」が身体に影響を与えている可能性があるわけです。

タバコ産業が残した「設計図」

レポートが特に鋭く切り込んでいるのが、大手食品企業とタバコ産業の構造的な類似性です。1980年代、Philip MorrisやR.J. ReynoldsがKraftやNabiscoといった食品大手を買収。科学的疑念の製造、戦略的ロビー活動、子ども向けの攻撃的マーケティングなど、タバコ業界で磨かれた手法がそのまま食品業界に持ち込まれたと同レポートは指摘しています。

グローバルUPF市場は1.5兆ドル規模にのぼり、その約42%をわずか8社の多国籍企業が支配。Coca-Cola、PepsiCo、Mondelezの3社だけで2024年に132億ドルもの広告費を投じたといいます。これはWHOの年間予算の約4倍にあたる数字です。

私たちが「つい手が伸びてしまう」と感じるその瞬間は、意志の弱さではなく、巨額の投資によって精密に設計された食環境の結果なのかもしれません。

動き出す規制と市民の力

米国では連邦レベルでのUPF定義策定が停滞しています。保健福祉長官が2026年4月までの策定を約束したものの、期限は過ぎ、省庁間の合意には至っていません。一方、カリフォルニア州は2025年に米国初となるUPFの法的定義を含む法律に署名し、2035年までに公立学校から段階的に排除する方針を打ち出しました。

海外ではすでに成果も出ています。チリでは義務的警告ラベル導入後3年で高糖製品の購入が37%減少。こうした事例は、適切な情報開示が消費者行動を変え得ることを示しています。

YukaのCEO Julie Chapon氏は「科学はもはやボトルネックではない。ボトルネックは政治的意志だ」と語りました。食品アプリが「買い物の便利ツール」から「産業構造の可視化と政策提言のプラットフォーム」へと進化しつつある今、私たち消費者にも「知る力」を武器にする選択肢が広がっているのではないでしょうか。

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